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布状のフレキシブル圧力センサーを開発する中国のスタートアップ企業「矩僑工業(JQ Industries)」がこのほど、シードラウンドで国信喜海基金から約1000万元(約2億円)を調達した。資金は主にスマート工場の建設や生産ラインの敷設に用いられる。
矩僑工業は2023年11月に設立され、フレキシブル圧力センサーの活用場面に応じて、高齢者施設や医療機関向けの「ケアシリーズ」、自動車メーカー向けの「工業シリーズ」、ロボットの皮膚や研究開発向けの「精密シリーズ」の3シリーズで製品を展開している。
これまでのフレキシブルセンサーは、フレキシブル基板の上にセンシング材料をコーティングしたサンドイッチ構造のフィルム状センサーがほとんどだった。しかし、このタイプのセンサーは折り曲げに弱く、柔軟性や通気性などに限界があった。大面積で長期間使用するとコーティングが剥がれやすく、感知層の厚みを定期的に補正しなければならないという問題も生じる。
同社の張景淇CEOによると、布状センサーの大きな特長は、電極や感圧層、コーティング基板を全て繊維の形にして織物に仕上げたことにある。このため、フィルム状センサーに比べて柔軟性や通気性、快適さ、耐久性などが大幅に向上し、最小曲げ半径0.2mmと折り曲げにも強いため、活用シーンが大きく広がる。
フレキシブルセンサー技術の開発はもちろん、それを実用化し大量生産にこぎ着けることも重要だ。同社は中国の紡績工場で数千回にわたるサンプル実験を行い、紡績機の口金や温度・湿度制御などを改良して生産効率を向上させ、良品率を95%に高めることに成功した。
ケアシリーズで最初に量産を実現した高齢者施設向け床ずれ防止マットは、ベッドに寝ている人の体圧分布を常時測定し、各部位の圧力持続時間を記録する。自社開発したAIアシスタントと連動させることで、床ずれのリスクをリアルタイムで監視してアラートを出すほか、呼吸や震えなどのデータから脳卒中などのリスクを警告し、管理システムに情報を集約する。家族や看護師、ヘルパー、施設管理者などの関係者はアプリを使って高齢者の状態を把握し、必要なケアを提供することができる。
より専門的な床ずれリスクの監視・警告サービスを提供するため、矩僑工業は北京301医院とデータやアノテーション、モデル訓練の分野で協力し、床ずれケアに特化したAIモデルを共同開発して製品に組み込んだ。現時点ですでに複数の高齢者施設やサービスプラットフォームとの提携が実現している。今後は中国障害者連合会と共同で、床ずれ防止機能が付いた車椅子などを開発していく方針だ。
自動車製造分野では、車のシートに組み込むセンサーについて自動車メーカー10社ほどと提携を協議しており、一部はすでに量産段階に進んでいる。張CEOは車のシートに布状のフレキシブルセンサーを搭載すれば、もっときめ細やかな調節が可能になるとし、「シートのセンサーが体圧分布を測定し、最適な座り心地になるよう背もたれのエアバッグで微調整する」と説明する。
同社は2024年上半期に「半自動」の生産ラインを完成させた。現在、同社の工場は年産10万枚以上で、オーダーメイドにも対応可能。新たに導入した生産設備を使えば、新製品の試作品を1日以内に完成させられる。張CEOは、今後の受注増に対応するため、生産ラインの増設やさらなる自動化を進める方針を示している。また、直販のほかに代理店販売などの販売モデルを開拓し、徐々に国内市場から海外へと事業を広げていきたい考えだという。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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