海外製の5分の1の価格——中国新興、車の「調光ガラス」で国産材料に挑む

調光ガラスを開発する中国のスタートアップ企業「中科電墨(Sino Scientific E-Ink)」がこのほど、プレシリーズAで西安竜鼎投資から数千万元(数億円規模)を調達した。資金は主に車載向け製品の生産ライン建設、コア材料の開発・改良、市場開拓に充てられる。

新エネルギー車(NEV)のスマート化や快適性向上が進み、車載ガラスは従来の役割を超えつつある。断熱や遮光、プライバシー保護、ヘッドアップディスプレー(HUD)表示など、多くの機能を集約する重要部品へと進化してきた。特にパノラマルーフの普及に伴い、透過率を調整できる調光ガラスへの関心が高まっている。

現在主流の調光技術には、高分子分散型液晶(PDLC)方式、エレクトロクロミック(EC)方式、懸濁粒子デバイス(SPD)方式の3つがある。PDLCとSPDは一般的にヘイズ(曇り具合)が高く、断熱性能に限界があるうえ、駆動電圧が高いといった課題を抱えている。一方、EC方式は、材料の酸化還元反応を利用してガラスの透過率を変化させるもので、連続的な調光ができる。また、低ヘイズで消費電力も小さく、遮熱性能も備えるため、次世代スマートガラスの有力技術とされる。

中科電墨は2023年の設立以来、EC技術に使うコア材料とデバイスの開発を手掛けてきた。チーフサイエンティストの馬明明博士は導電性高分子材料を長年研究し、2017年に関連するコア材料の開発に成功した。同社は独自設計の導電性ポリマー材料を採用することで、性能の向上とコスト削減を両立し、海外企業が主導してきた重要材料の国産化に道を開いたという。

創業者の張瑩氏によると、高性能なEC用の導電性ポリマー材料は現在、少数の海外企業が供給を握る。これに対し同社は、コア材料を独自開発して国内で完結する供給体制を築いた。価格も海外製品の約5分の1に抑えたという。

99.85%遮光で炎天下でも涼しい、シャオミEVを支える「調光ガラス」の進化

同社のEC製品は、紫外線と赤外線を99%以上カットし、車載向けに求められる15年以上の耐久性も備えるという。現在量産中のパノラマルーフには透明から濃色に変わるまで数分かかる製品もあるが、同社製品は90秒以下で切り替わる。駆動電圧も約1.5ボルトと低く、ボタン電池1個程度で動く。数十ボルトを要する方式に比べ、車両全体の電力消費を大きく抑えられるとしている。

製造プロセスの改良にも取り組む。従来のEC製品では、マグネトロンスパッタリングなどの製造方式が主流となっているが、高額な設備投資が必要なうえ、生産効率に限界があり、大型製品の製造も難しいといった課題があった。中科電墨は、ロール・ツー・ロール方式の塗工と連続真空コーティングを組み合わせた一体型の製造プロセスを開発した。これにより、業界平均で約70%とされる歩留まりを92%以上に引き上げ、総合的な製造コストを30%近く削減したという。

事業化では自動車市場を最優先に据える。すでに中国の大手自動車メーカーや新興EVブランド、海外のサプライチェーン企業との協業が進む。現在、浙江省嘉興市に同社初の車載向け製品のフレキシブル生産ラインを建設中で、生産能力は年間約60万平方メートル超、量産車1~2車種に対応できる規模になるという。第3期までの建設プロジェクトに総額1億元(約20億円)以上を投じる計画で、パノラマルーフやサイドウインドー、光学レンズなど、多様な製品に対応できる柔軟な生産体制を整える方針だ。生産ラインが完成すれば、2027年にも車載向け製品の本格的な量産が始まる見込みだ。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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