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近ごろ、イケアが中国1号店である上海徐匯店に、高品質のコーヒーを提供するロースタリー(焙煎所)カフェをオープンした。イケアによると、1階にあったレストランとカフェを改装したもので、各種スイーツやコーヒーを販売。スマホでのQRコードの読み取りにより注文、決済ができるという。
飲食事業は同社にとって新しい試みではない。
1950年代、イケアは本国スウェーデンの1号店にレストランをオープンさせている。そしてこのレストランが徐々にイケアの標準装備となり、同社とともに海外に進出。広大な売場での買い物に疲れた客に休憩場所を提供している。レストランの「ソフトクリーム」「サーモン」「ミートボール」という三大人気メニューが買い物客の小腹を満たすと同時に、滞在時間を延ばすという重要な役目を果たしている。滞在時間が長くなれば商品購入のチャンスも自然と増えるからだ。
イケアによく行く人は飲食エリアの混雑ぶりをすでにご存じだろう。実際に飲食事業は同社総収入の重要な部分を占めている。2016年のレストランの売上高は18億ドル(約1900億円)であり、同社の全世界総売上高の5%を占めた。中国では、2015年に飲食事業の売上高が総売上高の10%を占めた。米国第2位のピザチェーン「ドミノピザ」の2016年の売り上げが24億7200万ドル(約2650億円)だったことを考えると、イケアの飲食事業の規模の大きさがうかがえる。
しかし飲食事業の急成長と全体的な成長率の鈍化から収益規模が縮小。公開データによると2018会計年度(2017年9月~2018年8月)、イケアの総売上高は前年同期比11.2%増の255億ユーロ(約3兆円)だったが、純利益は14億5000万ユーロ(約1700億円)と前会計年度比で14.7%も減少している。
経済ニュースサイト「財経網(Finance Net)」によると、イケア米国食品部責任者Gerd Diewald氏はイケアレストランを独立した店舗として市の中心部に開設することを検討しているという。
飲食事業は、イケアが現在陥っている成長の鈍化という窮地に対する新たな切り口になるとして、ロースタリーカフェが誕生した。1階に設置したのは家具売り場に入らずにカフェだけを単独で利用できるようにするためだ。しかしカフェの利用客が食後に腹ごなしに家具売り場を散策することは十分考えられる。
同社CFOのJuvencio Maeztu氏は昨年末「イケアは今まさに4年にわたる転換期にいる」と語った。過去75年間、同社はずっと同じビジネスモデルを続けてきたが、2018年から2022年にかけて、徹底的に会社を変えて次の75年にそなえるという。
その一環として同社は小型店舗の設置やECチャネルの整備に取り組んでいる。
ロースタリーカフェもその試みの一つだ。同社によると、将来的にはレストランとカフェを、友人と集まったり、遊んだり、リラックスのできる、様々な目的のための場所にしたいとしている。
(翻訳・山口幸子)
※冒頭写真:イケアのWeChat公式アカウントより
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