認知率37%の壁を崩せるか——TCL日本、山崎賢人起用と世界初Gemini搭載TVで攻勢

中国の総合家電メーカー・TCLは5月14日、東京都内で日本向け新製品発表会を開催し、2026年テレビ・モニターの新ラインナップと、新ブランドアンバサダーに俳優・山崎賢人さんを起用したことを発表した。日本市場で初めて本格的なテレビCMを展開し、過去最大規模のマーケティング投資に踏み切る。さらにGoogle TVへのGemini搭載でも世界で最初に導入するブランドとなる。発表会後、同社の蒋賛社長が単独インタビューに応じた。

BCNによると、日本のテレビ市場におけるTCLの販売台数シェアは2021年の5.3%から2024年に10.6%に拡大した。ただ、2025年でもTVS レグザ(26.0%シャープ(19.7%ハイセンス(16.6%TCL(10.2%と上昇傾向になっているものの、日本市場での知名度アップが課題になっている。

日本テレビ市場で中国メーカーシェアが約50%の衝撃

山崎賢人を起用、過去最大の広告投下へ

山崎賢人さんをアンバサダーに起用

社内調査によれば、TCLの日本市場での認知率は約37%にとどまり、中国の競合ハイセンス(約60%)との差は依然大きく、テレビ購入時に想起される3社にも入り切れていない。

この壁を突破するため、TCLは初めての大規模テレビCMキャンペーンに踏み切った。リーチは昨年末(平野歩夢氏を起用、東京限定)から東名阪さらに広域へと一気に拡大し、デジタル広告、OOH(屋外広告)、交通広告まで総動員する。

中国TCL、平野歩夢選手をアンバサダーに起用。日本エアコン市場に参入、「85インチ超」戦略も推進

新たなブランドメッセージは「いちばん綺麗に、観てほしい」。マーケティング戦略を統括する久保田本部長は「スペックや機能の説明ではなく、すべての映像視聴者への想いを込めた」と説明する。画質スペックの数字勝負から「体験価値」の訴求へ転換する。新アンバサダーに起用された山崎賢人さんは7月公開の映画「キングダム」新作にも出演予定で、相乗効果も視野に入れているという。

販売チャネルも同時に拡張する。ヨドバシ、ビックカメラ、エディオン、ケーズデンキなど既存量販店との取引で「一店舗あたりの間口数が1.5倍程度に広がっている」とされ、店頭での露出機会も大きく増える。

「いちばん綺麗に、観てほしい。」というブランドメッセージ

世界初、Google TVへのGemini搭載

今回の発表でTCLが最も力を込めて打ち出したのが、Google TVへのGemini搭載である。2026年夏から順次アップデートで提供される予定で、テレビメーカーとして世界初、しかもパートナーであるGoogleと並ぶ形での先行導入だ。Geminiは生活・学習サポート、スマートホームセンターの3機能をテレビに付与する。テレビが常時オン状態でも違和感を生まないよう、ゴッホなどの名画やAI生成画像、家族写真を表示する「プライベートギャラリー」機能も搭載した。Gemini、TCL独自AI、Googleアシスタントの連携によって、視聴シーンの外側まで体験を拡張する構想だ。

Gemini搭載は最上位X11Lから順次、段階的に展開される。日本でも本国・米国に続く最速タイミングでの提供が予定されている。

日本での勝利が「グローバル全体の底上げ」を生む――蒋社長の戦略観

戦略観を語ってくれた蒋社長

ここまでの投資と先行投入について、蒋社長は次のように語った。

「日本市場はTCLにとって、高価値かつハイエンドな極めて重要な拠点だ。今年に始めたわけではなく、毎年着実に進歩を重ねてきた結果が今に至っている。今年の製品力、特にSQDは非常に強い。この製品力が、今のステージに我々を押し上げた」

蒋社長が強調したのは、日本市場の消費者特性への理解だ。「日本の消費者は長期的な価値を重視し、ブランドへの信頼感を非常に大切にする。だからこそ、人材、資金、研究開発などあらゆる面で大きな投資を行ってきた」。今回SQD Mini LED搭載モデルへの3年保証延長を打ち出したのも、その信頼構築の一環である。

販売目標を問うと、答えは意外なものだった。「現状、市場でのパフォーマンスは悪くない。だが最も重要な目標は、日本の消費者を満足させることだ。まず消費者にTCLを思い出してもらい、TCLを勧めてもらうこと。そうすれば最終的に良い評判と信頼感が生まれる。このサイクルさえできれば、市場目標は自然に達成される」。

蒋社長が繰り返したのは、日本市場と本社の「双方向性」だ。「日本市場で得た消費者インサイトを製品に反映し、優れたアイデアはグローバルにも展開する。日本での取り組みが製品力・ブランド力・サービス体制を底上げし、それが自然とグローバル全体に波及する」。

戦略のスコープはテレビにとどまらない。「今日発表したエアコン、冷蔵庫、洗濯機、モニターも含めて、TCLの全製品を段階的に日本市場に導入していく」と蒋社長は明言した。実際TCLは2025年からドラム式洗濯機、冷蔵庫を日本に導入済みで、2025年末にはエアコンも追加投入される予定だ。

SQD Mini LED、画質でも他社と一線を画す

SQD Mini LED

戦略商品は、フラグシップ「X11L」をはじめとするSQD Mini LEDシリーズ。BT.2020色域を全画面で100%再現できることが最大の訴求点だ。蒋社長は「RGB Mini LEDは純色でDCI-P3を100%出せるが、色が混ざると物理的にクロストーク(色にじみ)が発生する。これは技術自体の物理的な制約だ。SQDは全画面で100%の色再現を実現する。だから社内技術ヒエラルキーでもSQDを第一に位置付けている」と競合技術との差を強調した。

音質面ではC7L/C8L/X11Lにデンマークの音響機器メーカーBang & Olufsen(バング&オルフセン)と共同開発、下位のRM7LとA400Mには日本ブランドONKYOのスピーカーを採用し、価格帯ごとに音響ブランドを使い分ける構成とした。

中国メーカーとしての価格優位は、もはやTCLの主戦場ではない。山崎賢人さんを起用した過去最大の広告投下、世界初のGemini搭載TV、ハイエンド技術と3年保証。2026年のTCL日本戦略は、世界4位ブランドが「想起される3社」入りを果たすための、明確な賭けである。

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(36Kr Japan編集部)

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