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SaaS型人事管理システム(HR SaaS)を開発する「薪人薪事(Xinren Xinshi)」がシリーズCで1億8400万元(約30億円)を調達した。出資者は中国最大のソフトウェア会社のひとつ「金蝶国際(Kingdee)」。調達した資金は営業力の強化、中小企業を中心とした新規顧客開拓に活用されるという。
2015年に給与計算ソフトウェアからスタートした薪人薪事は、2016年にフルモジュール型のHR SaaS「X-One」を世に送り出した。その翌年には機能をアップグレードした「Growth-Oriented 3.0 版」を発表し、成長企業をターゲットにした市場開拓に乗り出した。
同社の創業者でCEOの常興龍氏は「本ラウンドにおける成長戦略は、前ラウンドの延長・推進にある。つまり、『1つのアップグレード、2つの融合』だ」と語る。
1つのアップグレードとは、ソフトウェアおよびシステムのアップグレードのことで、機能の最適化はもちろん、データセンターサービスのフレームワークを活用して、より多くの中小企業がサービスをオンライン体験、購入、継続使用できるようにすることだ。
2つの融合のうち1つ目は、オンライン/オフライン/ダイレクトセールスの融合だ。これまで同社のセールスはオンラインが中心で、訪問販売による契約は少なく、地域サービスが弱点となっていた。本ラウンドで手を組んだ金蝶は、企業向けSaaSの経験が豊富で、地域サービスの販路開拓にも長けていることから、薪人薪事の弱点を補うことができる。金蝶が薪人薪事のオフラインセールスをサポートし、逆に薪人薪事はオンラインセールスで獲得した顧客資源を金蝶に供給するということだ。
2つ目は、同社のプロダクトと他社のプロダクト(財務、サプライチェーン、金融など)を融合させることで、中小企業向けにトータルソリューションを提案すること。OpenAPIの仕様を改善し、サードパーティーのソフトウェアとの親和性を高めることで、顧客によりスムーズなワンストップサービスを提供していく方針だ。
こうした戦略を立てた背景にはどのような考えがあるのか。他のSaaS企業が大企業に目を向けている今、同社が中小企業に注力する理由は何なのか。常興龍氏に伺った。
――2つ目の融合については、アリババの企業向けチャットアプリ「釘釘(DingTalk)」のようなプラットフォームのほうが有利では?
「釘釘と我々の『融合』は概念が異なる。正確に言えば、釘釘の場合は融合ではなく、『つながり』だ。釘釘は利用している人も企業もとても多い。より多くのニーズに対応する必要があるため、釘釘は企業向けAppstoreと言った方が正確だろう。様々なサービスからユーザー自らが選択するようになっている」
「利用者に選択権があるサービスには、長所も短所もある。長所は、人材管理経験が豊富な人物がニーズに応じて最適なサービスプロバイダを選択できるということだ。しかし、我々のターゲットである中小企業は戦略が変わりやすく、安定して人事管理しているわけではない」
――最近、多くのSaaS企業は大企業に意識を向けている。薪人薪事の今後のターゲットは?
「『資金調達の冬』と言われる今、小規模企業の支払い能力は依然として低いままだ。そのため、これまで中小企業向けにSaaSを提供してきた企業の多くは戦略を変え、大企業をターゲットにしている。しかし、問題は大企業がそもそも少なく、パイの奪い合いが激しくなるということだ」
「3年前、我々は小規模企業向けツールを開発し、顧客を増やしてきた。現在の目標は、まずは中小企業市場でしっかり足場を固めることで、それができれば、いずれは大企業にもアプローチできるようになると思っている」
――大企業をターゲットにすることと、顧客数を拡大することとは、矛盾していないか?
「矛盾するかどうかは、提供するサービスがどの程度のレベルに到達しているかではなかろうか」
「我々は、少しずつ製品を改良し、そのステップごとに十分な成長サイクルを残す。最初の顧客層が必要とする機能を徹底的に理解し、それを製品に落とし込んでいけば、いずれは大企業のニーズにも合致する製品となる」
「もし製品の質が十分ではない状況で大企業向けサービスを始めれば、顧客数を増やすことはかなり難しくなる。1~2社の大企業の要望に振り回され、サービスの質の低下を招くこともある。それに大企業向けのサービスにはコストがかかり、利益を圧迫するかもしれない」
――現在、顧客ターゲットとしている主な業界は?
「インターネット業界と『+α』だ。+αは、伝統産業のことだ」
――「伝統産業」の例は?
「例えば、各地に店舗を構えるチェーン店、大規模な不動産会社などだ。こうした企業にサービスを提供することにより、HRに関するデータを蓄積することができる。当社と提携する企業にとっても理想的なサービスとなるだろう」
「産業が成熟した後、その産業全体の利益はトップ20%の企業に集中する。そして、トップ20%の企業のマネジメントは業界平均よりも進歩しているものだ。我々は、業界の平均水準に合わせるのではなく、トップ20%の企業の管理方法を出発点とし、管理モデルをデータベース化し、それに基づき、他の80%の企業をサポートしたいと考えている。各業界の変革に遅れないための手助けにもなるはずだ」
(翻訳・飯塚竜二)
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