新型コロナによる休校で利用者数が1億人へ、学習塾オンライン化のメリット・デメリットとは

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中国の学習塾にとって春節(旧正月)をまたいで約4週間に及ぶ冬休み期間は本来稼ぎ時だ。この1カ月の売上高は1年の売上高の30%を占める。しかし今年は春節前に突然始まった新型コロナウイルス感染症の流行により、学習塾や家庭教師派遣業者は収入をほぼ絶たれただけでなく、在塾生への払い戻しや塾生離れにより存亡の危機に直面した。

新型肺炎の流行は従来型の学習塾を苦境に落とし込んだが、オンライン教育分野にとっては大きな追い風となる。多くの学校がオンライン授業を採用したため、オンライン教育の利用者は1億人台に達した。オンライン教育企業の驚異的な成長は、従来型学習塾の市場シェアを蚕食している。

既存の学習塾すべてにとって、オンライン化は今掴める唯一の救助ロープのようだ。

「新規顧客が多過ぎて対応しきれない」と、あるオンライン塾のシステム運営を受託する業者は語る。春節の週は15クラスを新設しせたが、どのクラスも満員だったそうだ。以前はトライアル受講の後も入塾を引き延ばすケースが多かったが、現在の新規顧客は来るなり月謝の支払方法を尋ね、入塾を断っても引き下がらないほどだという。

学習塾オンライン化のメリット、デメリット

従来型の学習塾がオンライン化に舵を切るのに、新型肺炎の蔓延が後押しするプラス要素が2つある。まず、幼稚園児から高校生までの「K-12」に属する約2億人がオンライン授業を求めるようになり、アクセス数が爆発的に増加したこと。そして、多くの保護者がこれまで抱いてきたオンライン教育に対する抵抗感を払拭せざるをえない状況に追い込まれたことだ。後者は従来型の学習塾がオンライン化を躊躇してきた主な理由の一つでもある。

しかし、これらを背景としても「オンライン化」が簡単というわけはない。オンライン化とは、ただオンライン経由で授業をするだけでなく(1)製品やサービスの各プロセスとケーススタディを最大限にデジタル化し、構造化したデータをもとに運用効率を改善させ、配信のパフォーマンスを上げる、(2)時間と空間の障壁を取り除き、より遠方のユーザーへ向け、より長期にわたるサービスを提供することだ。

それには教育コンテンツのオンライン化、授業プロセスの再構築、オンライン化に対応する教師の育成、モニタリング体制のセットアップなどが必要になる。サインイン、予習・復習、授業後の質疑応答、宿題の添削、どれをとっても調整が必要だ。

「オンライン講義」の類はカリキュラムや講師に求められる水準が比較的高く、ブラッシュアップに時間もかかる。質の悪いライブ講義で塾生に逃げ出される懸念を抱く小規模学習塾は、より保守的な戦略に走る。チャットツールのWeChat(微信)を使った発音レッスン、録画授業などをフル活用し、さらに授業枠外で質疑応答コーナーを設けるなどして在塾生の流出を防ぐのだ。

オンライン化はいばらの道、「やり抜く覚悟」が必要

オンライン授業は急場をしのぐ良策とはいえ、新型肺炎の流行が治まってきたら受講生のほとんどは退会してしまうだろうと業界関係者は一様に考えている。

オンライン化における技術面の問題は克服できるとしても、「キャッシュフロー」と「リスク」の舵取りという面からみると、やむなくオンライン授業を受講することになったユーザーのほとんどは一過性の顧客だ。キャッシュフローや利益などは教育機関にとって主要な指標であり、授業をオンライン化するには専門のプロ集団に委託する必要があるほか、十分な資金やリソースも必要だ。投入するコストは最低でも数万元(数十万円)、場合によっては100万元(約1600万円)から1000万(約1億6000万円)に達することもあるだろう。

あるオンライン教育系企業の共同創業者は「新型肺炎の流行発生後、5~6人の知人がオンライン化するための助言を求めてやってきた。見込み客集めから、顧客への転換、カギとなる指標について一通り話し始めると、30分ほど聞いたところで数人が諦め、録画授業で代替することにしていた」と語る。

オンライン化は徒労に終わる可能性もあり、真正面から大手と一戦交えるのでは希望の持ちようがない。

中小規模のほとんどの学習塾は、現在の弱点を補う目的で「オンライン」を活用している。全国に60万あるといわれる中小規模の学習塾の典型「卓雅優学」のソリューションも同様だ。オンラインを補足的に使用し、受講生全体の30%にあたる「やる気がある」塾生に向けて、質疑応答や補講をするなどしている。さらに、オンライン教育大手「好未来教育集団(TAL Education Group)」傘下のカリキュラムを購入し、有名講師の授業を教材にして自社講師陣のレベルアップも図る。

「オンライン教育」はこの10年で徐々に成長してきたが、今日のような緊急事態に遭遇したことはなかった。オンライン化の流れがどこまで続くかに関わりなく、従来型の学習塾は一律にオンラインとの関わり方を再考せざるを得ない。

過去にオンライン授業を検討しながら見送った事業者も、検討すらしなかった事業者も、オンラインに活路を見出すことを最優先事項としている。企業のすべての資源、すなわち労働力、エネルギー、リソースを結集して努力してこそ、生き残りの希望が見えてくるのだ。

(翻訳・永野倫子)

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