独自技術で鉛蓄電池の寿命を伸ばす、コスト面でも優位。中国「太湖能谷」が数十億円調達

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鉛蓄電池による蓄電ソリューションを提供する中国企業「長興太湖能谷科技(Changxing Taihu Nenggu Technology)」がこのほど、シリーズCで数億元(数十億円超)を調達した。中金資本(CICC Capital)が出資を主導し、德合資本管理(Dehe Capital Management)や 国家電力投資集団(SPIC)など一部の既存株主も参加した。

太湖能谷は2016年に設立され、負極材に炭素を添加した鉛蓄電池「PbC電池(Lead-Carbon Battery、鉛カーボン電池)」による蓄電システムなどを手がける。電池のライフサイクルを管理する独自技術「TEC-Engine」でPbC電池の使用寿命を大幅に伸ばすことに成功し、さまざまな場面で活用可能な経済的かつ安全性の高いスマート蓄電ソリューションを提供する。

TEC-Engineは、PbC電池だけでなく、原理的にはリチウム電池やナトリウム電池、水性亜鉛イオン電池など、その他の化学電池にも応用可能だという。この技術は、電池の両極に絶え間なく変化する電場(騒音)を与えることで、デンドライト(樹枝状結晶)の成長を抑え、電池寿命を延長する。また、動的アルゴリズムにより大型電池パックの充放電効率を向上させる。

PbC電池による蓄電システムの最大の強みは安全性だ。引火性物質が含まれておらず、温度が上昇するまでの時間が比較的長い上、水性電解液を使用しているため、熱暴走や爆燃の心配がない。

蓄電産業では現在、複数の技術路線が併存している。中国政府は、複数の新たな蓄電技術の発展を支援する政策を打ち出しており、PbC電池による蓄電システムの活用も一定規模で実現している。とはいえ、蓄電システムのうちPbC電池の設備容量は化学電池全体の約1割にすぎず、出力で計算すると全体の3%に満たない。

太湖能谷はその革新的なソリューションによって、PbC電池による蓄電システムの課題だったサイクル寿命とコスト面の問題を解決した。独自技術のTEC-Engineを用いれば、PbC電池による蓄電システムのサイクル寿命を従来の800サイクルから1600サイクル以上に向上させられる。また、1キロワット時当たりの蓄電コストは、リン酸鉄リチウムイオン電池による蓄電システムの約6割となる0.25元(約5.3円)にまで抑えられるという。

現在、国家電力投資集団や中国華能集団、中国華電集団などの国有電力大手と安定したパートナーシップを結び、PbC電池による蓄電システムで複数のモデル事業を手がけている。浙江省湖州市長興県和平鎮の総合スマートエネルギー事業では、国家電力投資集団傘下の浙江電力および吉電股份と共同で約10億元(約210億円)を投じ、中国初のPbC電池による1ギガワット級の蓄電所を建設した。吉電股份など複数の企業との共同出資で設立した「吉電能谷(白城)儲能」も、23年10月23日に次世代型PbC電池の生産を開始している。

PbC電池による蓄電システムのもう1つの強みとして、原材料の鉛が手に入りやすいことが挙げられる。中国の鉛の埋蔵量は世界2位、生産量は世界の4割以上を占める。また、PbC電池の正・負極材料と電解液は、99%リサイクルできる。

さらなるコスト削減の余地もある。太湖能谷は鉛のサプライチェーンに参画することで、24年には鉛の調達コストを従来の3分の1に低減し、25年にはTEC-Engineを採用した蓄電システムのサイクル寿命を3000〜4000サイクルに引き上げる計画だ。26年には蓄電コストが0.1元(約2円)以下になると見込んでいる。

同社は、安全かつ超低コストなPbC電池による蓄電システムが今後、蓄電市場の構図を塗り替える可能性が高いとの見方を示している。PbC電池による蓄電システムは、24年には中国の新型蓄電システムの設備容量の4分の1を占め、28年には半分以上を占める見通しだという。

*2023年11月29日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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