物流大手順豊がフードデリバリー分野に参入、市場独占の美団の牙城を崩せるか

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物流大手の「SFエクスプレス(順豊速運)」が新たにフードデリバリープラットフォーム「豊食(Fengshi)」をリリースした。このプラットフォームは主に企業の従業員向けに食事のデリバリーサービスを提供するものだ。企業の従業員向けの食事手当てにも対応しており、従業員データをプラットフォームに提供することによって利用できる。

公式の説明によると豊食は外部の業者と提携して、食事、生鮮食品、デザートや飲み物、スーパー・コンビニの商品などを配達する。豊食はITサービスを手掛ける順豊のグループ会社「順豊同城科技(SF Intra-city Technology)」の社内ベンチャー事業として設立され、10名程度のプロジェクトチームが管理と運営を行っている。当初は新型コロナウイルスの流行期間中に自社の従業員の食事の問題を解決することが目的だった。

豊食は微信(WeChat)のミニプログラムを使用しており、この理由について順豊同城は、順豊グループ内の多くの企業は独立した管理形態をとっており、共通の社内システムを持っていないため、ミニプログラムを利用するのが便利だったと説明している。豊食のミニプログラムでは、「和府撈面(Hefu-Noodle)」「吉野家」「俏江南(SOUTH BEAUTY)」「西貝(Xibei)」など50社余りの大手飲食企業がすでにサービスを提供している。

「美団」「餓了麽」の競合とはならず

豊食はまだ順豊グループ内向けにサービスを提供しているだけだが、順豊グループだけでも中国全土に1000以上の拠点があり、数十万人の従業員がいる。一部の拠点は辺ぴな地域にあるため、飲食を提供できるサプライヤーが少なく、このため豊食は辺ぴな地域でもサービスを提供できる大手飲食チェーンと提携している。

順豊同城によると、グループ内企業への食事デリバリーの仕組みが十分に成熟したら、プロジェクトチームはこのサービスを同社の顧客への付加価値サービスの1つとして提供したいと考えているとのこと。顧客企業が従業員の食事の問題を解決すると同時に、プラットフォームに参加している飲食店の売り上げにも貢献できる。企業がまとまった数の食事を注文する以外に、従業員が個別に食事を注文することも可能だが、そのためには企業が先にプラットフォーム上で申請をし、従業員が認証されていることが必要となる。

企業向けサービスによってデリバリー市場に切り込んだ豊食だが、フードデリバリー大手の「美団(Meituan)」「餓了麽(Ele.me)」と比較されることは避けられない。業界では「豊食の参入がデリバリー市場に新たな混乱をもたらすのか。3:6:1の安定した枠組み(餓了麽3割、美団6割、その他1割の市場シェアを意味する)を変えるだろうか」という話題で持ちきりだ。

36Krが生活関連サービス業界に詳しい複数の関係者にこの点について質問を投げかけてみたところ、ほぼ全てから「不可能」あるいは「かなり難しい」という回答を得た。大手シンクタンク「野村総研(NRI)」のリポートでも「豊食が美団のデリバリー事業にとって脅威になり得ることはない。美団の年間アクティブユーザーはすでに4億5100万人に達しており、さらに美団の注文1件あたりの配達コストは順豊より低い」と述べられている。

複数の業界関係者の意見を総合すると、順豊の個人向けのデリバリー市場への参入には、ユーザーがアクセスする入り口と提携飲食店の確保という課題がある。BtoCビジネスはユーザーのアクセス数が重要で、アクセス数に転換率(CVR)を掛け合わせた結果が注文件数となるため、アクセス数によって注文件数が決まってしまう。デリバリーとECの違いは地域の制限にあり、そのためアクセス数を増やすことはさらに重要になる。餓了麽や美団は、ユーザーのアクセス数を増やすためにキーワード検索、カテゴリごとのメニュー、イベントの告知バナー、お薦め店舗や商品の表示、お気に入り登録などの機能を備えている。対照的に豊食は順豊というバックボーンはあるものの、アクセス数を確保する入り口が明らかに足りず、またそれを増やすのも難しい。

もう1つの課題は、デリバリープラットフォームには強力なビジネスシステムの構築が必要だということだ。順豊は配送については強みがあるが、ビジネス展開では美団、餓了麽に敵わず、大手飲食チェーン以外の提携先を増やしていくのも難しい。順豊より先にデリバリー市場に参入した配車大手の「滴滴(DiDi)」も、サービス開始時には勢いがあったものの、最終的には結果を出せなかった。

順豊同城がBtoBというニッチな市場から参入するのは、基盤の弱い新規参入企業に適した正しい選択だと言える。企業向けに食事を提供するあるスタートアップの創業者は、順豊が市場に参入したことに緊張感を持っている、と語っている。現段階で豊食は、小規模なテストサービスに過ぎず、今後順調に規模を拡大できるかどうかは未知数だ。

最近の情報によると美団、餓了麽は注文金額の24%を手数料として徴収している。豊食の手数料は7月1日までは0.3%、その後は2%となっており、優位性は明らかだ。順豊同城の広報関係者によると「豊食はまだ初期段階にあり、このプロジェクトの将来については、まだ社内でモニタリングと検討を重ねている」と述べている。
(翻訳・普洱)

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