表情だけでなく「心理状態」を推定するAI 中国新興、ロボットや自動車向け展開

人の表情や生体信号から感情や心理状態を推定するAIを開発する中国スタートアップ「微面科技」はこのほど、エンジェルラウンドで順為資本(Shunwei Capital)から数百万ドル(数億円規模)を調達した。

大規模言語モデル(LLM)やロボットは人の言葉を理解できても、相手の心理状態や感情を把握することは依然として難しい。人間は会話の際、表情や視線、呼吸、声の調子などの非言語情報も手掛かりに意思疎通しているが、多くのAIはこうした情報を十分に活用できていない。

清華大学の研究チームによって設立された微面科技は、「人間を理解するAI」の実現を目指し、リモートフォトプレチスモグラフィ(rPPG)を活用した顔認識AIモデル「FacePhys」を開発した。顔の毛細血管に流れる血液の微細な色の変化を画像から解析し、心拍数や呼吸数、心拍変動(HRV)、眼球運動、表情など120項目以上の生理・行動指標をリアルタイムで推定する。

従来のコンピュータービジョンでは、笑顔であっても疲労やストレス、不安といった心理状態を把握することは難しかった。同社は、生体信号と画像情報を組み合わせることで、人の状態をより多面的に理解できるとしている。

rPPGは照明条件や頭部の動き、肌の色の違いによるノイズの影響を受けやすく、実用化が課題だった。微面科技は約1万人分の臨床データと数千万件のサンプリングデータを収集し、医療機関との共同検証を通じて精度を高めた。

また、生体信号の時系列変化を解析するため、「状態空間モデル」を導入した。このモデルは、LLMが次のトークンを予測するのと似たような仕組みで、次の瞬間の身体の状態を予測する。創業者の唐健凱氏は人の心拍数や呼吸について、ランダムに変化するものではなく、連続性と周期性を持っていると説明した。これらの動的な変化を継続的に予測することで、単なる画像認識にとどまらず、身体の状態をより正確に把握することが可能になるという。

同社によると、「FacePhys」は心拍数の測定誤差を1分当たり2回(BPM)以下に抑え、推論時間も0.01秒未満とリアルタイム処理に対応する。モデル規模も約20万パラメーターと小さく、クラウドを介さずスマートフォンやカメラなどの端末上でも動作できる。

ロボットや車載向けに商用展開

微面科技は、「FacePhys」を基盤とした「人間理解システム」の商用化も進めている。このシステムは生体信号だけでなく、動作、姿勢、眼球運動などの視覚情報を組み合わせ、人の行動の背後にある感情や動機を理解しようとする。

同社はソフトウエアとハードウエアの両方で事業展開している。ソフトウエア事業では、ソフトウエア開発キット(SDK)やアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を通じて、ロボット、スマートコックピット、ウェアラブルデバイスのメーカーに技術を提供している。

家庭用ロボット分野では、海爾機器人(Haier Robotics Technology)などと量産化に向けて協業するほか、介護ロボット分野では、高齢者施設向けに健康診断のスクリーニングサービスを手がけている。また、自動車分野では大手Tier1サプライヤーとドライバーの疲労検知システムの量産化に向けた実証を進めている。

ハードウエア事業では「FacePhys」を搭載した組込型カメラモジュールをリリースした。主力製品の科学研究データ収集システム「Findings」は、研究機関や病院向けの高精度データ収集デバイスで、大規模な受注を獲得する段階に入ったという。

*1ドル=約160円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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