「ダメージフリー」でマイクロLED量産へ 中国新興、ARグラス・車載照明に照準

マイクロLED技術を手がける中国スタートアップ「秋水半導体(Qiushui Semiconductor)」はこのほど、プレシリーズAとシリーズAで計2億元(約48億円)近くを調達した。出資は朝暉資本(Aurora Capital)が主導し、通商基金(Tongshang Fund)や寧波人材発展基金(Ningbo Talent Development Fund)なども参加。資金は主に、寧波ハイテク技術産業開発区で8インチウエハーを使うハイブリッドボンディング(接合)チップ量産ラインの建設や後工程のコア技術開発に充てられる。

2022年11月に設立された秋水半導体は最近、江蘇省蘇州市から浙江省寧波市へと本社を移した。ディスプレイ用マイクロLEDチップやモジュールの開発・製造に注力しており、自動車のデジタルヘッドライト、拡張現実(AR)グラス、モバイルプロジェクターといった先端分野に製品を展開している。

マイクロLEDは次世代ディスプレイの中核技術と期待されながら、量産化が長く進んでこなかった。とりわけAIグラスやデジタルヘッドライト向けのチップでは、歩留まりの低さやフルカラー化の難しさが大量生産の壁となってきた。

従来のソリューションでは、4インチのサファイアウエハーをベースとするLED基板と電子回路を接合した後に、エッチングで不要な部分を除去していた。しかし、エッチングは発光材料にダメージを与えるため、チップの発光効率・歩留まりの低下や照射角度の過大化につながり、生産規模を拡大するのが難しかった。業界では2024年以降、8インチウエハーを使うハイブリッド接合に移行しているが、この方式でチップの量産化を実現したメーカーはごくわずかにとどまる。

秋水半導体は、エッチング工程をなくすため、電気絶縁構造を用いた「ダメージフリーアーキテクチャ」を独自に開発した。同社が世界初とするこの構造は、8インチのシリコンウエハーと、ハイブリッドボンディングによる3次元(3D)パッケージングの技術を組み合わせて材料の損傷を防ぐ。これにより歩留まりを「6N」(99.9999%)以上に高め、照射角度を±60度から±10度に絞り、動作温度の上限も50度未満から140度以上に引き上げられるという。

ARデバイス用モジュール「楽魚」

すでに0.61インチのデジタルヘッドライト用チップをリリースし、顧客へのサンプル提供と検証を終えている。調査会社TrendForceによると、デジタルヘッドライト分野では、アダプティブヘッドライト(ADB)の普及率が2029年までに21.6%へと拡大する見込みで、ポルシェなどの自動車メーカーが、マイクロ LEDモジュールを採用したヘッドライトを採用し始めている。

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ARデバイス向けの緑色単色LEDチップも年内に出荷する計画だ。創業者の蒋振宇氏によると、水泳ゴーグル、通訳用デバイス、車載ナビゲーションを用途として想定しているという。しかし、マイクロLED産業が本格普及の転換点を迎えるには、フルカラー化の実現が欠かせない。従来の赤色マイクロLEDはエッチングによる損傷で発光効率が9割以上も低下するとされ、ダメージフリー技術がフルカラー化のカギを握る。蒋氏は、今年末までにフルカラー化技術を大きく向上させられるとの見通しを示した。

生産体制では、設計から製造まで一貫して担う垂直統合型(IDM)ではなく、自社生産と外部委託を組み合わせる「ファブライト(Fab-light)」を採る。同社は8インチのハイブリッド接合技術を中国で初めて確立したとしている。寧波市で建設中の8インチハイブリッド接合ラインは今年10月に完成する予定で、稼働後の生産能力は8インチウエハー換算で月1000枚、年間1000万個超のマイクロLEDチップを供給できるという。

同社の先進的なハイブリッド接合技術は、すでに3.75マイクロメートル(㎛)という超微細ピッチでの接続を実現しており、将来は2㎛まで微細化する見通しだ。これはファーウェイ(華為技術)が打ち出した独自の半導体技術「τ(タウ)スケーリング法則」と同じプロセスノードに当たる。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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