ドローンで電力設備を巡視点検、バッテリーまで自動交換。「真の無人化」を提案する中国スタートアップ

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ドローン(小型無人機)は、空撮や宅配に活用されて私たちの日常生活に浸透しつつあり、農業や植物保護、測量、電力設備の巡視点検などの産業分野でも力を発揮し始めている。

人工知能(AI)を活用した産業用ドローンを手がける中国のスタートアップ企業「雲聖智能(ikingtec)」は、10月20日に開かれた東アジア西太平洋電力工業協会(AESIEAP)の第24回大会に参加し、全自動ドローンによる電力設備の巡視点検システムを紹介した。

雲聖智能は2017年に設立され、産業用ドローン、全自動ドローンポート、地上用ロボットおよびIoTクラウドプラットフォームを組み合わせた全自動巡視点検システムを提供している。とくに電力設備の維持管理の分野に注力し、中国各地の国有電力会社のモデル事業を手がけてきた。同社はこれまでに8回の資金調達を実施し、計10億元(約200億円)近くを調達した。

送電線など電力設備の巡視点検は、過酷で手間のかかる仕事だ。2019年以前は、基本的に人が徒歩で見回りをするしかなかった。砂漠や高原、山奥などで炎熱や極寒にさらされながらの作業は、体力を消耗するばかりか効率も低く、危険も多い。ドローンに仕事をまかせれば、巡視点検の効率が向上するだけでなく、可視光線や赤外線、マルチスペクトル、LiDAR(レーザーレーダー)などを駆使し、人の目では発見しにくい欠陥を見つけられる。

ドローンは一見単純なつくりに見えるが、デジタルツインやAIアルゴリズム、IoT、5Gエッジクラウドなどのソフトウエア技術、そして炭素繊維材料や半個体電池、絶縁塗装、AIチップなどのハードウエア技術が集約されている。

しかし、ドローンを活用した電力設備の巡視点検は始まったばかりで、メーカーによって製品やサービスの品質にばらつきがある。一部のメーカーの製品は「無人」をうたってはいるが、実際には電力会社の専門的なトレーニングを受けた操縦士が操作しなければならず、充電切れに対応するため操縦士が巨大なバッテリーを背負う必要もある。

雲聖智能の共同創業者で最高マーケティング責任者(CMO)の朱勝利氏は「当社はドローンのバッテリーとセンサーを自動で交換できる全自動ドローンポートを他社に先駆けて開発し、電源の問題と『無人』化を同時に解決した」と説明した。

同社は全自動ドローンと全自動ドローンポートだけでなく、IoTシステムやAIも自社開発し、全自動かつ完全無人の巡視点検システムをワンストップで提供できることを最大の強みとしている。全自動ドローンの活用は、送配電設備だけでなく、太陽光発電所や風力発電所、揚水発電所といった新エネルギー発電所にも広がり、山岳地帯や森林にも炎熱や極寒の環境にも対応できる。

AESIEAPの第24回大会では、発電から送電、電力利用、蓄電まで、全プロセスのモニタリングと維持管理に対応する「新たな電力維持管理システム」の構築を提案した。それぞれのプロセスでは、ドローンに求められるサイズや航続距離、精度、センサーのタイプなどが異なるため、大型から中型、小型まで各種ドローンを展開する。また、自社開発のクラウドプラットフォームで全プロセスのデータを適切なタイミングで収集し、デジタルツイン技術で電力設備の全ライフサイクルにわたる維持管理を可能にするという。

中国では送電網のデジタル化やスマート化が進められており、新型電力システムの構築が新たな成長分野となっている。2030年には、スマート送電網の市場規模が3000億元(約6兆円)を突破するとの予測もある。巡視点検用ドローンの需要が高まるのは間違いないだろう。

(翻訳・田村広子)

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