人型より車輪式――中国・光象科技、自動車工場から始める産業用AIロボットの現実解

産業用エンボディドAI(身体性を持つ人工知能)を開発する中国スタートアップ「光象科技(Guangxiang Technology)」が、シードラウンド、エンジェルラウンドおよびその追加ラウンドで累計1億元(約20億円)余りを調達していたことが分かった。出資を主導したのはIDG資本(IDG Capital)と東方富海(Oriental Fortune Capital)。資金はコア技術の開発や製品化、納品などに充てられる。

光象科技は2025年4月設立。アリババグループ傘下の高徳地図(Amap)で最高技術責任者(CTO)を務めた張涛氏と、清華大学教授でAI分野の専門家である李升波氏が共同で立ち上げた。すでに世界の複数の自動車メーカーと戦略提携を結んでおり、ロボット用AIモデルとツールプラットフォームを組み合わせ、産業用ロボットの意思決定を担う汎用AIの開発に取り組んでいる。

ヒューマノイドブームには追随しない

二足歩行の人型ロボット(ヒューマノイド)への投資が過熱するなか、光象科技はあえて車輪式の産業用ロボットに特化する道を選んだ。創業者の張氏は、自動運転がレベル2からレベル4に進化する過程になぞらえ、まずは特定の垂直分野に参入し、それからあらゆる場面で通用する汎用型へと段階的に移行していくことが、より現実的なビジネスにつながると考えている。

工場という高度に標準化された環境では、二足歩行ロボットの強みである地形適応力は発揮されにくい。むしろエネルギー消費の大きさや測位の不安定さといった弱点が露呈しやすい。これに対し車輪式ロボットは消費電力が少なく測位も安定しており、動作精度やサイクルタイムなど、製造現場が求める厳しい要件に適合する

参入領域として自動車製造を選んだのも戦略的な判断だ。同社の試算では、自動車の総組み立て工程のスマート化だけで市場規模は1000億元(約2兆3000億円)に達する見込みで、実績を積めばほぼあらゆる製造現場への横展開も可能になるという。

自己学習で進化できるロボットへ

産業現場が求める信頼性は、人間の動作を学習データとする模倣学習では実現しにくい。模倣学習は少量のデータで比較的早く成功率90%前後を達成できるが、製造ラインが必要とする100%近くの精度には届かない。

光象科技は難易度が高い強化学習を採用し、産業オペレーションに特化した独自のニューラルネットワーク構造と組み合わせることで、ロボットに「自己学習しながら進化し続ける能力」を持たせた。

実機データ不足というエンボディドAI全般の課題に対しては、「シミュレーション優先」の訓練戦略で対応する。高精度のシーンモデリングと顧客企業のデータリソースを組み合わせ、仮想環境での訓練から実環境への導入までのギャップを効果的に縮小している。

さらに、ロボットの大規模導入に向けて、産業現場向けエンボディドAIモデルの設計・開発・訓練・デバッグを完全にモジュール化する「GOPSプラットフォーム」を独自開発。安定的かつ効率的なエンドツーエンドの開発プロセスを構築し、大規模納品を可能にする体制を整えた。

同社は複数の自動車メーカーと提携を結んでおり、実際の生産プロセスに対応した初期段階の概念実証(POC)を完了している。また、今後3年以内に少なくとも10社の自動車メーカーと協業し、1000台以上のAIロボットを工場に導入する計画だ。長期的には製造以外の産業・商業分野にも展開し、段階的に汎用エンボディドAIの実現を目指すとしている。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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