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2021年は中国政府のテック規制政策が鮮明となり、中国の投資状況はドラスティックに変化、そして2022年を迎えました。政府の規制政策によりEdtech市場は大きく縮小し、また、DiDiをはじめ数多くのテックカンパニーが米国市場から香港上場へと移行するなど大きくシフトしはじめています。
悲観的な声としては「中国のベンチャー市場は崩壊する」「これからテックベンチャーが現れてこなくなる」…
その一方で、相変わらず中国市場を捉える声も。「投資額を見ると、まだまだベンチャーの投資額は増えている。VCのファンドレイズも(ファンド組成資金を集めること)上手くいっている。成長局面は変わりない!」と。
それぞれの受け止め方は千差万別ですが、この急激な変化を受けた中国のVC業界は今後どのように舵をきるかは個人的に関心度の高いトピックスです。この2022年はどのような年になるのか、今までの投資環境はさらに悪化するのかなど、世の中から関心を集めています。本稿では、過去の歴史を振り返りながら、今後の中国市場のヒントを得たいと思っています。
前編後編分けて話したいこととして、
・前編:中国VC、6つの流派で現在中国のスタートアップシステムを形成
・後編:現在中国VC業界が迎えている難局、拭いきれない不透明性がもたらす投資テーマや投資スキームの変化
全体を解説しようとすると中国の社会背景・政治統制の歴史など多岐にわたりますが、できるだけシンプルにまとめて皆さんにお伝えしたいと考えております。
*本稿はスタタイとコラボしており、収録している中国のファンドは全てデータベース化しております。まだ公開前ですが、ご期待していてください。
上編:中国VC、6つの流派で現在中国のスタートアップシステムを形成
中国のVCといえばどこを思い浮かべるのだろうか。スタートアップ界隈の方々の会話では老舗のSequoia Chinaや、CVCの騰訊投資(Tencentの投資部門)、アリババ投資(アリババの投資部門)が名に上がる。他も当然有名どころはあるが、最大公約数的に上記の3社が一番話題に上がる肌感がある。Sequoia Chinaのファウンダーニール・シェンがMidas List(Forbesが毎年発表の投資家ランキング)において三連覇を成し遂げたこともあれば、騰訊は中国のベンチャー投資で2020年の一年間で1.3兆円の投資を実行したことが日本でも広く周知されている。
しかしながら、この広大なベンチャーマーケットで、上記の御三家が独占することは到底不可能であり、いわゆるステージ別、産業別で活躍しているベンチャーキャピタルがその他にもたくさん存在している。例えば、クロスファンドであるヒルハウスキャピタル(Hillhouse Capital)が1000億ドルをレイズして猛スピードで投資していることもあれば、Kuaishouをアーリーステージにて投資を実行し、ヒットを出し続ける5Y Capital、といった形で、中国のVCの勢力図は実に広範にわたる。それぞれのファンドの変遷と実力を理解するのが中国のベンチャーマーケットを理解するカギだと思う。
本稿では中国のファンドを6つの流派があると考え整理してみた。歴史を遡り、それぞれのファンドがどのようなポジションに位置しているかをご紹介したい。
1990〜2010 VCの黎明期
アメリカでインターネットバブルが大々的に世の中の注目を集めていたころ、中国でもハイテックに投資を実行する兆しが訪れようとしていた。
IDG Capitalが中国ベンチャーキャピタルの先駆者ヒューゴ・ション(熊曉鴿)に率いられ、Baidu、Sohu(ポータルサイト)、Ctrip(ホテル予約)、騰訊など名だたる中国の代表企業へ1990年代の初頭に出資していた。詳しくはEast Venturesのキャピタリスト夏目英男さんや元CyberAgent Capitalの張さんの記事で彼の追い立ちを詳しく書いているので、詳細はそちらをご参照ください。
だが、事はそんな単純に進められるものではない。1991年IDG Capitalが中国に進出したとはいえ、休止していた証券取引所が1990年から再開したことから中国の資本市場は至って未成熟であった。そのため、当時ベンチャーに対するエクイティ投資のエグジットは中国においてほぼ無謀といっても過言ではなかった。
1998年にその転機を迎えると、チェン・シーウェイ(成思危)民主建国会中央委員会出席が「中国ベンチャー投資に関する提言」を発表し、財源の単一やエクイティ市場の整備が急務だと指摘していた。その後ベンチャーの育成/ベンチャーキャピタルの創出/ベンチャー投資エコシステムの環境整備の三拍子でエクイティ市場の循環システムを築いていった。
また、1999年SINA(新浪)が初めてVIEスキーム(VIE契約の元、海外にいる箱会社を使って中国の企業を米国に上場させる仕組み)を利用し、ナスダック上場を果たし、ハイテックカンパニーへモデルケースを示した。
この状況下、いち早く中国市場に参入したベンチャーキャピタルがどのような難題や機会に対峙したか容易に想像できる。
難題
・広大な土地にディールソースが分散し、ベンチャー投資となりえる対象がそこまで多くない
・投資される側が自身の資金ニーズは不明確で、ベンチャーキャピタルに対する認知度も低い
・デューデリジェンスするノウハウが十分ではない
・エグジットする手段が限られている
機会
・アメリカのインターネットバブルが中国で実現できる際に得られる膨大なリターン
・ベンチャーキャピタルという労働集約的な業態として、先発者メリットを発揮しやすい
第一の流派「プレイヤーフォーカス派」
結果、第一の流派である「プレイヤーフォーカス派」のVCが現れた。プレイヤーフォーカスは文字通り、起業という”ゲーム”にプレイヤーとして参画する人々を重視して投資する流派になる。前述のIDG Capitalこそプレイヤーフォーカスの元祖であり、有名な「人、人、人」という投資方法論も世に渡っている。
上に書いた当時の投資環境を含めて私の考察では、旧来では詐欺が横行している中国社会では投資して夜逃げされることがザラにある中、いかに信頼できる・有言実行な人物こそ、生き残るビジネスを作る構造となる。そして、その「プレイヤーが誰なのか」を広く深く見たからこそ、シリアルアントプレーナー、海外大卒帰国者、インターネットカンパニーエグゼキュティブ、という三つのジャンルへと投資する傾向が顕著に出ている。一説によると、IDGは現在主要インターネット会社のエグゼキュティブレイヤーの人を全方位にトレースし、独立する瞬間に面談を設定する戦略をとっているようだ。
トップのアーリーステージベンチャーキャピタルZhenfund(真格ファンド)のシュー・シャオピン(徐小平)が共同創業したNew Oriental Education and Technology Groupは留学サービスを提供したこともあり、特に留学人材に好む傾向がある。
IDGから卒業したジャン・ジン(張震)がGaorong Capital(高榕キャピタル)を設立し、IDGが提唱したオーソドックスなところから発展させて「ダブルエンジン」モデルを発明した。「ヒト」という軸にしっかりシリアルな企業を見張った上、「産業」という側面からどの領域にどのようなシステマチックな投資機会があるかを合わせてみること。
代表VC: IDG Capital, Zhenfund(真格ファンド)、Gaorong Capital(高榕キャピタル)
第二の流派「領域派」
領域派はいわゆるプレイヤーよりもどのドメインに挑戦するかを重視し、VCがそれにベットする形だ。セコイア・チャイナ、タイガーグローバルはまさにこの流派に当てはまる。有名な話ではあるが、セコイア・チャイナがよく領域のトップランナーとセカンドランナーへと両者に投資することがある。電動自動車領域だと業界の1〜3位に投資することもあり、モラル的にどうなのかと疑われたこともある。しかし、セコイア・チャイナのリーダーであるニール・シェンもよく反論し、彼らは産業構造から入り、市場競争の結果いくつかの会社が類似するビジネスを取り扱うようになったに過ぎないとのことだった。
ここで強調したいのが、領域重視することは高度な戦略であって、セコイア・チャイナもいきなり「領域だ」と打ち出したのではなく、自己進化の過程において徐々にその方法論の形を作ったと理解する。具体的に以下の3点に注目したい。
1)セコイア・チャイナが当初ドルファンドとして中国に進出していたことからニール・シェンのようなモンスター級な投資家がいるとはいえ、好ましいディールディールが天から降ってくることなどない。よって、2008年前後セコイヤ・チャイナの戦略はたくさんのシードファンド、政府と連携をとり、様々な領域に張らねばならない状況にあった。その後米系のVCがよく作るインダストリーマップをなぞって「移动互联网的产业地图」(モバイルインターネット産業マップ)を発表し、領域投資のペースを段階的に増やしていった。
2)2012年以降のセコイア・チャイナはブランド力、資金力などVCとしての六角形を埋め、一回ミスをしたディールをレイターステージに追加できるようになり、「取りこぼし」を徹底的に排除しようとしていた。バイトダンスはその事例で、シリーズBでニール・シェンはパスしたが、シリーズC以降に参加をし、結果的に高いリターンを叩き出した。
3、また中国の投資環境はアメリカと大きく違って、アメリカが漸進的な進化をしていると理解するなら、当初の中国は何のインフラもなく、様々な産業における破壊的な業界再編が行われ、ECをやっている会社は急にピボットしてO2Oに変化することは日常茶飯事だった。
言い換えると、セコイア・チャイナ流の領域投資手法はファンドの状況に照らし合わせつつ、ボトムアップ的に投資機会を探し回り、大成功を納めた訳だ。
一方で中国投資の新参強者ヒルハウス・キャピタル(HILLHOUSE Capital)、は似て非なる「領域」の戦略を取っていて、直近中国の投資ファンド1位を争う存在となった。
ヒルハウス・キャピタルは公開株式市場とプライベート市場両方投資するスタイルを取っていた。ファウンダーであるチャン・レイ(張磊)はリサーチドリブンを提唱している人で、世の中のトレンドと市場機会を細かく分析し投資する戦略を取っているのだ。それがセコイア・チャイナとどこが違うかというと、
・領域機会の捉え方の違い:ヒルハウス・キャピタルのエポックメーキング的なディールはブルームーン(Bluemoon)という消費財の投資で、セコイアはチーフーサンロクマル(奇虎360)のようなテクノロジーよりのディールだった。もちろんセコイア・チャイナも最近消費ブランドやロボットに投資し始めているのだが、どちらかというとヒルハウス・キャピタルの流派はより広義的な意味で「中国の市場にどのような機会があるか」にフォーカスし、企業の成長が長くなることを厭わない。一方、セコイア・チャイナの投資がもっと高成長な”ど真ん中”の会社に投資することが多い。
・リサーチ活用方法の違い:ヒルハウス・キャピタルはパブリックマーケットとプライベートマーケット両方リサーチチームを設置して、リサーチのテーマはそもそも多い。一方、セコイア・チャイナのこれまでの研究テーマは「モバイル・インターネット」「インターネット金融」などはあったが、ほとんどプライベートマーケットで新進気鋭なテクノロジー分野を中心としていた。結果的に、ヒルハウスはよりモデルケース的な出資スタイルに映り、セコイアチャイナはより貪欲的に思われる構図になっている(ニール・シェン本人は「鮫の投資家」という評価がある)
まとめると、「領域派」はいわゆる王道なVCが幅広いジャンルの産業から投資機会を逃さずに大きな成功を収める戦略だ。このような領域投資を機能させるために彼らのケーススタディするを振り返ると、資金・人間力・ブランド・ファンドの能力・運などがいずれも欠かせないことがわかる。
代表VC:セコイア・チャイナ、ヒルハウス・キャピタル(HILLHOUSE Capital)、タイガーグローバル
第三の流派「スナイパー派」
次に、複雑な投資環境な中、大きく成功を収めたのは「スナイパー派」の投資家たちだ。DCM中国のパートナー、リン・シンヘ(林欣禾)は講演の中このように語ったそうだ:「捕鯨者になれ、トレンドキャッチャーになるな」。VCの黎明時代にDCMと今日資本シュー・シン(徐新)、5YCapitalリュウ・シン(劉芹)が投資先の数をとことん絞り、質をあげる戦略に徹底していた。
5YCapitalはこんな逸話があったそうだ。「リュウ•シンがシャオミのエンジェル投資家だった。2010年雷軍氏がシャオミを創業した後に、キャッシュアウト間際、旧友のリュウ・シンに支援を求めるコールを入れた。そして両者は12時間の電話をし、三つの携帯とも電池が切れ、その後500万ドルの出資をした。2018年シャオミが上場時、彼は886倍のリターンを得た。しかしこれは個別の例ではなく、2011年にショートビデオのKuaishouにもエンジェル数十万ドル出資をし、80億ドルのリターンを手に入れた」
表にリュウ・シンさんがスナイパーそのもののように打率を上げていることは、雷軍といった業界の中心人物と長い関係性を持っているのと関係しているかもしれないが、Kuaishou のソーシングは特段彼が行っていたものでもなければ、当初KuaishouがDAUも伸びず相当苦戦していた。しかし、瀕死状態にあったKuaishouに5Y Capitalが総力をあげて、もう一人の共同創業者を見つけ出し、Kuaishouのグロース力をレベルアップさせた。
そこでスナイパー派の共通点は見えてきて、数を絞る代わりに成功確率をあげる。成功確率をあげるのに、投資先サポートを手厚く行っている。
代表VC:DCM、今日資本、5YCapital、GSR Ventures China
2010〜現在
第四流派「一網打尽派」
マトリックスパートナーズ(経緯創投)はチャン・イン(張穎)が2008年創立したアーリーステージのVCだ。彼が自分の価値観を表す名言を残しており、それは「地頭が良い人はどれだけ聡明でも、量で磨かれなければ本質的な変化はない。」というシンプルなオピニオンだ。余談にはなるが、彼はアメリカのノースウェスタン大卒でロードバイクのような冒険的な趣味を持っている人物で、外見も想像の通りタフな感じである。投資のスタイルは投資金を大きく投下し、一つの産業に一年で6~8社を投資している。そして今は40人ぐらいの投資チームを組みたて、産業別でウォッチし、一つずつ漏らさずに彼らのポートフォリオに入れるのがゴールだ。結果、MOMO,Yuanfudao,DIDI,一連のユニコーンをマトリックスパートナーズがシリーズA前に投資できた。
一網打尽スタイルは簡単ではない。実行力の高い営業部隊が必要な上、アーリーステージ起業家を惹きつける魅力となる要素も欠かせない。何よりマトリックスパートナーズのチャン・インは中国人が憧れる「武侠」のような誠実、豪快、投資先を批判する声と戦うなど任侠的な要素があり、他のファンドよりも好感度が高い。
ちなみに、マトリックスパートナーズはバックオフィスの立ち上げ・起業支援を重要視し、40人の投資チームを作りながら100人以上サポートチームを構成している。チャン・インはインタビューで、資金のコモディティ化を指摘し、やはりファンドの差別化を作れるのは起業家支援の部分だと明言している。PR,GR(政府関係),IR,資本関連、採用、法務、医療、データ分析、ファイナンス管理と9つの区分をしており、細かいサポートメニューを揃えている。「医療」は起業家の家族の医療サポートもしているということで、イレギュラーな支援かもしれないが、混沌している中国の資本市場においては起業家がとても感謝する支援内容の一つになる。
代表VC:マトリックスパートナーズ(経緯創投)、プラムベンチャーズ(Plum Ventures)
第五の流派「業界フォーカス派」
業界フォーカス派は、領域派と異なり、個別の業界にフォーカスする。業界のベテランが独立し、バリューチェーンの構造に詳しい人物、ないしは大型のファンドで当該領域に長年研究し、強い人脈をもつのがほとんどである。
Walden International(華登国際)は米系のファンドで、インターネットの黎明期に中国進出していた。しかし、同じ時期時代に来ていたIDG Capitalのようにインターネット企業にフォーカス投資をするのではなく、半導体領域に長くコミットしていた。
その理由はWalden Internationalのパートナー、リップ・ブー・タン(陳立武)にある。幼少期から神童として学術界で活躍していたリーは、16歳でシンガポール南洋理工大学、19歳で MITへと進学。彼はエネルギーが世界を変える重要な技術だと確信し、研究を進めていた。しかし、世界を震撼させてスリー・マイルランドの核事故が発生した後に、核物理の研究が一斉にストップ。研究資金を確保できないリーは仕方なく西海岸のMBAに進学し、その際に研究ではなく、技術畑から生まれる技術こそが世界を変えると確信した。この出来事をきっかけに、彼はアメリカにてWalden Internationalを設立。中国財政部の紹介を通じて、中国にも進出。そこからリーとWalden Internationalのハイテック投資神話が始まった。
彼の投資指針はトレンドに追わない、投機的な投資をしないことだ。近視眼的な利益に目を向かないとあるように、半導体がインターネット時代に不可欠なパーツになるのに中国の半導体自給率が極めて低い問題に着目した。また、元々国家戦略に織り込まれた半導体の開発は2000年前後に海外トップ人材の帰国トレンドと相まって、SMIC(中芯国際)の創業者も台湾から戻り、市場が急上昇する千載一遇の機会があった。
しかし、半導体の発展は1日で成すことではない。SMICがこの後難しい知的財産の訴訟にて敗訴になった後、SMICを始めとする中国半導体市場どん底に落ち込んだ。リップ・ブー・タンがここで諦めたら、SMICが中国株式市場で大型上場する話はなかった。2020年7月SMICは上場を果たし、時価総額12兆円にも上がった。
ここで指摘したいのは、中国投資の難しさは環境の複雑さに、予測しきれない人的要因(人が辞めたり)、事業要因(知的財産盗難)などの要素があり、変化が目まぐるしく、こまめにリターンを調整しようとすると失敗する確率が高い。逆にリップ・ブー・タンが堅持している方針のように外部の変化にさほど考慮要素に入れず、大局から流れを判断するのが大切だ。
中国ではよく「大開大合」(大きく流れを作って急速に収束すること)という言葉を語り継ぐ。元から、急な変化が多い国であるため、「そもそもこの国に必要なものとは何なのか、国として競争力をあげようとする要素何だろうか」本質を見抜いてからこそビッグゲームを作り上げることができる。その意味において、TMT(情報通信技術)に投資するファンドも当てはまるが、ただWaldenはより長期間、ハイリスクなプレイをしている。
同じ理屈でバイオ、医療、ロボットにコミットしているファンドも続々と出てきているが、TMT系に投資をするファンドの打ち上げ花火的な投資よりも堅実に長い努力は必要だろう。
代表VC:Walden International, xbotpark
第六の流派「クラブ派」
最後はロジック的に簡単だ。クラブ派いわゆるファンダーズファンドに近いのだ。VCは村であるというのは多々ある指摘で、VCとスタートアップのウェットな関係性から考えると決して変な話ではない。村の中には常に評判の良い人物が中心的な存在となり、村の日常業務を任せられる。
セコイア・チャイナ、IDG Capitalは最初アメリカのLPを引っ張ってきて投資をレバレッジしているのに対して、新世代の中国VCは中国のインターネット業界のリーダーから資金を集め、人ー金ー人という中国国内のエコシステムを形成している。具体的に言えば、バイトダンスの創業者チャン・イーミン(張一鳴)はソースコードキャピタルのLPとなって、ソースコードキャピタルが次世代のTMTリーダーを探すのにLPの顔を使えるのと、ソーシングしたディールをM&Aの機会を作るのもよりダイレクトに行える。
クラブ派は「実力」という面では、力学的に他の流派よりも強く働く。ソースコードキャピタルの例だと、ファウンダーツァオ・イー(曹毅)は元々セコイア・チャイナの中堅層であり、ニール・シェンの後継者と見做されていた。彼はセコイア・チャイナに在籍した際、バイトダンス、美団、理想汽車のようなトップディールに投資した。その結果、上記3社からファンドレイズした。前文に述べたジャン・ジンのGaorong Capital(高榕キャピタル)も過去の投資先から調達することも同じストーリーを踏んでいた。
だから本質的に、このファンドレイズと投資の戦略は結局エコシステムのようなものを作るのだが、中心にいる存在は圧倒的に重要なわけだ。簡単に真似ることはないが、選ばれしものは一旦エコシステムを作ってしまえば、その後のフライホイールが加速する。結論として、これは第一世代よりも第二世代が作りやすいプレイなのだ。
代表VC:ソースコードキャピタル、Gaorong Capital
終わりに
六つの流派から少しでも中国ベンチャーキャピタル理解が進められたのでしょうか。やはり中国市場の面白さは、何か変化の兆しがあるとビッグバンのように物事の変化が急激に進むこと。1990年代からわずか30年間で中国のベンチャーキャピタルマーケットは急速に進化を遂げた。振り返ると、マーケットの大きさ、ステークホルダーの多さ(民間や官公庁など)、政策の変化の速さ、といった要素によってユニークな市場が形成された。表面的に「すごい!」と思われているVCであっても人に言えないジレンマに遭遇しているかもしれない。本稿はそれぞれの流派の過去の歴史を紐解き、今後も新たなVCトレンドが現れた際に参考していただければ幸いです。
作者:Lucheng LI@Z Venture Capital。Twitter:Twitter@lucheng_li
※タイトル図:Researchgate
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