狙うはEC取引の主導権 TikTokがECミニプログラムをリリース

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ショート動画で世間を席巻した「TikTok」だが、EC分野では長らくトラフィック誘導ツールという立ち位置に甘んじていた。

先日、アンドロイド版TikTokの最新版に「ミニプログラム」のメニューが追加された。これはTikTokが大々的に進めるミニプログラムのオープンプラットフォームで、すでに明らかになっているミニゲームのほかに、ECミニプログラムも新たに加わった。

現在、TikTokのECミニプログラムにはシャオミのオンラインストア「小米有品」や大手ECサイト「京東商城(JD.com)」の「京東好物街」などがあり、「ミニプログラム」メニューや動画再生画面、検索画面などからアクセス可能となっている。

EC事業で1年近く模索を続けてきたTikTokだが、ここに来て主導権を握りつつある。

自社システム内の取引を推進

TikTokは昨年3月に、EC最大手「タオバオ(淘宝)」と提携する形でEC事業に参入、タオバオのショッピングカートとTikTokのプラットフォームを連携させた。昨年11月11日の「独身の日」には、ショッピングカートシェア機能を持つTikTokアカウントが売り上げた商品は10万点に上り、売上高2億元(約33億円)をたたき出した。

しかし今、TikTokは自社システム内で消費者の購買行動を完結させることを目指しており、その各プロセスにおける主導権を握りたい考えだ。

昨年5月にTikTokは自社EC店舗の開設を始めた。アプリに組み込まれたEC店舗ならTikTok上で直接購入ができるというわけだ。それに続くTikTokの一連のアクションは全て自前のECエコシステムの基礎固めであり、購買環境をさらに整備する狙いがある。

オンラインでコンテンツ制作から購入に至るまでのEC体系の整備を進めると同時に、オフラインでは位置情報サービスに基づいて販売業者との関係を構築していく。

新しいECミニプログラムでこれらのプロセスが1つにつながり、コンテンツ閲覧から購入に至る全てがTikTokのプラットフォーム内で完結可能になり、必要な外部サービスは決済サービスのみとなる。

防衛と野心

EC事業の取引プロセスを自社陣営に引き入れようとしているのはTikTokのライバルアプリ「快手(Kwai)」も同じだ。快手は昨年末に、自社プラットフォーム内で購入プロセスを完結できる「快手購物助手」というミニプログラムをリリースしている。

タオバオや京東商城もコンテンツ分野に手を広げ、トラフィックの重要な入口となるショート動画を取り込もうと動いている。

EC事業を巡って多業種が入り乱れるなか、TikTokや快手などのコンテンツプラットフォームが取引プロセスへの関与を強化するのも当然の流れといえるだろう。報道によれば、TikTokは今月中にもタオバオへの外部リンクの比重を大幅に下げる予定だったが、業績や他の理由で計画は頓挫しているという。ただし、この情報の真偽についてTikTokのコメントは得られていない。

今のところ、EC事業においてTikTokはインフルエンサーやブランドから手数料を徴収してはいない。しかしゲーム事業やEC事業など新しいビジネスがTikTokの売上高をさらに押し上げることは確実だろう。

ある程度の流通総額を達成できれば、TikTokはEC事業から十分な収入を得ることができるはずだ。さらに自社システム内での取引を確立すれば、取り分はさらに多くなる。

ブルームバーグの報道によれば、TikTokの運営会社である「バイトダンス(字節跳動)」の2018年売上高は500~550億元(約8300~9100億円)とのこと。36Krの調べでは、このうち半分近くがTikTok由来の売り上げだという。今年、バイトダンスは売上高1000億元(約1兆6600億円)を目標に掲げており、当然TikTokも相応のプレッシャーを抱えることになる。これまでのインフィード広告やショッピングカート機能などに続く今回のECミニプログラム投入、TikTokはまさに商業化への道をひた走っている。
(翻訳・畠中裕子)

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