新興パネルメーカー・ロヨル、給与未払い発覚。資金繰り不安強まる

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フレキシブルディスプレイなどを開発する中国大手「柔宇科技(Royole=ロヨル)」の資金繰りに問題が生じていることが明らかになった。

従業員の1人が2021年12月8日、同年9~11月の給与となる計3万3000元(約60万円)近くが支払われていないとネットに投稿した。それに続いて中国の独立系経済メディア「財新(Caixin)」も、柔宇科技は9月の給与を一部支払ったが、10月分を支払っておらず、11月30日に未払いの給与を支払うという約束も果たさなかったと報じている。

これは同社が抱える資金繰り問題の縮図にすぎない。

同社のサプライチェーンに関わる企業は、数百万元(数千万円)の代金がまだ決済されていないことを明らかにした。支払いができず、借り入れも難しい柔宇科技に対し、シリーズA、B、Cの3段階にわたって出資した「松禾資本(Green Pine Capital Partners)」が、既存株主と投資家を主導して新たに転換社債を発行しようとしているようだ。

資金繰りの問題が明るみに出たのは今回が初めてではない。同社はこの2年間で2度にわたりIPOを試みたが、実現するどころか財務上の問題をさらけ出すことになった。IPOの目論見書によると、2017年度から2019年度および2020年上半期の純損失は、それぞれ3億5800万元(約65億円)、6億1200万元(約110億円)、8億1000万元(約145億円)、3億8600万(約70億円)だった。

また、資金問題を解決するために保有している唯一の土地使用権まで抵当に入れた。さらに子会社も株式および設備と特許の一部を抵当や担保にして銀行に借り入れを申し込んだという。

柔宇科技は持ちこたえられるのか

柔宇科技が本当に成長力を有するのかについて、市場では以前から意見が分かれていた。有望視する側は、同社の「超低温非シリコンプロセス集積技術(ULT-NSSP)」が新しい技術領域を開いたと評価する。特に2014年に世界初の厚さ0.01mmのフレキシブルディスプレイを開発し世界から注目を集めている。

一方、疑問を抱く側の声も無視できない。技術の水準と市場の受容性にギャップがあり、ニーズの有無も定かでないことから「深圳三大詐欺会社」「計画倒れ」「話題先行」などのレッテルが常に付きまとっていた。

それにもかかわらず、名門校出身の創業者とその経歴、革新的な技術、クールなコンセプトを背景に、同社はこれまで計13回の資金調達を順調に進めてきた。

資金調達の実績

だが最近は、投資家が事業の状況と収益力を重視するようになってきた。一方、同社の事業は現在、収益を上げるのが難しい状況になっている。

同社は企業向けにフルフレキシブルディスプレイやフルフレキシブルセンサーのソリューションを提供。消費者向けには折り畳みスマホ「柔派(FlexPai)」、スマートパッド「柔記(RoWrite)」、VRヘッドセット「Royole Moon」「Royole X」などの製品をリリースしている。

しかし、現時点で同社とディスプレイ事業の提携を発表している著名なスマホメーカーは無い。目論見書に記された取引先上位5社との提携も継続していない。

柔宇科技は自社開発した世界初の折り畳みスマホFlexPaiを2018年に発表、2019年第1四半期に量産・出荷したのに続き、2020年3月には第2世代の「FlexPai2」を発表し、同年9月に発売した。しかし、これらのスマホは販売台数も評価もそれほど伸びなかった。

資金調達も製品リリースも難しい中、柔宇科技は研究開発に多額の投資をしている。企業の価値としては評価できるが、市場の目は厳しい。同社は創業から10年が経ったが、存続のためにキャッシュフローを安定させるという創業初期に優先すべき課題を解決できていない。
(翻訳・神戸三四郎)

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