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中国電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)が10月30日、2023年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比38.49%増の1621億5100万元(約3兆3100億円)、親会社に帰属する純利益は同82.16%増の104億1300万元(約2130億円)と大幅に増加し、1日あたりの純収入は1億1300万元(約23億1000万円)となった。
BYDは今年に入ってから装備の追加や値下げを行った売れ筋モデルを相次いで市場に投入したことで、新エネルギー車(NEV)の今年1~9月の販売台数が207万200台に達し、8月には同社にとって500万台目のNEVがラインオフした。注目すべきは、BYDが純電気自動車(BEV)の販売台数で、すでに米EV大手・テスラにほぼ並んだことだ。今年7~9月のBEV納車台数は、テスラの43万5100台に対し、BYDは43万1600台で、両社の差はわずか3456台だった。BYDはBEVとプラグインハイブリッド車(PHEV)の2本柱の戦略をとっていることから、3カ月の販売台数はテスラのほぼ2倍に達している。
納車台数が増加したことで、BYDの車載電池も搭載量が増加した。今年1~9月のBYDの車載電池搭載量は74GWhで、市場シェアは28.94%に達し、車載電池業界でトップの座を維持しているCATL(寧徳時代)との差は13.81%にまで縮小した。
粗利率では、労働能率を重視するBYDが、ロボットで徹底的な効率化を進めるテスラを上回っている。22年7~9月の粗利率はテスラが25.1%、BYDが15.89%で、テスラが10ポイントリードしていたが、23年7~9月はテスラが17.9%に低下した一方で、BYDは19.79%に達した。
海外市場でもBYDは競争力を増してきている。ミドルサイズe-SUV「ATTO 3(アットスリー)」(中国名「元PLUS」)がタイ、シンガポール、スウェーデンなどでNEV単月販売台数の首位を連続で獲得したほか、コンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」も欧州と日本で発売された。BYDの王伝福会長は株主総会で、BYDはかつてなく好調な時期にあり、3~5年のうちに市場シェアを大きく伸ばす自信があると述べた。
とはいえ、急成長を遂げるBYDにも懸念は存在する。
一つはますます激化する市場競争だ。中国国内市場の自動車メーカーは価格競争に陥っており、新車発売の度に販売価格の下限は下がり続け、BYDが握る価格決定の主導権も影響を受け続けている。
また、市街地向け運転支援機能の実用化が進んだことで、車を購入する消費者がスマートドライビング機能を重視するようになってきた。BYDは自動運転技術で後れを取っており、この弱点が将来的に成長のボトルネックとなる可能性がある。
BYDは今年の目標販売台数を300万台に設定している。この数字を達成するには10~12月に92万台、月平均で約31万台を販売する必要がある。NEVメーカーにとって前例のないこの高い目標を、果たしてBYDはクリアできるだろうか。
*23年11月4日のレート(1元=約20円)で計算しています。
(翻訳:浅田雅美)
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