全固体電池向け新素材で攻勢 中国・中偉半導体、EV普及見据え生産強化

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新材料開発を手がける中国スタートアップ「中偉半導体材料(Zhongwei Semiconductor Materials)」がこのほど、エンジェルラウンドで厦門高新投(High-tech VC)から500万元(約1億円)を調達した。資金は、全固体電池の固体電解質材料となる高純度硫化リチウムの生産設備や工場の建設に用いられる。また、2026年を目途にシリーズAで数千万元(数億円超)の資金調達を計画している。

2021年に設立された中偉半導体は、主に半導体向けの超高純度金属や高純度化合物、固体電解質材料に特化し、研究開発から試作、生産、販売までをトータルに手がける新材料メーカーだ。半導体向け超高純度金属材料と全固体電池材料の2種類で展開する製品は、新エネルギー自動車(NEV)や航空・宇宙、ハイエンド医療機器、赤外線チップ材料などの分野で活用されている。

赤外線チップ材料の分野で活用される中偉半導体

中国では2024年にNEVの生産台数が初めて年間1000万台を超え、今後も大きな需要が見込まれている。中国国務院は、27年までに新車販売台数に占めるNEVの割合を45%に引き上げる方針を打ち出した。

中国、NEVの年間生産台数が1000万台を突破 世界初

こうした中、全固体電池が次世代の電池技術として期待を集めている。中国電気自動車百人会(China EV 100)は、2027年に全固体電池の車載が始まり、30年に量産化が実現すると予測、搭載した電気自動車(EV)は従来の電池に比べて航続距離が2倍に延びるうえ、コストが25%減少する見込みだ。

中偉半導体が開発する固体電解質材料の高純度硫化リチウムは、現在の生産量が10トンと、約40万台分の全固体電池を作ることが可能な量で、将来的には100トンを目指すという。

中国、全固体電池EVを2027年に実用化へ 「市場シェア1%達成には10年必要」

創業者の王中兵氏は「当社の製品は顧客が採用を決定するまでに時間がかかるが、採用に至ればその定着性は高い」と話す。同社は比較的早期に新エネルギー車分野の顧客を開拓し、技術と製品の開発を進めると共に実績を積み上げ、市場シェアを高めてきた。すでに業界の主要サプライヤーとなっており、大手企業を含む30社以上と提携している。

「工業の頭脳」と称されるチップに使う超高純度の金属や化合物材料は長らく、カナダの5N Plus、日本のラサ工業、フランスのRIBER、米国のIndium Corporationなどの海外メーカーが市場を独占してきた。中国産のチップは依然として海外製の材料に頼っている状態で、材料を国内製に替えていくことが今後の課題となる。

中偉半導体の半導体向け超高純度材料は、赤外線チップや太陽光発電、ハイエンド医療機器といった大きな成長が見込まれる分野にも活用できる。太陽光発電の分野では、テルル化カドミウム(CdTe)単結晶やセレン化銅インジウムガリウム(CIGS)といった薄膜材料の実用化が進んでおり、太陽電池の分光感度特性を大きく向上させることが期待されている。

同社の最大の強みは、20種類以上の超高純度金属や化合物の精製プロセスに精通した、国内有数の技術陣を擁している点にある。メンバーはいずれも業界で20年以上の実務経験を持つベテランで構成されている。さらに、「国家ハイテク企業」や「科学技術型中小企業」に認定されており、発明特許4件と実用新案14件を保有している。

将来的には、海外の技術チームを導入することでさらなる成長を図り、適切なタイミングで海外市場の開拓に力を入れる方針だという。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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