プリンストン大学発リチウム電池リサイクル企業が約13億円調達 低音プラズマ用いた最先端技術を開発

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リチウム電池のリサイクル先端技術に注力する米「Princeton NuEnergy(以下、PNE)」はシードラウンドで1000万ドル(約13億円)近くを調達したと発表した。この資金調達は台湾の「緯創資通(ウィストロン)」が主導し、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル傘下の著名ベンチャーファンド「シェル・ベンチャーズ」、ナスダック市場に上場する「Greenland Technologies」、ベンチャーキャピタルファンドの「WorldQuant Ventures」、「CleanTech Open」、「AIBasis Fund」がコ・インベスターとして参加した。

2019年設立のPNEはプリンストン大学の最先端技術を基盤とするクリーンテック(脱炭素化技術)企業だ。リチウムイオン電池リサイクルの最先端分野である低温プラズマ技術とダイレクトリサイクル(構成部材をできるだけ壊さずに取り出し再利用する)を組み合わせることで、正極材料に使われる部材を低コストで効率良くリサイクルする。従来型のリチウムイオン電池リサイクル方法である湿式製錬法や乾式製錬法に比べ経済や環境に与えるインパクトは大きく、技術面のブレークスルーを実現した。

PNEの創設者兼CEOの閻超博士は、プリンストン大学で電池リサイクルを研究する科学者であると同時に連続起業家でもある。閻博士は、PNEがより費用対効果が高く環境に優しいリチウムイオン電池のダイレクトリサイクルソリューションを提供することで、新エネルギー車業界が中長期的に「カーボンニュートラル」や「カーボンピークアウト」を達成できるようサポートしていると語る。効率的かつ経済的な電池リサイクル技術がリチウム電池リサイクル産業の持続可能な発展を世界規模で促し、新エネルギーがより幅広く利用されるのを目指す方針だ。

リチウムイオン電池搭載の新エネルギー車の生産・販売が急成長する中、従来のサプライチェーンの需給バランスが崩れている。消費者電子機器分野の需要が減らない一方、車載用電池の需要が倍増したことで過去1年にリチウムイオン電池の正極材に使う原材料価格が高騰し、炭酸リチウムなどの原材料価格は7倍以上に上昇した。

多くの新エネルギー車用リチウムイオン電池の耐用年数は理論上は8年から10年とされる。実際は使用状況にもよるが、大部分の電池容量が6年から8年前後で80%あるいはそれ以下まで低下する。使用済み電池の増加に伴い、正極材料を効率的に再利用することが、サプライチェーン全体で環境への配慮を実践する上で不可欠となっている。

一方でリチウム電池のリサイクルは、鉛蓄電池などの従来の電池と比較して技術プロセスが複雑なため難易度が高い。現在、業界で多く使用されている湿式製錬法や乾式製錬法といった技術は従来の電池リサイクルプロセスに由来するが、リチウムイオン電池のリサイクルプロセスは複雑で汚染度が高く、エネルギー消費量も多い上に実際のリサイクル効率の向上も難しい。

PNEのリチウムイオン電池の新リサイクル技術である低温プラズマダイレクトリサイクル法は、プラズマ浄化技術を使用し、残存価値のある正極材料を保護する過程で精製および正極材料の再資源化ステップを省略する。リサイクルプロセスを大幅に短縮することで、正極材用の鉱石を採掘するよりもコストを40%以上削減でき、リサイクル効率も95%以上に高められる。

PNEの趙鵬COOによると、同社と今回PNEに出資した世界的大手企業のウィストロンが米ダラスで共同設立したパイロットライン(試験用小規模生産ライン)の進展は順調。PNEはリチウム電池のダイレクトリサイクルを工業化プロセスまで引き上げた世界初の企業として顧客のリチウム電池リサイクルとCO2排出削減目標の達成をサポートしている。目下最先端のリサイクル技術を早急に商業化し、将来的に世界的なリチウム電池リサイクルの大手企業となることを目指す方針だ。(翻訳・大沢みゆき)

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