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中華ドリンクしか売っていない謎の自販機が、都内にじわじわと増殖している。
池袋で実物を発見してTwitterに投稿したところ日本人、中国人どちらからも大きな反響があった。冷凍ラーメン自販機やトビウオのあご出汁自販機など、変わり種の自販機が時々話題になるが、中華ドリンク自販機は誰が、何のために設置しているのだろうか。調べていくと、日本に暮らす中国人コミュニティーの一端が見えた。
「懐かしの味を手軽に」今年2月に1台目設置
2020年のある日、中国のSNSで「池袋にスーパー自販機がある」と紹介されているのを知り、雑居ビルの中にある実物を見に行った。陳列されているのは中国で暮らしたことのある日本人にとっても懐かしい商品ばかりだった。
例えば赤いパッケージの「王老吉」は、中国のどんなスーパーや小売店にも置いてある漢方茶。仙草、菊花、甘草などが入っており、とても甘いので好き嫌いが分かれるが、ハマる人にはハマる。中国だと1本(350m缶)50円前後で買える。「茶π」は、ミネラルウォーターで有名な「農夫山泉」が製造するフルーツティードリンクだ。ピーチ烏龍茶やグレープフルーツジャスミンティー、柚子緑茶など味のバリエーションが豊富でカラフルなパッケージも人気がある。中国だと1本(500mペットボトル)75円前後。
写真を撮ってTwitterに投稿したところ大変な反響があり、千葉県松戸市の新和商事という企業が設置したと判明したので、侯振槳社長に話を聞いた。
新和商事は中国からの輸入品を扱う商社だが、ECの成長に着目し、2019年からは中国のインスタントラーメンや調味料など中国食品のネット通販も手掛けている。
中華ドリンク自販機は、「日本にいる中国人がわざわざ中華物産店まで足を運ばなくても、懐かしい中国ドリンクを飲めるようにしたかった」(侯社長)という思いから、プロジェクト化したという。
2020年後半から市場調査や機材の調達、デザインの選定を進め、2021年2月に在日中国人が多い新大久保エリアに1台目を設置した。その後、順調に設置場所を開拓し、2021年10月末時点で92台の中華ドリンク自販機が関東地方に設置されているそうだ。
ただし、自販機の設置場所は中国人向けの学習塾やシェアハウス、外国人向けスマホ会社など建物の中に集中している。外に設置されているのは新大久保や埼玉県西川口の一部だけで、日本人が目にすることは少ない。
ECショップ広告の役割も
この中華ドリンク自販機は、新和商事にとって広告の役割も果たしている。機体に表示されているQRコードをスマホでスキャンすると、同社が(中国のメッセージアプリ)WeChatに開設している中華食品ECショップにアクセスできるようになっているのだ。ECショップでは中国の調味料や冷凍食品、スナックなどが販売され、注文後最短で翌日配達されるという。
候社長によると、2021年前半は自販機を設置してもらえる場所を探し、営業をかけていたが、自販機で売られている商品が他店舗で買うより割安なこともあり、SNSや口コミで評判になるにつれて、最近は営業をしなくても「設置したい」と声がかかることが増えたという。
現在の設置範囲は関東にとどまっているが、今後は大阪や名古屋、福岡などにも展開し、2年後に500台設置を目標にしている。現在も新たな中華自販機の設置場所を募集中だそうだ。今は一般の目に触れる場所で見かけることはほとんどないが、この変わった自販機が全国展開する日も遠くないかもしれない。
この連載では、人気ブログ「東京で中華を食らう」を運営する阿生さんが、日本の中華料理店事情をビジネス面から紹介します。
阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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