DJIと対抗 XAIRCRAFT(極飛科技)のドローンがスマート農業へ進撃

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

DJIと対抗 XAIRCRAFT(極飛科技)のドローンがスマート農業へ進撃

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

農業の生産者サイドにとって、バイオテクノロジーとデジタル技術は効率アップのための主な手段だ。しかし40年近くの発展を経て、バイオテクノロジーがもたらしてきた効率アップは停滞期を迎えている。バイオ分野での技術が停滞しているためだが、一方では消費者の食品安全に対する意識の高まりや政府が環境保護をより重視するようになったのも理由である。このため、農業業界は新しい効率アップの手段を探っている。

こうした中、デジタル技術とスマートハードウェアを活用した生産・管理によって土壌の改良や精密な施肥、灌漑(かんがい)、作付けを行うことが今後20年間で農業の効率を向上させる主要な手段となるとみられている。

精密な施肥を行うためには専用ドローンがよく利用されており、この分野ではすでに2社の大手企業が誕生している。DJI(大疆)の農業事業部とXAIRCRAFT(極飛科技)だ。

DJIは2015年、農業に参入。低価格戦略で中小ブランドの市場シェアを奪った。2018年末にリリースした農薬散布用ドローン「T16」は3万1888元(約50万円)。一方、XAIRCRAFTが2019年初にリリースした農薬散布用ドローンPシリーズのベーシックモデルは5万元(約77万円)前後だ。XAIRCRAFTによると、今年の予定出荷台数は約2万台、年間売り上げは10億元(約150億円)に達する見込みだという。

ハードウェアだけにはとどまらない

XAIRCRAFTは彭斌CEOが2007年に広州で設立した。自社開発した飛行制御システムでドローン分野に参入。その後、物流大手「順豊(SF Express)」と物流業界でドローンの活用を試みた。2013年、同社は農業分野に参入、新疆ウイグル自治区にてドローンによる農薬散布実験を行った。現在ではドローンの開発から製造、農業のオートメーション化設備の運営までを手掛けるアグテック企業となっている。傘下には「極飛農業(XPLANET)」「極飛地理(XGEOMATICS)」「極飛物聯(XIoT)」「極飛農業智能(XAI)」がある。

2019年9月20日時点で、XAIRCRAFTが運営しているドローンは4万2000台を超え、作業面積は累計で3億1000万ムー(約2000万ヘクタール)を超えている。国土資源局の公開した第2回全国土地調査の結果では中国の耕地面積は約20億3000万ムー(約1億3500万ヘクタール)だ。

彭CEOによると、XAIRCRAFTは重要な転換期を迎えている。同社は施肥、作付けなどの各プロセスから栽培管理全体に目を向け、スマートハードウェアからデジタル化農業プラットフォームに生まれ変わろうとしているのだ。

方向転換の理由

彭CEOは、全国の農業用ドローンの保有量は100万台で飽和すると見積もっている。ハードウェア製品の限界が見える中、デジタル化農業プラットフォームはビジネスとしてより魅力的だ。限界利益が高く、事業の拡大余地も大きい。特に、データを武器として金融や保険事業をブルーオーシャンである農業サプライチェーンに引き入れることができる。

同社がデジタル農業に転向する上で基盤と強みを持っていることは明らかだ。中国のデジタル農業発展の最大のネックはデータ収集サイドにある。クオリティーの高いデータソースが少ないのだ。

XAIRCRAFTは早い段階から、ドローンの完全な自動飛行・作業を実現するため、圃場のデジタル地図を必要とした。農業分野は情報化が遅れていたため、同社は圃場のデータベースを自社で構築するしかなく、位置情報システムのリアルタイムキネマティック(RTK)技術を自社で開発。そしてここ数年の人間による測量や「極侠(XMISSION)」(自社開発した多機能ドローン)、ユーザーを通じてアップロード、蓄積してきた圃場のデータが、同社が栽培管理へと舵を切る上で格好の資源となった。さらに運営中の数万台のドローンも継続的にデータベースを充実させている。

長い目で見た投資が必要

農業分野での投資は案件、専門的な投資機関ともに少ない。インダストリアルインターネットや産業構造のグレードアップの声は盛り上がっているものの、農業はあまり注目されることのない分野だ。その理由としては農業は投入資金が大きく、周期が長く、リターンの遅い業界であることが挙げられる。

2016年以降は資金調達をしていないことについて彭CEOは、一つは同社が合理的な価格設定戦略を通して良好なキャッシュフローを維持していること、もう一つは農業企業は長期的で辛抱強い投資を必要としていることを挙げた。一年かけて成長する作物のサイクルに合わせると、デジタル化製品も完成まで2~3年という長い時間を必要とする。それでも最終的に販売にこぎ着けるまでに問題が起きることがある。このような業界の特徴からも、中国農業の発展と長期的な価値に賛同する投資家や企業と一緒に成長したいと彭CEOは語った。(翻訳・山口幸子)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録