通話内容を即座にテキスト化 急成長の音声認識ユニコーン「AISpeech」、上場に向けひた走る

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対話型人工知能(AI)プラットフォームを提供する「AISpeech(思必馳)」がシリーズEで4億1000万元(約63億円)を調達した。リード・インベスターは「和利資本(CTC Capital)」、コ・インベスターは「北汽産投(BAIC Capital)」「中信金石(Goldstone)」など。思必馳は2007年に設立され、これまでにアリババや「元禾控股(Oriza Holdings)」「メディアテック(MediaTek)」「深創投(Shenzhen Capital Group)」「フォックスコン(富士康)」「聯想之星(Legend Star)」などから5度にわたって資金を調達してきた。

AISpeechは2018年6月にシリーズDで資金調達した際、前年に損益分岐点にほぼ達しており、18年には通期で黒字化するとの見通しを示していた。最新の公開資料によると、同社の売上高は直近3年間で4倍近くに膨らんでおり、上場も具体的に計画している。

同社は自社開発したオープンソースの対話型AIプラットフォーム「DUI」に加え、半導体受託生産大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)と昨年、共同リリースした音声AI専用チップ(TH1520)の二つを軸とする。「クラウド+チップ」を基本戦略とし、スマート端末と法人向けサービスを対象にしたソフトウエアとハードウエアの一体型ソリューションを提供する。

具体的には、IoT技術を導入する各業界向けにチャットボットや音声アシストといった対話型AIソリューションを提供。スマートカーやスマートホーム、スマートロボット、スマートフォンなどに人と機械が双方向に対話できるAIを搭載する。物流や金融、政府関連などの法人向けには、例えばコールセンターでの通話内容を即座にテキスト化するなどの音声認識技術を活用したソリューションを展開する。現在、AI+IoTの分野で家電大手の海信(ハイセンス)や長虹(Changhong)、美的(Midea)、IT大手のアリババなどと綿密に連携。IoV(コネクテッドカー)の分野では、北京汽車(BAIC)や中国第一汽車(FAW)、上海汽車(SAIC)、上汽GM五菱(SGMW)、音声認識分野では、物流大手の順豊(SF)エクスプレスや徳邦(DEPPON LOGISTICS)、重慶農村商業銀行(CHONGQING RURAL COMMERCIAL BANK)、不動産開発大手の「碧桂園(カントリー・ガーデン)」などを顧客とする。

将来的には「AI +スマート端末」と「AI +スマートサービス」の二大事業に注力し、スマートホームやコネクテッドカー、ウエアラブル、電子機器などIot各分野への投資を拡大するとともに、金融や政府機関での活用シーンも広げていくという。

音声認識はAI技術の中でも人気の高い分野だ。マーケットの上位企業はほぼ全てがシリーズD以上に進んでいる。技術の成熟に伴い、これらの企業は技術の蓄積をほぼ完了させ、現在は消費者や市場の奪い合いの段階に入った。多くの企業がスマートホームや子ども向け、ポータブル、車載機器などのAI音声認識機能を備えた個人向けデバイスに業務を集中させている。

AI音声認識企業の収益化には大きく分けて二つのモデルがある。一つ目はAISpeechのような法人向けの「クラウド+デバイス+チップ」戦略。スマートホームや車載機器の各メーカー、教育機関などにソリューションを提供する。二つ目は「Mobvoi(モブボイ)」などが展開する、個人向けでスマートスピーカーやスマートウォッチ、ヘッドフォンなどのデバイスを独自に開発する。Mobvoiの李志飛CEOは昨年末の取材で、採算が見込めないためAI音声チップ事業からは撤退したと話していた。

中国のAI音声認識ソリューションの市場規模は増加の一途をたどっている。調査会社「iResearch」のリポートによると、2018年の企業向けと公共向けソリューションの市場規模は約48億6000万元(約750億円)。CAGR(年平均成長率)32%程度で成長し、2022年には146億5000万元(約2200億円)に達する見込みだという。
(翻訳・永野倫子)

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