36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
自動運転車で、またもや痛ましい事故が発生した。
中国の新興電気自動車(EV)メーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」のスマートEV「P7」が8月、寧波市内の陸橋で時速80キロで走行していたところ、駐車中の故障車を検知できずに衝突し、車両の後ろ側にいた車両検査官が死亡した。
事故当時、同車はLCC(車線中央維持支援)機能をオンにしていたものの、前方の停止車両を認識できず警告も出なかったため、ドライバーの不注意と相まって事故につながり、ドライバーも軽い打撲傷を負ったという。現在、警察が捜査を開始している。
LCCは単眼カメラと前方ミリ波レーダーによってドライバーのステアリング操作を支援し、車線中央に車両をキープする「快適な運転を支援する機能」である。この機能は自動運転レベル2(L2、運転支援)のカテゴリーに含まれ、高速道路でのナビゲーション・運転支援機能である小鵬汽車独自の「ナビゲーションガイドパイロット(NGP、高速道路上で出発地から目的地までを自動運転で走行する機能)」には含まれない。
小鵬汽車以外でも、これまでに「蔚来汽車(NIO)」、「理想汽車(Li Auto)」、米EV大手「テスラ(Tesla)」などの車両が同様の事故が起きている。
運転支援と自動運転は別物
一部のネットユーザーは、小鵬汽車のユーザーマニュアルとトレーニングでは、LCC機能が特定の状況で静止物体を認識できない可能性があるため、ドライバーが常に注意を払い車両を制御する必要を明示していると指摘した。つまり、車の所有者がマニュアルの内容を守らずに事故を起こしても自動車会社の責任にはできないということだ。
運転支援機能に関連する事故が起こるたびに「自動車メーカーは告知義務を果たした」「適切なタイミングで手動運転に切り替えなかったドライバーのせいだ」という声が飛び交う。これは自動運転業界に存在するパラドックスで、機能性が過剰に宣伝される割に一旦悲劇が起こると、現状の機能は運転支援に留まっており、最終的な責任はドライバーにあると強調される。
現行の法律では運転に責任を負うのはドライバー自身であり、完全に無罪とはならない。が、自動運転機能に関する誇大宣伝の最大の被害者となっているのもまたドライバーだ。
小鵬汽車は責任を負うべきなのか
小鵬汽車のユーザーマニュアルには、ACC(定速走行・車間距離制御装置)+LCCの使用に関し52個にも及ぶ警告が記載され、静止している障害物に反応しない可能性など、システムが作動しないケースが列挙されているという。
また、一部ユーザーによると、小鵬汽車はドライバー向けの初回トレーニングで、ACC+LCCは低速走行中または停車中の工事・清掃車両や事故車両、分離帯やコンクリートブロックなどを識別できないため、ドライバー自身による運転に切り替える必要があると説明したという。
海華永泰法律事務所のシニアパートナー王進氏は「システムが作動しない可能性のある状況をユーザーマニュアルに記載することで、自動車メーカーは最低限の告知義務を果たし一定のリスクは回避できていた」と述べた。しかし、運転前にユーザーマニュアルを読み、どのような運転条件で機能をオンにするかを常に念頭に置いているドライバーは少ないのが実情だ。
現行の法律では、ドライバーは自分の運転行為に責任を持つ必要がある。それでは今回の事件で小鵬汽車は責任を負うのだろうか?王氏は、さらなる技術鑑定が必要だとしている。追突された車両は停止していたものの後方で検査人員が歩いており、こうしたケースにおいて車両システムはどのように対応すべきかなどについてさらなる技術的な解明が必要だと示す。
見せかけの自動運転ブーム
実は、LCCは特に新しい最先端の機能ではなく、ガソリン車の時代にも類似する機能があった。当時の自動車メーカーはあえてこれを自動運転機能として宣伝することはなかったが、スマートEV隆盛の時代にあって自動運転は人気のコンセプトだ。
王氏は「現在の業界で交わされている議論や自動車メーカーの宣伝の方向性は、自動運転の実現が近いとの印象を消費者に与えるが、自動運転はあくまでも長期的な目標であり、現時点でスマート化がどの程度進んでいるかは厳密には認識されていない」と述べた。
つまり、業界、自動車メーカーとユーザーの間で、自動車のスマート化に対する理解には大きな隔たりがある。
2016年にはテスラ、2021年にはNIOの運転支援機能がそれぞれ悲劇を引き起こした。その後、自動車業界は商品名に「自動運転」の文言は使わないなど、自動運転に関する宣伝をややトーンダウンさせている。
運転支援システムを利用したことがあるドライバーは、システム稼働中は身体的な疲労は軽減されるが、自分で運転するときよりも集中力が必要だと示した。自動車が次の瞬間に対応できるか分からず、いつでもシステムを修正できるよう気を配る必要があるため、ドライバーはさらに高い集中力が求められるという。
自動運転に高い代償を払った人だけが、ブームの裏側には十分な実態がないことを知っている。
自動車メーカーは自動運転機能を追究する一方で、消費者に理想と現実の乖離を十分に知らせる必要がある。運転支援から自動運転への進歩が、人命の犠牲の上に成り立つものであってはならない。
(翻訳・大沢みゆき)
36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録