政府は”改善する”と言うけれど 中国旅行、現場はまだ外国人に「冷たい」

先日上海、杭州、義烏、昆明、雲南省内、深圳という行程で中国を巡った。中国での外国人の旅行のしやすさと、今後の展望について紹介したい。

筆者は高級ホテルには泊まらず、おそらくは出張者よりは安い、割引額の大きいコスパの良いホテルを選びがちだ。個人旅行であるため、数元(約200円)の食堂や十数元のチェーン店のほか、1人あたり単価100元台(約2400円)程度のレストランを利用した。これより費用をかけた旅行者もいるが、筆者と同程度の旅行をする人も少なくないはずだ。

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スムーズになった「キャッシュレス」と「省人化」

たしか3年前だったと思う。中国ではキャッシュレスが現金より高頻度で使われて久しいが、日本のクレジットカードと紐づいたWeChat Pay(微信支付)やAlipay(支付宝)を現地で使った際、日本のカード会社が不正利用を疑ってカードをロックし、渡航早々に支払いができなくなるというトラブルがあった。当時はカード会社の窓口への国際通話をかける必要があったが、日本へのIP電話でなんとか解決した。今回の旅ではクレジットカード利用が停止されることなく、紐づけたキャッシュレスを一貫して利用できた。中国に渡航した人々から苦情が多数あったのかもしれない。

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食堂ではテーブルに貼られたQRコードを読み取ってデジタルメニューでオーダーし、決済まで行うことが多く見られた。

中国の飲食店

テーブルに貼られたQRコードから注文・決済

またホテルのチェックアウト時にフロントにスタッフがおらず、カードキーを置いて出れば良いということも頻繁にあった。以前よりも客トラブルが減ったのか、或いは信用社会の環境が定着したのか、店員とコミュニケーションをとらずに手続きが進むようになったと感じた。

博物館や美術館に入る際も、建物前に掲示されたQRコードを読み取り、登録画面から入場手続きを行う仕組みになっていた。以前のように入口でパスポートを提示する作業がなくなったものの、早めに到着して入場登録作業が必要となった(ミニプログラムで博物館美術館の事前入場登録を用意しているところもある)。

博物館に入場する前にQRコードで登録

旅先でのトラブルと必須アプリの壁

トラブルは以前より減ったが、今回の中国旅は冒頭で不具合が生じた。昆明で以前取得した中国の電話番号のチャージ残金が残っているにも関わらず、未使用期間が長かったためロックされてしまった。自動ロック解除も機能せず困り果てていたところ、旅行者向けのツーリストSIMが目に入った。上海浦東空港では分かりやすい場所に複数のカウンターがあり、最安のSIMカードを買おうと試みたところ、200元となかなかの値段。昆明のキャリアショップで解除作業するまでの間、別の電話番号を取得して日々やりくりすることにした。

上海浦東空港の外国人ツーリスト向けのカウンター

さて新しい電話番号になったということは、利用中のサービスの電話番号を変更するか、新規ユーザーとして登録し直さなければならない。そこで、改めて中国旅行で必須のアプリを紹介したい。

アプリとしては、最低限「Alipay」や「WeChat Pay」をキャッシュレスや連絡で使うので抑えておきたい。また、鉄道や航空機のチケット、ホテルの予約には、アプリかパソコンで「Trip.com(トリップドットコム)」を利用できるようにしておきたい。違和感のない日本語表示で予約できるので安心だ。

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他国と異なり、中国では現金だけでの移動はできるはずだが、対応機器の少なさや釣り銭不足など、多少のリスクや面倒が伴う。そのため、あらかじめ最低限必要なキャッシュレス系サービスに登録しないと安心できない。また主要なサービスのミニプログラムを起動することができるので、AlipayやWeChat Payのアプリだけでもなんとかなる。もう少し余力があれば、配車サービスも利用できる地図アプリ「百度地図」と「高徳地図」、それにネット配車「DiDi」、フードデリバリー「美団」やECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」などを登録するとなにかと役立つことだろう。

やることはわかっていても作業が面倒くさいのだから、初めて中国を訪れる人にはなおさらのこと骨の折れる作業であろう。結局設定や仕事の連絡やらで、空港のベンチで1時間ほど作業した。

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中国旅行の大変さはここにある。中国に慣れた人には便利な中国のアプリだが、慣れるまではまるで別世界のツールであり、使えると確信するまで空港からすら出られないのである。筆者は慣れているが、今の中国旅行に抵抗がある人にきくと、「アプリは私でも使えるのか?大丈夫か?」という質問に行き着く。「できるようになる」と回答はするものの、IT技術を体験したい旅行者はともかく、それ以外の目的で中国旅行を求めるのにIT体験の段階でつまずいてしまっては印象が良くない。

地域差と「暗黙の了解」という難しさ

加えて、チェックアウト時にフロントに人が不在のときに、どのような行動をとれば良いかは中国在住経験者ならわかっても、現地の商習慣を知らない人には判断がつかない。考えてみれば、中国での旅行や生活では様々な暗黙の了解に基づく行動が求められる。同じ東アジア人だからこそ、適切なアクションをとらないと「なんで知らないのか」と不思議な顔をされがちだ。これがまた中国未経験の日本人には難しい。

街中の店で外国人として対応を受けたのは、外国人が珍しくない上海や深圳だけで、ほかは中国人と同じような振る舞いが求められる。そういった意味では中国旅行は場所によって難易度に違いがある。

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インバウンド強化に向けた政府の指針

さて今年6月18日に中国政府商務部が12の関係部門と提携し、「外国商務人士在華工作生活指引(2026年版)」を発表した。 中国へのインバウンド強化のため、外国人ビジネスマンの滞在中の不便を減らす狙いがある。具体的にはビザ免除の拡大と、購入場所限定ではあるが税金払い戻し(タックスリファンド)の対応強化、地下鉄のクレジットカードのタッチ入場対応、旅行客向け中国のeSIM販売、ホテルの受け入れトラブル軽減などが挙げられる。

いつものサイトにアクセスできるe-SIM購入ではハードルは低くなった

補足していこう。eSIMはiPhoneなどで利用でき、Alipayから「eSIM」と検索すれば、販売企業のミニプログラムが表示される。このeSIMはgoogleやXやYouTubeなどにアクセスできる仕様となっている。外国人旅行客向けサービス強化の影響かもしれない。実際に価格は非常に安く、試しに導入してみたが、筆者の感覚では日本で購入した通信回線のほうが安定して高速だった。

上海浦東空港のツーリストSIMカードの金額表

次にホテルの受け入れについてである。「1.外国人の宿泊の受け入れを制限しないこと。 条件を理由に一律で断ったり、ネット上で「外国人不可」と公表したりしないよう求める」「2.フロント対応の強化。 外国語ができるスタッフの配置や、AI翻訳ツールの活用、チェックイン前の研修を進めるよう促す」「3.案内表示の多言語化。 ホテル内外で情報を分かりやすくする」「4.予約・決済の改善。 外国語版アプリの最適化、海外カード対応、現金の受け入れ、モバイル決済の改善を進める」という4本柱を掲げ、全てのホテルをすぐにというわけではないが、改善を進めていくという。3について補足すると、漢字の読めない外国人に対し、ホテル側が紙かデジタルか、何らかの方法で中国語表記のホテル名と住所を用意し、ドライバーへ移動先を伝える際に困らないようにする、といった対応もホテル側に促すという。

現場の実態

では、今回の旅行で政府方針に沿った気の利いたホテルがあったかというと「ない」。AI翻訳端末も、外国人向け表示もなかった。鉄道移動に関しては外国人対応が中途半端なアプリばかりで、チケットの空席待ちなどで中国人はできるが外国人はできないといった場面に遭遇した。

列車に乗る時は、外国人は駅員スタッフが対応する列に並ぶほうが無難だ

日本の外国人像でもそうだが、中国においても外国人といえばまず西洋人であり、外国人が中国旅行を満喫しているというSNS投稿では、西洋人の動画ばかりがあがる。英語対応で西洋人に優しくしようとしているのは伝わるが、中国へは日本人の旅行者や出張者も多いので日本人も客として意識して欲しいところ。

中国の旅行環境が改善するとすればこれからではあるが、ただ国の方針にしたがって、全体が動く国なので、何年かするとホテルもアプリもだいぶよくなっていくのではないかと思う。今年はまだ大雑把な部分が目立ち、数年後から今年を振り返れば、まだまだ中国慣れしてない人には大変な中国旅行となるだろう。

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(文:山谷剛史)

36Kr連載:中国アジアITライター

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