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中国の電気自動車(EV)メーカー「Zeekr(ジーカー)」が、2026年にも日本市場で大型EVミニバン「ZEEKR 009」の販売を開始する。販売を担うのは、京都大学発のスタートアップで、商用EV関連事業を展開するフォロフライだ。同社の小間裕康社長がJapan Mobility Show 2025(東京モビリティショー)の会場で明らかにした。
ジーカーは中国の自動車大手・吉利汽車グループ傘下の高級EVブランドで、日本市場への参入は初めてとなる。中国勢ではBYD(比亜迪)に続く動きだが、国土交通省の型式指定を取得しての本格展開ではなく、フォロフライが独自に輸入して販売する形だ。販売価格は1300万円からで、2026年の発売を予定している。
小間社長は「すでに数百台の予約が入っており、企業経営者や富裕層からの引き合いが強い。年間1000台規模の販売を目指す」とコメントした。

「移動する社長室」としての位置づけ
ZEEKR 009は、全長5209mm、全幅2024mm、全高1812mmの堂々たるボディサイズを誇る大型電動MPV(多目的車)。最大7人が快適に過ごせる広い室内空間を持ち、先進的な人工知能(AI)アシストシステムを搭載する。航続距離は最大822キロ、 0-100km/h加速は4.5秒と高い走行性能を実現。販売戦略は一般消費者向けではなく、企業の社長車や富裕層インバウンド(訪日客)の送迎・ハイヤー用途など、いわゆるB2B市場を中心に据える。「移動する社長室」としての利用を想定しており、トヨタ「アルファード」「ヴェルファイア」やレクサス「LM」と競合する構図となる。
BYDは現在、中型ミニバン「夏」などの大型車種を日本に投入しておらず、中国勢として先行してこの市場を形成できるかが注目される。
フォロフライは自社工場を持たず、設計・販売・運用支援に特化しているが、メンテナンスなども対応し、引き合いによってはショールームで展示する展開も目指す。小間社長は「アフターサービス網を充実させ、部品の供給や整備網をきちんと実現した上で、一般ユーザーにも展開できるようにしたい」と述べた。
BYDはディーラー網を全国展開し、3年で7000台というペースを達成した。小間社長は「BYDと吉利汽車はトップ2のライバルだが、まったく違う戦略でコストをを抑えながら市場を作っていきたい」と説明する。

右ハンドル市場を開拓
Zeekrは2021年に吉利汽車が立ち上げたプレミアムEVブランドで、わずか3年で中国国内販売台数20万台を突破した。オーストラリア、シンガポール、タイなど右ハンドル市場では既に販売されており、同様に右ハンドルの日本での販売は効率性の向上につながる。
また、吉利グループはボルボやロータスを傘下に収めており、高級車の製造ノウハウを取り込み、EVとソフトウェアの融合で競争力を高めてきた。世界的メーカーがひしめく日本市場で、どこまで存在感を示せるかが焦点となる。
今回の日本進出では、Zeekr自社でディーラー網を構築せずフォロフライのような現地パートナーを通じて展開を拡大する戦略を採用した。小間社長によると、フォロフライも独占契約ではなく、他社が扱う可能性もあるという。

高級・大型EVの逆張り戦略
日本の自動車市場では、軽自動車とコンパクトカーが新車販売の約7割を占める。ZEEKR 009のような大型EVを最初に投入する戦略を疑問視する意見もある。ただ、企業向け商用車で実績を積んできたフォロフライだからこそできるこの逆張り戦略で、大型中国車の市場を創り出そうとしている。

トヨタ「アルファード」やレクサス「LM」など、企業や富裕層向け高級MPV市場は年間数万台規模に過ぎないが、ブランドイメージの発信力が極めて大きいとされる。Zeekrはあえてこの分野から参入し、「高級感」「革新性」「中国テックの信頼性」というブランドイメージを早期に浸透させ、知名度アップを狙いたい考えだ。ZEEKR 009の投入は、日本市場での「広告塔」としての効果が期待されている。
Japan Mobility Show 2025では、BYDの軽EV「ラッコ」が注目を集めた。来年にも47全国津々浦々までの100店舗のディーラー網を完成させ、日本人の普段使いの足として入り込みを狙う。一方で、こうした王道とはまったく逆のニッチを狙う高級・大型の逆張り戦略で、Zeekrはひっそりと進出を果たそうとしている。
(36Kr Japan編集部)
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