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2017年に設立された中国の「上海漣泉酒店管理有限公司(Shanghai Lianquan Hotel Management)」はスーパー銭湯「漣泉大江戸(さざなみ漣泉)」をチェーン展開する。2018年1月に1号店をオープンさせ、今では上海市、浙江省紹興市、江蘇省淮安市で5店舗を運営する。各店舗の面積は8000~1万5000平方メートル、温泉やサウナなどに加え、レストランやフォトスタジオ、猫カフェ、ゲームコーナー、タロット占いなど若者に人気のあるサービスを約30種類提供する。漣泉大江戸の特徴は日本の質の高いサービス基準を取り入れている点だ。
利用者の一般的な滞在時間は5~6時間、ほとんどが入浴以外のサービスも利用する。客単価は平均220~250元(約3520~4000円)でリピート率は50%近い。漣泉大江戸は全体の売上高が1億6000万元(約25億6000万円)に届くとみている。また、昨年8月には中国のホテル大手「華住酒店集団(Huazhu Hotels Group)」から数千万元(約数億円)の戦略的投資を受けたことを発表している。
漣泉大江戸の董事長を務める柴国強氏は公費で日本に派遣され、その後米金融大手ゴールドマン・サックス日本法人で10数年勤務した経験を持つ。
柴氏によると、中国の温浴関連市場の規模は約3000億元(約4兆8000億円)、そのうち入浴施設が2000億元(約3兆2000億円)、スパ施設などが600億元(約9600億円)を占め、温泉リゾートも数百億元(数千億円)に上る。業界には約6万の入浴施設がひしめくが、5000平方メートル以上の大型総合温浴施設は10%に過ぎず、チェーン展開している事業者の比率はわずか0.5%にとどまる。市場構造は極めて分散的であり、参入者のレベルも高くない。施設の内装は古臭く、サービスは時代後れだ。加えて、業界最大の不満点は衛生面にある。
漣泉大江戸は自らを健康、レジャー、エンターテインメント、社交のニーズを満たす総合温浴施設と位置づけ、業界の「ディズニーランド」を目指している。
日本では、温浴施設は屋台が建ち並ぶ縁日のような作りとなっている。飲食も遊びも何もかもが揃い、入場料、飲食、その他サービスの収入がそれぞれ3分の1を占める。一方、中国では入場料による収入が70%近くを占め、付帯サービスの消費は少ない。だが漣泉大江戸の場合、入場料収入の比率は40%にとどまる。利用者の平均滞在時間は業界平均の2時間前後に対して5時間に上る。
柴氏は漣泉大江戸ブランドの強みを次のように説明する。第一に、立地選定。同社が立地面で最も重視するのは「居住者の多さ」だ。例えば上海の繁華街、南京東路は人出こそ多いものの、居住者は少ない。一方、郊外の虹橋や五角場などは居住者が多く、仕事帰りや週末のレジャーに対するニーズをとらえることが可能だ。第二に、衛生的な環境。日本から輸入した設備を導入し、入浴設備の水流を確実に循環させ、水の清潔さを保っている。第三に、サービス。各店舗に日本人スタッフを2人配置している。日本のサービスは評価が高く、基準も非常に厳しい。例えば床の清掃状況は素手で触って確認し、利用者が施設内を裸足で歩けるようにしている。また、サービスの質を確保するため、同社は日本人スタッフが「現地化」する必要は無いと考えている。日本的サービスを一貫して保つことを原則とし、日本人スタッフは一定期間ごとに勤務する店舗を異動する。また、デジタル化された管理システム、サービスロボットなど新技術の導入も進めており、質を保つと同時に人件費削減にも取り組んでいる。
同社は東急不動産ホールディングスと提携しており、東急側が立地選定、開業、運営、スタッフ研修などの面で力を貸している。同社は現時点で10人の日本人スタッフを抱えているが、普通の中国企業が日本人適任者の採用、ビザの手配、仕事の調整をやってのけるのは難しいだろう。
ブランド拡張の上では華住酒店集団の出店ノウハウや調達体制、会員システムが役立っている。漣泉大江戸の会員システムはすでに華住酒店集団の会員システムと共通化され、華住酒店集団の会員1億2000万人が漣泉大江戸を認知できるようになっており、一部は漣泉大江戸の利用者になっている。
同社は今後、3タイプの店舗展開を進める計画だ。一つ目は現行の店舗タイプと同類の都市部に出店する総合型で、主に都市部居住者をメインターゲットとする。二つ目はホテル提携型で、ホテル内に浴場を設ける。三つ目は大規模温泉リゾート型で、観光地の温泉街と提携する。また、上海では主に直営や共同経営のかたちで店舗を展開するが、その他地区ではフランチャイズ制を中心とする方針だ。
柴氏は他都市への拡張を進める上で、「漣泉」ブランドと運営経験を維持しながらも、都市ごとの文化や消費習慣に基づいて店舗の位置づけを選択すると説明。例えば陝西省西安市では「江戸」ではなく「唐代」の雰囲気を備えた施設にしたり、他都市ではヨーロッパ風の施設にしたりする可能性を示唆している。
(翻訳担当・池田晃子)
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