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「ウルトラマン」は57年という長きにわたり、世界的な知的財産(IP)として注目されてきた。
ウルトラマンシリーズの制作会社・円谷プロダクションを傘下に抱える円谷フィールズホールディングスが2023年2月に発表した決算によると、中国の玩具分野でウルトラマンが初めてディズニーを抜いてシェア1位になった。また、中国でウルトラマンのIP使用を許諾されている「浙江卡游動漫(Zhejiang Kayou Animation)」(以下、「卡游」)は、1パック9.9元(約210円)からのウルトラマン・トレーディングカードだけで、年間30億元(約630億円)を売り上げているという。
ウルトラマン・カードの最大の購入者は小学生だ。ごく普通のカードながら、開封するまで何が出るか分からないというワクワク感を持たせ、小学生の興味をそそることで人気に火を付けた。
1枚が20万円になるカードも
カードのコレクションは目新しい遊びではなく、一般的にはトレーディングカードゲーム(TGG)と呼ばれている。各カードにはキャラクターの属性や特殊能力などが表示されており、プレイヤーはレアカードを集めて手持ちのラインナップを強化できる。
中国の2000~2010年代生まれの世代になると、トレーディングカードはゲーム性が薄れ始め、「コレクション」「ブラインドボックス」「ソーシャル」の特性が重視されるようになった。
ウルトラマン・カードの1パック価格は小学生がお小遣いで買える9.9~129元(約210~2700円)だ。1パックに8種類のカードがランダムに入っている。各カードにはさまざまウルトラマンのキャラクターが印刷され、キャラクターのストーリー、必殺技、身長などの情報も記載されており、カードごとにSSR、PR、SR、Rなどのグレードが付けられている。
グレードが高いウルトラマン・カードほど希少価値が高く、独自の流通市場も形成された。非常にレアなカードは、フリマサイトの閑魚(Xianyu)において1万元(約21万円)以上で取引されることもある。
卡游もカードが持つ「ギャンブル性」を利用している。 1パックわずか9.9元(約210円)で1万元(約21万円)以上のウルトラマン・カードが手に入る可能性を強調し、消費者を誘うような形で購入を促している。
中国メディア・中国消費者報の報道によると、ウルトラマン・カードに費やすお金が1万元(約21万円)前後の人は一般的なファン、10万元(約210万円)を超えるとエキスパート、100万元(約2100万円)以上ならカード王と呼ばれる。
ウルトラマンはすでに中国の子どもに大人気のキャラクターとなっており、カードに対する関心の高さによって子ども同士が交流する手段の1つになった。グレードが最も高いSSRのカードを運良く引き当てた子どもは、それを他の子どもたちに自慢し、マウントを取るようになっている。
こうしてウルトラマンのIPは、それを手に入れれば寝ながらにしてお金を稼げるいわば「金のなる木」となった。
1年で630億円を売り上げるトレーディングカード事業
ウルトラマンの版権は非常に複雑だ。日本の円谷プロダクションが版権元となっている。中国市場では円谷プロダクションがその版権を日本のバンダイに売却、バンダイがIPライセンスサービスの新創華(SCLA)に版権を与え、さらに新創華が卡游にウルトラマンの画像をカード上で使用する権利を与えた。
2011年に設立された卡游は版権の取得後、ウルトラマン・カードを大々的に生産してきた。卡游に近い複数の投資家によると、同社の20年の売上高は30億元(約630億円)、純利益は約12〜15億元(約250億~320億円)だったという。
年間30億元(約630億円)近くを売り上げるトレーディングカード事業は、卡游が構築した巨大な店舗販売システムに支えられている。公表資料によると、同社は100店を超えるコア販売代理店を持ち、10万店以上の小売店で製品を取り扱う。2021年から現在までに31店の直営店をオープンした。
公式サイトによると、卡游は上海市と浙江省に拠点を置き、うち上海市は研究開発・運営センター、浙江省は生産・物流センターとなっている。また、広東省広州市、浙江省杭州市、日本にも支店を設けている。
大規模な直営店、多数のコア販売代理店、小売店に加え、収益性の高いトレーディングカード事業には投資家が自然と注目する。同社には2022年に紅杉中国(HongShan)が出資し、あるメディアは当時の企業評価額が10億ドル(約1500億円)に達したと伝えた。また、24年に香港で株式の新規公開(IPO)を計画しているという。
作者:鋅財経(WeChat公式ID:xincanjing)、孫鵬越
*2023年11月22日のレート(1元=約21円、1ドル=149円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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