スマートプロジェクターの黒船「Dangbei Atom」に、中国テック企業の本気を感じた

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スマートプロジェクターの黒船「Dangbei Atom」に、中国テック企業の本気を感じた

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中国企業のスマートフォン(以下、中華スマホ)は著名メーカーについてはその製品クオリティから評価を受けていて、中国国内での激しい競争を生き抜いたシャオミやOPPOなどが世界に展開した先々で評価されシェアを得ている。当時、世界中で中国のデジタル製品は安かろう悪かろうという印象があったが、その逆風をゆっくりと受け流すかのようにじわじわと口コミで評価が広がりユーザーを増やした。

中国で人気高まるプロジェクター

中華スマホよりは規模は小さいが、スマートプロジェクターにも同じ波がやってきている。近年中国の家電量販店では日本よりもプロジェクターを推していて、「大画面のホームシアター」が楽めることから、若い世代を中心に導入する人が増えてきている。

プロジェクターは広い壁面ではより広く画面を出すし、テレビよりはコンパクトで、狭い部屋でも気軽に導入できるメリットがある。さらに持ち運ぶことができるから、アウトドアなどの外出先でも複数の人と視聴共有が可能だ。

コロナ前から中国企業間で競争はあったが、コロナ禍で巣ごもりによるニーズで注目が集まり、現在の中国市場では「Dangbei(当貝)」「XGIMI(極米)」「JMGO(堅果)」の3社が抜け出して定番企業となっている。ちなみに、3社ともに海外展開を積極的に進めていて、日本についてはDangbeiとXGIMIは日本法人があり、JMGOは日本ビジネス開発による代理販売が行われている

安価なプロジェクターでは数万円から、普及価格帯でも10万円台の製品もあり、消費者としてはどうしても値段を優先に考えてしまう。基本的には値段に比例して性能はよくなるが、各メーカーのプロジェクターで投影方式がそれぞれあるため、明るさ、電力、コンパクトさ、ひいては値段などにも差が出る。

これらのメーカーのプロジェクターが支持されるのは、中華スマホ同様に快適に気持ちよく利用できるよう、各社が基本スペックについて様々なニーズに応えられるほど高めていることだ。さらに、スマホではカメラでの撮影機能を磨き上げたように、プロジェクターにおいて投影、補正やメニューなど使い勝手に磨きをかけているのが理由に挙げられる。

明るい室内でも投影できる「Dangbei Atom」を体験してみた

その中で、Dangbeiは22年12月より日本市場に参入し、Amazonで販売するほか、23年9月にはヨドバシカメラ、ヤマダ電機などの家電量販店でも取り扱いを開始した。23年1月には日本法人を設立し、日本での事業を本格的に加速。現在、世界初のGoogle TV搭載4Kレーザープロジェクター「Dangbei DBOX02 (Mars Pro 2)」や天井投影も可能なホームプロジェクター「Dangbei N2」などをリリースしている。

同社はもともとスマートテレビ向けの定番アプリをリリースしていた企業で、中国ではソニーのスマートテレビにも導入された実績がある。長年スマートテレビのユーザー向けに展開してきたため、ユーザーが大画面のスマート機器で何を求めているのかというノウハウを蓄積していて、ソフトパワーでは競合他社をしのぐ。

19年より中国でプロジェクターの開発を始め、投影方式は映画館の映写機でも使われるDLP(Digital Lighting Processing)方式を採用しており、明るく鮮やかで長時間連続して使用できて、消費電力が比較的少ないのが特徴だ。また、自社開発の「DangbeiOS」が搭載され、「早い」「軽い」「カスタマイズ性が高い」で評価を得ている。

今回は、日本市場でもよく売れている「Atom」を体験してみた。これは、厚さ4.75cmのコンパクトなパソコンサイズのプロジェクターで、ALPD(Advanced Laser Phosphor Display)レーザー技術により1200lmの明るさを実現している製品だ。この1200lmという明るさだが、明るい室内でも投影した映像が問題なく見られるレベルだ。

YouTubeで36Kr Japanの動画を表示してみた。音声検索でスムーズに表示された。

投影される映像のサイズは40インチから巨大な180インチまで対応(推奨サイズは60~100インチ)し、三脚穴があるのでそれを活用して固定することも可能だ。プロジェクターといえば、スクリーンを別途用意しなければいけないというイメージを持つが、部屋に障害物のない壁があれば投射ができる。プロジェクターを使用する際に、斜めに映し出されると、調整に手間がかかりがちだ。しかし、Atomは台形で投影され、台形補正がDangbeiの長所のひとつで他社と比べても調整が素早く感じる。同様にオートフォーカスも速く、同社製品の大きな強みとなっている。

Android TVを導入するプロジェクターが多い中、Google TVを搭載しているAtomは珍しい。また、YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなどのストリーミングサービスが利用できるほか、TVerもインストール可能なので、テレビ番組はある程度見ることができる。

Android TVにはないGoogle TVの特徴として、動画サービスの横断検索があり、音声やタイピングで入力すると該当するコンテンツをインストールしたプラットフォームから検索結果を出してくれる。Googleの音声検索なので使い勝手は問題なく、リモコンとの組み合わせの操作は実に快適だ。

Googleアシスタントも利用できるので、声かけで映画などのコンテンツ検索が可能だ。本体にはBluetoothとスピーカーが内蔵されていることから、スピーカーとしても利用できる。総合出力は10W(5W×2)で内蔵の製品の音質としてはまずまずだ。

余談だが、Dangbeiの中国でのラインアップにAtomという機種はない。これに最も近いのがD5Xという機種であり、これのローカライズ版がAtomかとDanbeiに訊ねてみたところ、「Google TVの要求スペックが決まっていて、CPUやメモリについてはその規格に合わせるために中国版よりも若干スペックダウンしている」という。体感的には遅いと感じることは全くないのでご安心を。

ただ中国では前述の通り、Dangbei OSが入っているのでよりきびきびと動作し、ユーザー好みにカスタマイズできる。そこは「今後製品を出していく中でGoogleとGoogle TVで開発提携できる関係になり、国際版製品のソフトウェアをブラッシュアップできるようにしていきたい」と担当者は語っている。

(文:山谷剛史)

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