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人工知能(AI)を使った動画広告制作のSaaSサービスを手掛けるスタートアップ「布爾向量(BOOLV)」は、直近3カ月で2回の資金調達を実施し、計約1000万ドル(約12億500万円)を集めたことが分かった。同社の創業者、王慶氏がこのほど、36Krに明らかにした。
中国の投資ファンド、線性資本(ライナーキャピタル)や、同国ベンチャーキャピタル(VC)の火山石投資(ボルカニックスベンチャー)、同国投資会社の徳迅投資(ディーセントキャピタル)、米VCのアップ・オネスト・キャピタルなどから出資を受けた。王氏によると、調達した資金は主に人員増強や研究開発投資の拡大に充てる。
BOOLVは2021年に設立。AIとビッグデータを分析する「データマイニング」技術を軸に、短編動画広告を自動制作するソフトウエアをクラウド経由で提供し、企業の動画マーケティングと販路拡大を後方支援している。海外展開する衣料品ブランドや海外のDTC(直販)ブランドが主な顧客だが、今後は他のカテゴリーや市場にも広げていく方針。
王氏は中国ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)や投稿動画アプリ「TikTok」を運営する北京字節跳動(バイトダンス)などで働いた経歴を持つ。各種サービスの商用化などに携わり、ネットの内外市場に対して深い知見を有する。
世界の短編動画マーケティング市場について、王氏は「動き出したばかりだ」と指摘。オンライン画像デザイン作成を手掛けるオーストラリアのCanva(キャンバ)と動画配信プラットフォームを運営する米Vimeo(ビメオ)に言及し、評価額がそれぞれ400億ドル(約4兆8200億円)、40億ドル(約4820億円)というユニコーンが、いずれもAIと動画関連企業の買収を積極化していると説明した。
続けて、「従来の認識では、欧米の美意識やデザインに圧倒的に優位性があると考えられていた」としつつ、「中国では短編動画分野の急速な発展に伴い、最終的にグローバル市場を掌握できた」と強調。「むしろ(欧米と違い)技術とデータで市場を導き、短編動画マーケティングでは、より深い理解と蓄積のあるチームを持つに至った」と語り、同分野ではキャンバやビメオなどと比べても優位性を有しているとの認識を示した。
産学で描く長期目標
一方、技術面から見ると、BOOLVは単一のアルゴリズムに限定していない。フィールドやシーンを選ばず、クロスモーダル(知覚が互いに影響を及ぼし合う)なアルゴリズムの構築・導入を追求していることがうかがえる。たとえば衣料品販売では、色柄やデザインの交換、バーチャルモデルの顔の変換、モデルに動きをつけるといった各種技術のほか、ライブラリからモデルを選択するサポート機能も備える。一連の過程を自動で行うことも可能だ。
王氏はこれらの技術について「長期的な模索のプロセスの一環だ」と力説した。現時点で商用化が可能な技術もあるが、一部の技術には応用や技術面の壁の突破という点でまだ改善の余地が残っているためという。具体的には、精度や高精細化、リアル感などを課題に挙げた。
王氏が「長期的プロセス」を強調したのは、BOOLVが創業当初から産学連携による研究開発を進めていることが背景にある。英ロンドン大学インペリアル・カレッジのデータサイエンス専門家と組むなど、世界の学術機関が取り組む最先端技術の維持に努め、商用化後の応用や最適化まで見据えているためだ。中国広東省の広州美術学院とは特別なカリキュラムを共同創設し、アートとビジネス、AI技術の融合に関する教育・研究を進めているという。
同社の人材の厚さも見逃せない。社内の中核を担う従業員の大半は、テンセントやバイトダンス、電気自動車(EV)の米テスラなどグローバル企業に勤めた経験を持つ。多くが米ペンシルバニア大、英オックスフォード大、香港大など名門校の卒業生だ。AIやコアアルゴリズムなどに精通し、開発経験も豊富という。
(36Kr Japan編集部)
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