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新型肺炎の影響で各企業が操業停止などの対応に追われる中、中国宅配大手の「SFエクスプレス(順豊速運)」が業績を伸ばしている。2月の荷物取扱件数は前年同期比118.89%増の4億7500万件に達した。1月と2月の累計市場シェアは15.9%に達し、ライバルの「韻達快逓(Yunda Express)」や「申通快逓(STO Express)」「円通速逓(YTO Express)」などを逆転した。
2014年から物流業界では勢力図が固定化してきており、大手6社が市場シェアの70%を占めている。2017年から2019年まで、順豊の市場シェアは平均で6位にとどまっていた。
このような状況のもと、同社は思いきって戦略を変えてきた。昨年5月、同社はEC(電子商取引)企業向けの新サービス「特恵専配」を打ち出したほか、12月にはEC大手「唯品会(VIP.com)」と配送業務で提携、唯品会から年間5億件を超える注文を獲得した。
辛酸をなめた5年
過去5年間、EC企業向けの宅配市場では順豊以外の大手5社がシェアの大部分を占めていた。EC業界発展のボーナス期、5社は「加盟制」という強みを生かして広範囲で国内の宅配荷物の大部分を引き受けたのだ。
しかし「直営」モデルの順豊は初期に企業向け荷物に照準を合わせたことで、ECが急速に発展した時期を逃してしまった。ここ3年、同社はわずか7.6%という市場シェアは維持したものの、2014年の業界第4位から2019年には第6位と順位を下げてしまった。
業界で最も高い価格設定の順豊だが、価格競争を試みたことがないわけではない。2013年10月、同社は「普通荷物4割引」をうたいEC向け荷物に参入。毎月2000件以上の荷物を依頼した顧客には「市内8元(約120円)から」「省内9元(約135円)から」「省外10~17元(約150~255円)から」とする割引料金が適用される。これは同社の通常料金よりも安かったが、同時期のライバル他社の荷物単価は平均すると9元(約135円)に抑えていた。
順豊のEC向け取引が成長した2014年、売上高は116億元(約1700億円)増加したが、親会社に帰属する純利益は13億6000万元(約200億円)減少。売上総利益率も7.6%減少した。
新サービスで再びEC向け荷物に参入 EC大手唯品会ともタッグを組む
新型肺炎流行の影響を除いても、順豊がライバルを逆転できたのは昨年、地方市場を強化するためにとった戦略が関係している。
取引件数の多い顧客を対象とした上述のサービス「特恵専配」を開始し、地方市場を攻めたいとした。同サービス開始後、同社の業務量は30%以上成長し初めて業界平均値を超えた。ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」の100億元(約1500億円)利益還元セールを筆頭にEC大手各社の割引合戦が白熱した第4四半期、順豊の10月~12月の業務量はそれぞれ前年同期比48.5%、47.9%、57.8%増となった。
もう一つの戦略は唯品会との提携だ。昨年11月末、唯品会は傘下の物流企業「品駿快逓(PINJUN EXPRESS)」を宅配事業から撤退させ、順豊と業務提携することで合意。順豊が唯品会の配送サービスを担うこととなった。
唯品会の董事長兼CEOの沈亜氏は順豊との提携後はフルフィルメントに係るコストを削減できたとししている。同社の同年の総受注件数が前年比29%増の5億6600万件だったことも明かした。
価格競争の泥沼へ
2020年は初戦で勝利を収めたものの、拡大した市場シェアを保つのは容易ではない。
市場が飽和状態であるなか、宅配サービスの同質化が深刻だ。宅配企業の市場シェア争いはますます激しくなってきており、競争の中心は価格競争に移ってきている。これは業界全体の平均荷物単価が2007年の28.5元(約430円)から2019年には11.8元(約180円)と半分以下になっていることからも明らかだ。
36Krの調べでは、2019年、大手6社のうち韻達、申通、円通の荷物1件当たりの利益はそれぞれ3.22元(約48円)、3.08元(約45円)、2.95元(約44円)であり、業界1位の中通は前年同期比10.1%安の1.72元(約26円)だった。
単価の高い「時効件(当日・翌日配達などの時間指定サービス)」を主に取り扱う順豊は荷物1件当たりの利益が21.93元(約330円)とライバル企業に比べて高いが、同様に価格下落の傾向がみられる。2019年通期では、同社の荷物1件当たりの利益は前年同期比5%下落、中でも第4四半期には前年同期比20%前後も下落している。
唯品会と提携した順豊は今後も新たな「同盟」を探し求めるだろう。アリババが背後にいる中通、円通、申通、韻達、百世はECサイトの利益還元セールで市場シェアを奪いにくるはずだ。地方市場に照準を合わせている「衆郵快逓(Zhongyou Express)」、インドネシアの宅配最大手「極兔快逓(J&T Express)」も存在感を増してきた。地方市場をめぐる争いは今後より激しくなるだろう。
(翻訳・山口幸子)
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