中国版TikTok「抖音」、生活関連サービス事業の目標GMVを前年2倍の約3兆円に設定

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中国版TikTok「抖音(Douyin)」が展開する生活関連サービスは、運営元のバイトダンス(字節跳動)が手掛ける新事業でも昨年最も注目を浴びた事業の一つだ。

情報筋によると、同サービスは昨年、最終的に770億元(約1兆4600億円)のGMV(流通取引総額)を達成し、年初に設定した目標500億元(9500億円)を大きく上回ったという。この件に関して、抖音の生活関連サービス事業責任者はデータが正確ではないとコメントしている。

バイトダンスの梁汝波CEOは、昨年末の全体会議で同社の売上高は成長が鈍化しており、プロダクトのDAU(デイリーアクティブユーザー)も予想を下回ったと指摘している。

昨年下半期からコスト削減と効率向上を強調してきた同社にとって、抖音の生活関連サービスは急速な成長を維持している数少ない事業であり、今年設定した目標を見ても、抖音の成長をけん引することが期待されているのは明らかだ。

23年の目標GMV3兆円は達成可能か

昨年の成長で自信をつけたのか、抖音は生活関連サービス事業の今年のGMV目標を設定するにあたって、引き続き攻めの姿勢をとった。

複数の情報筋から得た情報によると、抖音の生活関連サービス事業は2023年のGMV目標を1500億元(約2兆8500億円)、つまり前年の実績の倍に設定しているという。具体的に、目標GMVの半分である750億元(約1兆4200億円)を飲食、450億元(約8500億円)をその他サービス、300億元(約5700億円)をホテル・旅行事業で達成する計画だ。

振り返って見ると、抖音の生活関連サービス事業のGMVは昨年10月以来、ほぼ毎月100億元(約1900億円)に達しており、ここから考えれば年間1500億元(約2兆8500億円)の目標も現実的だろう。

社内では目標が達成できると確信しているという。生活関連サービス事業は観光業が繁忙期に入る5月の労働節休暇以降が勝負時で、主な成長は6月以降になると想定し、上半期の成長は15%を見込んでいる。このほか社内では同サービスのGMVの上限は2600~2800億元(約4兆9400~5兆3200億円)と見ているという。

GMVでは予想を上回る成長をしているものの、細かい目標に関しては思わしくない点も見られる。

例えば、共同購入の実際の利用率(事前に購入したクーポンを実際にサービスや商品と引き換えた割合)は外部から常に注目されているが、わずか60%前後で2021年と同水準にとどまった。そのため生活関連サービス事業の実際のGTV(総取引額)は470億元(約8900億円)前後とみられる。この数値が同じ生活関連サービス大手の美団(Meituan)では90%近いことを考えると、両社にはかなりの差がある。

利用率が上がらない原因としては、ライブコマースで購入されたクーポンの利用率が低いことが全体に影響しているという。

「抖音が主力としているライブコマースでは多くのタイムセールや値引きなどの販促イベントがある。視聴者はその場では購入するものの、後に返金申請するなどして実際の利用率は高くない」と事情をよく知る人物は話す。

しかしこれらの要素を除いても、美団のようにあらかじめはっきしりした目的があってユーザーが共同購入を利用するのと比べ、抖音はコンテンツ視聴がきっかけになって共同購入の利用につながるため、実際の利用に至るまでには不確定要素が多い。利用率の向上には、消費者に目的のある消費を喚起することが必要となるだろう。

組織再編で各事業を強化

抖音の生活関連サービスは昨年も本社バイトダンスにならってコスト削減、効率向上、スリム化を徹底している。昨年、抖音の生活関連サービス事業のBD(事業開発)部門は約3000人から約1000人に縮小されているようだ。

このほか、年末には組織再編も行っている。生活関連サービスBD部門はこれまで華東、華南、華中などの6大エリアに分割されており、エリアごとにさらに飲食、旅行、ホテル、共同購入などの事業に分けられていた。

今回の組織再編では元々エリアごとに分かれていたのをまず事業で区分するように変更している。それぞれの事業区分はさらに細分化して、具体的なカテゴリーを設定するという。

組織再編の主な理由は、23年はこれらの細分化したカテゴリを重点的に深掘りして収益向上を目指すからだという。

抖音の攻勢に対し、美団も備えている。美団の地方の代理業者の一部が昨年、提携事業者に対し自社と提携するか、それとも抖音を取るかという二者択一を迫っていたことがわかった。抖音の生活関連サービス事業の成長を見ると、今年は両社の競争がより激しくなることは間違いないだろう。
(翻訳・山口幸子)

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