自転車部品の巨人「シマノ」に挑む。中国企業、高価格のeバイク変速機に照準

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中国製の電動アシスト自転車(eバイク)を欧州の街中で見かけることが多くなった。しかし、そのコア部品のほとんどが日本製や米国製という事実はあまり知られていない。中国は金額にして年間200億元(約4200億円)あまりの自転車用変速機を輸入しているという。自転車に占める変速機のコストは20~30%に過ぎないが、全体の利益の80%を生み出すこともある。

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変速機は自動車と同じようにeバイクのコアパーツであり、サイクリングの効率を高める重要な役割を担う。しかし中国の自転車用変速機市場では、日本のシマノや米国のSRAMといった海外メーカーが95%ものシェアを握っている。

この現状を前に「国産品への切り替え」の声が高まる中、広東省を拠点とする「洛梵狄智能科技(Lofandi Intelligent Technology)」(以下、Lofandi)が確実に成長している。2012年に設立された同社は、電動マイクロモビリティの世界的なティア1サプライヤーを目指し、数千万元(数億~十数億円)を投じて電動内装変速機システム(Motor Electronic Gear System、MEGS)の技術プラットフォームを開発した。最近では、eバイク用モーターを手がける中国の安乃達(Ananda)と提携し、MEGSプラットフォームを採用した初の内装3段変速機をリリースしている。

Lofandiによると、内装変速機は将来的にeバイクの標準装備となる見通しだが、求められる技術レベルが高くサプライヤーが不足しているうえ、eバイクそのものが高価なため、高い利益率が見込めるという。現在、電動内装変速機に関する特許を持つメーカーは世界で5社に満たない。eバイクの世界的な販売増とスマート化に伴い、同社は世界大手企業とのシェア争いを期待される中国の変速機メーカーとなった。

画像:企業提供

同社が歩んできた道のりは決して平坦ではない。創業者の李激初氏は長年のサイクリング愛好家として、海外メーカーによる市場の独占状態を打ち破りたいと考え、2012年に変速機を一から開発するチームを立ち上げた。しかし、中国には内装変速機に関わる製造技術が乏しく、開発にも多額の資金が必要だったため、同社の変速機プロジェクトは一度中止を余儀なくされた。幸運にも、15年に起こったシェアサイクルブームが転機となり、スマートロックの製品化に成功した同社は、複数のモビリティブランドにとって欠かせないサプライヤーとなって、新製品開発の基盤を築いた。

中国のeバイクブランドによる海外進出が始まった2021年に新たな資金調達を実施し、内装変速機の製品化を再開した。電気自動車(EV)産業の発展によって、変速機の部品を加工できるメーカーが増え、同社のプロジェクトも順調に進んだ。

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内装変速機では、ギアポジションのコントロールとスムーズなギアチェンジがカギを握る。同社は、伝動機構や変速装置などを改良しながら独自開発を進めた。2024年5月現時点で、計311件の特許を取得し、内装変速機に関わる多くの知的財産権を保有している。

林傑煌CEOによると、同社はeバイク用の電動内装変速機をオーダーメイドで開発できるという。「業界のメガカンパニーであるシマノは、内装変速機の製造で数十年の歴史を持つが、顧客に合わせたオーダーメイドの製品を作ることはない。eバイクは従来の自転車よりも、内装変速機に求められる機能と性能はずっと高い」と話した。

電動内装3段変速機に続く新製品の手動・自動一体式内装5段変速機は、手動だけでなく、回転速度に応じた自動変速も可能で、ハイエンドなeバイクに搭載される。

画像:企業提供

また、特許の超高トルク(UHT)技術は、非常に狭いスペースでの多段変速を可能にする。従来のラチェットに代わるローラークラッチが、変速時に力を均等に分散して伝えるため、変速機の耐久性と安定性が大きく向上するという。

世界のeバイク市場が着実に成長し、eバイクの改良が進む中、ミッドドライブモーターや内装変速機といった高い技術を要するコアパーツは、ミドルレンジやハイエンドなeバイクの標準装備となる見通しだ。Lofandiは、技術革新力と特許技術を武器に市場シェアを高め、海外大手メーカーの牙城を崩すことが期待されている。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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