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スペシャルティコーヒーに特化した「永璞咖啡(YongPu Coffee)」がシリーズAで数千万元(約数億円)の資金調達を終えた。今回の資金調達のリード・インベスターは「金鼎投資(Jinding Capital)」。洽洽食品(Chacha Food)のファミリーファンドである「昕先資本(ShineAn Capital)」、「親親食品(Qinqin Food)」、寛窄美食(KUANZHAI food)傘下の「寛窄創投(Kuanzhai Investment)」などの既存株主がコ・インベスターとなり、「山景資本(MountainView Capital)」が財務顧問を務めた。永璞咖啡の創業者である鉄皮氏は、今回の資金は製品開発、人材拡充、ブランドPRなどに充てるという。
永璞咖啡は昨年大きく成長したインスタントコーヒーブランドだ。スペシャルティコーヒー豆を100%使用して抽出したオリジナルコーヒーは、コーヒー本来の風味を失うことなく10倍濃縮を実現した。また、フリーズドライやドリップバッグタイプ、コーヒーメーカーなどの関連製品も打ち出している。
アイディア豊富なオリジナルコーヒー
今回の資金調達は前回から半年しかたっていない。2020年6月に1000万元(約1億6000万円)規模の資金調達を行って以来、年成長率は5倍に達している。毎年11月に開催される中国最大のオンライン通販イベント「双11(ダブルイレブン)」での売上高は2100万元(約3億4000万円)、アリババECプラットフォーム「天猫(Tmall)」の液体コーヒー部門でトップとなり、通年の売上高が1億元(約16億円)を突破した。
コーヒー業界は製品および消費シーンが常に変化している。消費シーンは新しいタイプのチェーン店とインスタントコーヒーに大きく分かれる。製品はオフライン販売とデリバリーが中心だ。消費シーンはオンラインでスタートを切ったばかりだ。とはいえ、製品と消費シーンを抱き合わせにした傾向がすでにトレンドとなっている。
同社は風味のある濃縮液体コーヒーの開発を本格的に行っているほか、抹茶味などの新製品や脂肪ゼロ、糖分ゼロなどの各フレーバーも打ち出している。開発チームはユーザーの利用シーンと新規開発の視点から、ユーザーにコーヒー製品と牛乳やガスウォーターなどその他の飲料製品との組合せを推奨している。製品の飲料体験と参加意識を向上させることで、ユーザーはいつでもどこでも自分好みのオリジナルコーヒーを淹れられるという。
永璞咖啡は2017年にコーヒー産業の川上に当たる工場に投資、中国初となるコールドブリューの液体コーヒーを開発した。しかし製品形態や冷蔵保存の必要性から消費シーンは限られていた。そのため、日本からフラッシュパスチャライズ製法技術を導入し、瞬間冷却によりコーヒー原液の「常温化」を実現した。窒素ガス注入後に無菌パッケージにしたことで、添加剤なしで365日常温保存を可能にした。
ブレンドコーヒーやシングルコーヒーのほかに、ヘーゼルナッツ、ブラックコーヒー、紅茶、京都宇治抹茶、白桃ウーロンなどの風味豊かなフレーバーから選ぶことができ、口当たりのよい飲み心地に仕上げた。
永璞咖啡オリジナル「ウーロンコーヒー」
フリーズドライコーヒーも人気がある。航空会社のフリーズドライ技術を取り入れて、ブラックコーヒー、白桃・ローズ・キンモクセイウーロンコーヒーなどのフリーズドライ製法によるインスタントコーヒーも販売している。
鉄皮氏は、お茶やコーヒーのフリーズドライ製品は過渡期の製品に過ぎず、フリーズドライ技術はどうしても風味を損なうため、溶けやすさと風味はさらに改善の余地があると述べる。同社の開発チームは、インスタントコーヒーの最終形は濃縮還元コーヒーだとする。永璞咖啡の製品設計の初心は持ち運びができ、コーヒー本来の風味を失うことなくどこでも簡単に味わってもらうことにある。
川上のサプライチェーン(供給網)においては、同社は株式参入でコーヒー豆焙煎工場とコールドブリュー製法の抽出工場、パッキング工場としっかりタッグを組んでおり、海外のコーヒー農園とも戦略的提携関係を結んでいる。21年もコーヒー製品の開発を続け、投資先工場の生産力は現在の3倍以上に拡大する計画だとの見解を示した。
鉄皮氏によると、ブランド構築は永璞咖啡の核心であるという。永璞咖啡は、中国のディスカッション番組「奇葩説(You Can You Bibi)」、音楽配信サービスの「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」、グルメ系ショート動画メディア「日食記(Cat’s Kitchen)」、ワインなどの動画チャンネルEコマースを手がける「醉鵝娘(LADY PENGUIN)」やスヌーピー、ゴッホなどの有名ブランドやキャラクター、芸術家とIPコラボすることで、自社ブランドの知名度を向上させている。一方、永璞咖啡は中国伝統のこま犬をモチーフとしたキャラクラーを考案し、マスコットキャラクター「石端正」として打ち出した。中国の伝統文化のエッセンスを取り入れて中国オリジナルのコーヒーブランドを確立し、「石端正」のキャラクターでリラックスできるライフスタイルを広めていきたいとしている。
また、イベントの開催や関連グッズの販売を通して、ユーザーとのインタラクティブなつながりやブランド共同構築を強化したりしている。「石端正のコーヒー生活研究所」などの多くのユーザーコミュニティもある。このほか、石端正のイメージとユーザーとのコミュニケーションを担当する専門要員を配置し、製品に関する意見やCX(消費者エクスペリエンス)などをリアルタイムでフォローアップし、ユーザーの定着率向上と口コミ拡散を図っている。
永璞咖啡キャラクター「石端正」
永璞咖啡は現在、ECサイトの天猫を中心にブランド戦略を行っている。鉄皮氏によると、2020年の売上高の9割が天猫によるものだ。オフラインでは、輸入食品系に高級スーパー「Ole’」、「Citysuper」、日系デパート「上海久光百貨」、アリババ系の次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」などで販売している。鉄皮氏はまた、永璞咖啡の次なるステップはEコマースに本腰を入れ高級スーパーの潜在力を引き出す一方で、体験型店舗の設置によって新たな販路の開拓を進めるとの意向を示した。(翻訳:lumu)
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