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中国IT大手のテンセント(騰訊)が手掛けるメッセージアプリ「WeChat(微信)」には友人の投稿が閲覧できる「モーメンツ(朋友圈)」というタイムラインのような機能がある。同様の機能はアリババ傘下のECモール「淘宝(タオバオ)」やソーシャルEC大手「拼多多(Pinduoduo)」、TikTokの中国本国版「抖音(Douyin)」にもあるが、生活関連サービス大手「美団(Meituan)」も近ごろ同様の機能を開発している。
美団は今年3月にもユーザーと店舗側のグループチャット機能「商家群聊」をリリースしているが、今回はフードデリバリーに特化した新たなSNSを構築したかたちだ。同機能は「飯小圏」という名称で7月から試験的に運営されている。
筆者が実際に使用してみたところ、飯小圏はWeChatのモーメンツと使い方がよく似ているものの、シェアできるのはフードデリバリー(グルメ、スイーツなど)の注文内容に限られており、それらに関しては友達のおすすめを見ることができる。
現時点ではまだ試験的運営の段階であり、WeChatの友達、もしくは電話帳からの招待でのみ同機能を利用することができる。友達は「飯友」と呼ばれ、飯小圏のトップページ上部にある「好友」をクリックすることで追加できる。
飯小圏ではシェアした友達の注文内容を見ることができ、ユーザーは注文内容に対してコメントや「いいね」をすることができる。このほか、「跟着吃(同じ商品を食べる)」をクリックして注文することもでき、店舗側にとっては重要な集客チャネルとなっている。
ユーザーは自分の注文内容をシェアすることもできる。飯小圏を立ち上げるとまず、ユーザーが登録画面でチェックを入れた内容に基づき30日以内に注文した内容が2件自動的にシェアされる。その後はフードデリバリーの注文・支払いを完了すると、2分後に注文内容が自動的に飯小圏にシェアされるようになる。ユーザーは支払い完了ページから注文内容のシェアを取り消すことや、以前シェアした内容を削除することもできる。
飯小圏の友達は実際の知り合い以外にも、システムが利用履歴などの情報に基づき知り合いの可能性があるユーザーを紹介してくるという。このほかプロフィールを編集する際には位置情報を記入する箇所もあり、今後は周辺のユーザーやコンテンツをリコメンドしてくることも考えられる。
さらに飯小圏はユーザーとやり取りできるシーンを増やしていく。関係者によると今後はリアルタイムでのチャット機能などを追加し、ユーザーのニーズに応えるという。
美団の決算報告によると、今年3月末時点で年間利用者が5億7000万、アクティブユーザーは710万と、それぞれ過去最高となったという。ただ王興CEOは電話会議で「この数字の半分は美団優選(Meituan Select、美団傘下の生鮮食品や日用品の共同購入サービス)を利用する地方ユーザーによるものであり、フードデリバリーやECなどの事業に関してユーザー数はなお大きな成長の余地がある」と話している。
グループチャット機能や飯小圏などの機能を相次いでリリースしたことを見れば、美団がSNSを通して新規ユーザーを獲得し、消費を促したいと考えていることは明らかだ。
フードデリバリープラットフォームが手掛けるSNSは成功するのだろうか。米イェール大学で創業したテイクアウトアプリ「Snackpass」は大学キャンパス内で高い普及率を誇っている。ユーザーはひと月平均4.5回注文し、注文内容をシェアすることで、親しい友人関係の中で互いの好みを把握したり、新しい消費意欲をかき立てられたりするなどしてユーザー規模と消費量のスピード成長につながった。Snackpass以外にもSnapChatやFacebookが同分野で関連サービスの準備を進めている。
グルメSNSに触手を伸ばしたのは嗅覚の鋭い美団らしい動きだ。飯小圏のリリースによって同社に不足していたSNSという部分を補うことができる。美団にとってはSNSというのはもちろん手段にすぎず、ユーザーの消費につなげることこそが最終目的だ。
(翻訳・山口幸子)
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