クラウド型企業契約ライフサイクル管理SaaS、10億円超の資金調達 市場拡大の見込みで

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契約価値ライフサイクル管理のSaaS型ソリューションを提供する「甄零科技(Zhenling Technology)」がシリーズAで5300万元(約10億8000万円)を調達した。「雲啓資本(Yunqi Partners)」が出資を主導し、「藍湖資本(BlueLake Capital)」がコ・インベスターとして参加した。

契約管理は投資先として新しい分野というわけではない。海外資本市場では、甄零科技と比較されるクラウド型企業契約ライフサイクル管理のユニコーン企業「アイサーティス(Icertis)」について、ソフトバンクグループによる株式取得で合意に近づいており、アイサーティスの評価額は約50億ドル(約6800億円)と報じられている。同社が昨年のシリーズFで資金調達した際の評価額は約28億ドル(約3810億円)だった。また、企業法務向けに契約ライフサイクル管理を提供する「Ironclad」の評価額もシリーズDの資金調達後に10億ドル(約1360億円)近くとなっている。

甄零科技は、国内の有名ITコンサルティング「漢得信息(HAND Enterprise Solutions)」によってインキュベートされた。同社のコア製品であるスマートプラットフォーム「一諾スマート契約クラウドプラットフォーム(一諾合同、「合同」は契約の意)」は事業、財務、法律を集約し、履行を含む契約のライフサイクル全体の管理を実現するソリューションだ。

契約のライフサイクルには、締結前、締結中、履行中、履行後の各段階があり、契約締結期間と契約履行期間の2つに分けられる。他社が契約締結期間に重点を置き、契約締結の全プロセスをオフラインからオンラインに移行し効率的な各種ソリューションを提供するのとは異なり、一諾合同はサービス範囲を契約履行期間にまで広げている。

甄零科技の謝偉虎CEOによると、一諾合同には以下、3つの主要な製品がある。

■ OC(OneContract)は、契約締結期間のサービス提供で効率アップを図る。これには契約の基本的なシステム管理、内部および外部の契約共同起草、全文検索、電子署名および契約書の保管などが含まれる。

■ OF(OneFulfill)は、契約履行期間にサービスを提供する。履行の進捗管理のほか契約目標の達成を促進し、支払延滞や不良債権となる可能性を低減する。契約の履行、変更、終了等の各段階でMDM(モバイルデバイス管理)、ERP(統合基幹業務システム)など企業の業務システムとリンクさせることでプラットフォームが契約のタイムラインと自動的に連動し、計画や履行の推進のほかリアルタイムで進捗状況を共有する。

■ OL(OneLegal)は、知的財産の日常法務管理、訴訟手続き、法律事務所管理のほか工商局関係資料に特化した法務デジタル作業プラットフォームからなる。

契約履行段階には多くのシナリオがある上、業界が違えばニーズも異なるためソリューションの商品化は同モデルにとっての難点だ。

謝CEOは、「契約履行管理の段階では、ある程度開発作業がカスタマイズされており、現在、製品の納品サイクルは顧客のニーズに応じ2‐4カ月となっている。独立してからの15カ月の間に甄零科技は仏LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)、独シーメンス、ライフサイエンス企業のBECKMAN COULTER(ベックマン・コールター)など大企業60社近くとの協議で合意したほか、これまでに70社以上へのサービス提供によりさまざまな業界で豊富な経験を蓄積しており、特定のシナリオに対するソリューションの商品化を進めている」と語る。

また、中国の契約管理市場は発展の初期段階にある一方で参入者が多く、競争に直面している点に関しては懸念していないという。

■ 製品については、現在契約のアーカイブと電子化が主流だが、甄零科技はこれに加えさまざまな業界やシナリオに沿った契約履行管理ソリューションも提供できる。

■ 同社は最も困難な製品構築期間をすでに終え、契約の履行段階でも医療健康、インターネット、製造などの分野で垂直ソリューションを提供、先行者としての優位性を持ち技術を確立している。

■ B2B(企業向けビジネス)取引では主要な3つのプロセスのうち電子請求書と電子署名はすでに実用化されている半面、契約のデジタル化の遅れが取引効率に影響していることから、契約管理の市場拡大が見込まれる新たな投資対象に浮上している。

同社の主な収入源はSaaSサブスクリプション(定額課金)型サービス利用料とサービス料金であり、OC、OF、OLの3つの主要製品はそれぞれ単独で購入でき、平均客単価は約30万元(約610万円)となっている。

(翻訳・大沢みゆき)

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