【特集】中国動画共有サイト、弱肉強食の13年史(後編)―最後に残ったのはやはりBAT
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2005年の中国で、大学生など若い世代が中心となり次々とリリースされた動画共有サイトは一躍脚光を浴びた。一時期は400ものサイトが登場したが、2008年の世界金融危機によって一気に冬の時代を迎える。前編に続く後編では金融危機後、買収や合併を繰り返しながら上場ラッシュを経た現在までを振り替える。(前編はこちら)
生存の分かれ目は資金力、金融危機後の札束合戦
動画サイトの動力は、なんといっても資金にある。
2018年に中国で放映されたTVドラマ「如懿伝(じょいでん)」は1回の放送権料が1500万元(約2億5000万円)にのぼったことで話題となった。湯水のように資金を投入するのが、動画コンテンツ業界を生き抜く唯一の道だ。
優酷創業者、古永鏘
2006年に誕生し、2009年の金融危機を生き抜いた優酷はその後、2012年に最大のライバルの一つ土豆網を買収した。BAT(中国IT三大企業バイドゥ、アリババ、テンセント)に続く勢力拡大を目指したが、2016年、ついにアリババに完全子会社化されることとなった。ただし、豊富な資金力を後ろ盾に、独立した運営を保持することに成功している。
2007年に誕生し、日本のアニメや韓国のドラマなど海外の人気コンテンツを多数掲載して人気を博した動画共有サイト「迅雷看看」も、最終的には資金不足に泣かされることになった。NASDAQ上場を機に海賊版コンテンツ一掃を図るものの、正規コンテンツの版権取得にかかる莫大な資金を得られず、最終的には迅雷看看自体を手放すことに。
迅雷看看を運営する迅雷のNASDAQ上場
動画配信サイト「楽視網(Le.com)」を運営する楽視グループ(LeEco)創業者の賈躍亭も、「成功するか、それとも死ぬか。道は二つしかない。第三者に身売りすることはない」と豪語していたが、巨額の負債を抱え、これを実行に移すのは難しかったようだ。
ゲーム開発企業の盛大互動娯楽が取得した酷6網、大手SNSを運営する人人公司が買収した56網も、資金が尽きて立ち行かなくなった。56網はその後、2014年に張朝陽CEO率いる捜狐が買収している。
動画サイトの運営者には、出資者を選ぶ眼が求められる。
2007年、百度(バイドゥ)創業者の李彦宏(ロビン・リー)を出資者に選んだ羅江春は、幸運をつかんだ1人だ。2005年にリリースした動画サイト「風行網(fun.tv)」運営において、映像コンテンツの版権取得にかかる莫大な費用負担を、百度聯盟傘下に入ることで解決したのだ。小規模サイトでも大手企業の庇護を受ければ生き延びられると示した好例だ。
同じく百度の下で成功をおさめたのが、2010年にスタートしたNetflix型の動画配信サービス「愛奇芸(iQiyi)」だ。当時、動画コンテンツ事業への参入を図っていた百度は、そのトップに据える人物として100人以上の候補者の中から龔宇を選んだ。彼こそ愛奇芸の創業者となる人物だ。並み居る競合に対して4~5年遅れた形でスタートを切った愛奇芸だが、2014年10月には龔宇自ら、「動画サイト業界の頂点に立った」と宣言する。成功の理由は「金だ、とにかくたくさんの金だ」と豪語している。
愛奇芸とは正反対の方向性で、ささやかな成功を収めた例もある。呂文生が率いる「激動網(JOY.CN)」だ。大手の陰で目立たないが、賢く生き残っている。
上場ラッシュでも分かれる明暗
2010年は動画サイトの上場ラッシュが沸き起こった。ざっと挙げると、
6月―酷6網がNASDAQへ上場。
8月―楽視網が中国版NASDAQと言われる創業板に上場。
12月―優酷がニューヨークで上場、といった具合だ。
酷6網は中国の動画サイトとして初めて単独でNASDAQへ上場を果たした。さらに、国内のメディアを統括する国家新聞出版広電総局から、動画サイトとして初めて正式な営業許可証を取得している。ただし、この上場の瞬間が転落の始まりでもあった。2016年には上場廃止という憂き目に遭っている。
「上場が果たせないならば上場企業の傘下に入ろう」と行動を起こした動画サイトもある。56網は2011年、国内最大規模のSNS「人人網」の動画コンテンツ事業に参画するかたちで、8000万ドル(約90億円)で事業譲渡した。しかし、3年後の2014年には2500万ドルで捜狐に買収されている。
また、上場して逆に失速した動画サイトもある。後に優酷に買収される土豆網だ。土豆網は優酷が上場した9カ月後の2011年8月にNASDAQに上場する。創業、サイト開設、上場申請と何もかも優酷に先んじてきた土豆網だが、この一歩が遅れたことで最大のライバルに大きく水をあけられることになる。
2012年3月、土豆網の全株式を優酷が取得するかたちで両社は合併、「優酷土豆」が誕生した。中国動画サイトの二大大手が合併という衝撃的なニュースは当時、大きな話題となった。
2015年、創業板に上場し話題をさらったダークホースが「暴風影音(前身は前編で登場した酷熱影音)」だ。一時は時価総額48億ドルに達し、優酷土豆の38億ドルを超えた。2018年7月には馮鑫CEO個人の持ち株が3年間の凍結措置となったと報じられたが、今後の動向に要注目だ。
写真左が暴風影音の創業者・馮鑫、右が楽視網の創業者・賈躍亭
華々しい上場のニュースで最後を飾るのは愛奇芸だ。2014年ごろから「近く上場する」と伝えられて早5年近く、2018年3月、ついにNASDAQに上場を果たした。愛奇芸CEOの龔宇、百度CEOの李彦宏の両氏はそれぞれ、名門の清華大学、北京大学の出身で、ともに50歳を迎える。
13年にわたって続いた中国動画サイトの栄枯盛衰。2018年現在は百度傘下の愛奇芸、アリババ傘下の優酷土豆、テンセント(騰訊)傘下の騰訊視頻(v.qq.com)の鼎立状態となっている。
(翻訳・愛玉)