小売実店舗でもデータ駆動型のCRM・販促戦略は可能 米「Punchh」がシリーズCで44億円調達

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実店舗を運営する小売企業(フィジカルリテーラー)向けの顧客分析・デジタルマーケティングプラットフォームを提供する米企業「Punchh」がシリーズCで4000万ドル(約44億円)を調達した。出資を主導したのはアダムス・ストリート・パートナーズ、Sapphire Venturesで、アライアンス・バーンスタインも出資に参加した。Punchhは累計6810万ドル(約75億円)を調達し、評価額は3億ドル(約330億円)に達した。

Punchhは2010年に創業し、AIツールと機械学習技術をかけ合わせて、飲食店やコンビニエンスストアなどをターゲットに顧客分析・マーケティングの個別立案を行ってきた。キャンペーンプランやマーケティング活動を通じて顧客体験を改善し、収益を引き上げ、フィジカルリテーラーの立ち上げやロイヤリティ向上を支援する。

競争の激しい小売業界で、いかにしてデータ主導のカスタマーリレーションを確立するかは、ブランド競争力を維持するにあたって必ず歩む道のりだ。消費者インサイトに関してはEコマースが全面的に優勢で、消費者の行動分析に用いる顧客データの取得も容易だ。一方の実体経済においては、データ収集や分析ツールが明らかに不足している。

しかし、2019年時点で世界の小売業販売総額に占めるEコマースの割合は10%にとどまる。残り90%は実店舗経由の売り上げということだ。つまり、Punchhの事業がターゲットとする市場には巨大なチャンスが眠っているということを意味する。

「Punchh」が提供するAIモデルは、消費者と商品のマッチング、顧客流失率の予測、ライフサイクルの価値予測および顧客からのフィードバック収集で、この三つの方向性から消費者インサイトを割り出し、フィジカルリテーラーを支援していく。

一つ目の支援策は顧客獲得プランで、リアルタイムで収集した販売データを活用する。会員カード、POS(販売時点情報管理)レジ、店内フリーWi-Fi、モバイル決済などから取得したデータを用いて消費者像を定義していく。フィジカルリテールではよくみられる現金取引からも分析が可能だ。消費者がいつ、どこで、何を、何と組み合わせて買ったかなどを把握して消費者セグメンテーションを行い、その消費者行動を予測できるようになるのだ。

二つ目の支援策は割引などのキャンペーンプランで、AIがリアルタイムで販促活動を主導し、ブランドのキャンペーン活動を支援する。消費者が欲しい時に欲しいクーポンを配布することで、売り上げ向上につなげる。

三つ目の支援策は、機械学習ツールを用いた顧客ロイヤリティ向上プランだ。会員をステータス別に分類・管理し、ピンポイントでインタラクティブな販促活動を立ち上げ、顧客生涯価値(CLV、顧客が企業にもたらす利益の総計)を確立する。

現在の取引先はピザハット、ケンタッキーフライドチキン、タコベルなどファストフード大手を含む飲食関係に集中している。分析プラットフォームにはファストフード約8万店を取り込んでおり、全世界1億2500万人分の顧客データの分析を支援している。

収集したデータはPunchh自身のAIモデルを改善することにもつながる。機械学習能力を強化し、さらに高精度な分析やレコメンデーションアルゴリズムを提供していくことにもなる。

Punchhが公表したデータによれば、同社のサービスを導入したフィジカルリテーラーが開催したキャンペーン活動への顧客の参加率は平均85%で、ロイヤリティは平均58%にまで向上している。今回調達した資金は事業を拡張し、小売業のニッチ分野を開拓することに充てられる。先日は米国最大手のコンビニの一つ「ケーシーズ・ゼネラル・ストアーズ」と提携関係を結んだ。ケーシーズは米国中西部の16州で2100店舗を展開している。
(翻訳・愛玉)

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