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電気自動車(EV)を中心とする中国の新エネルギー車(NEV)輸出が勢いを増している。欧州や東南アジア、中東、中南米に進出している中国の自動車メーカーが次に目を向けるのは、「新エネルギーの孤島」とも呼ばれるオーストラリアだ。
英紙ガーディアンによると、オーストラリアにとって中国は、急速に最大の自動車輸出国の1つとなった。中でもNEVは同国市場でますます受け入れられつつある。比亜迪(BYD)や上海汽車集団傘下の「MG」、吉利汽車(Geely Automobile)、長城汽車(Great Wall Motor)といった中国メーカーが同国で事業を展開し、2022年にはBYDとMGが同国で最も売れたNEVランキングに名を連ねている。
中国NEVメーカーがオーストラリアに向かう背景
20年時点の欧州のNEV普及率は1割程度で、同じく先進国であるオーストラリアのNEV販売台数は、新車販売台数全体の0.7%にとどまっていた。
従来型エネルギーの主要輸出国であるオーストラリアは、1人当たりのCO2排出量がOECD加盟国の中でカナダに次いで2番目に多い。同国政府は国際的な批判と圧力にさらされ、エネルギー効率の改善とCO2排出量の削減に本格的に取り組み始め、NEV産業の発展を後押しするようになった。
オーストラリア政府はカーボンニュートラル目標のもと、30年までに170万台のEVを導入し、40年までに国内に約35万基の公共充電設備を設置する予定だという。オーストラリア労働党はEVの輸入関税を5%免除することも計画している。
さらに、同国の各州政府もNEV購入を促進するため、補助金の導入に乗り出している。例えば、オーストラリア首都特別地域ではEVを新たに購入する際の印紙税が免除され、ビクトリア州では6万8000豪州ドル(約620万円)以下のNEVを購入すると、3000豪州ドル(約27万円)の補助金が支給されるという。
消費者のNEVに対する需要と購買力も大幅に向上している。オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)によると、NEV販売台数は、21年には1万7000台だったが、22年には3万3000台以上とほぼ倍増している。
これらのことを踏まえると、中国のNEVメーカーが同国で成長する余地はまだ十分にあるといえよう。
コスパ高いが知名度の低い中国NEV
米国、ドイツ、日本、韓国に続いて、中国の自動車メーカーもオーストラリア市場に参入し始めている。中国製自動車の販売台数は、2017年の5000台未満から22年には12万台以上へと激増している。オーストラリア電気自動車協会(EVC)のBehyad Jafari最高経営責任者(CEO)によると、オーストラリア人がNEVを含む中国製自動車を購入する意欲はますます高まっているという。
中国メーカーはここ数年、車体のデザインやスマート化、機能性の点で、またバッテリーやモーター、電子制御などの技術面でも、飛躍的な進歩を遂げている。そして、常に中国メーカーの強みとなってきたのは、コストパフォーマンスの高さだ。
オーストラリア市場では、3万~6万豪州ドル(約270万~550万円)のエントリークラスのNEVは選択肢が少ない。中国以外の海外製NEVは総じて高価で、割高感が大きい。例えば、米テスラの中で最も安価な「モデル3」の販売価格は6万7000豪州ドル(約610万円)となっている。一方、中国BYDの「ATTO3」はモデル3と同クラスだが、4万5000~4万7000豪州ドル(約410~430万円)と割安だ。オーストラリアの大部分の消費者も、初めてNEVを購入する際、同じクラスの車なら、より手頃な価格の車を選択することに変わりはない。ここに中国の自動車メーカーにとってのチャンスがある。
とはいえ、中国車の海外進出が立ち遅れたことにより、国際市場における中国メーカーのブランド力や競争力はまだ十分ではない。22年のオーストラリアのNEV売り上げランキングでは、米テスラが依然として圧倒的なリードを保っており、次いで韓国の現代自動車、日本のマツダ、三菱と、燃料車時代からの人気メーカーが続いている。中国メーカーに関しては、知名度や評価が高いBYDとMG以外は、十分な影響力を形成できていないのが現状だ。
*2023年5月24日のレート(1豪州ドル=約91円)で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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