「上司の発言分析」「白髪抜き」「仮想デート」⋯中国版メルカリ閑魚で売れる“謎の商品”たち

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「デリバリーの仕事をしています。食事を受け取る際に各レストランの厨房を見ているので、地域で信頼できて、美味しくて衛生的な店をご紹介します」

「泰山などの登山では、あなたの荷物を持って一緒に登ります」「犬の顔に見える断面の木材を集めて売っています」

「上司の発言の真意を分析します」

「海外旅行中にトラブルになって、ケンカの通訳をしてくれる翻訳者を見つけました」

――いま、アリババ傘下のフリマアプリ「閑魚(Xianyu)」では、これまで以上に“よくわからないけれど面白い”商品やサービスが売られ、中国の若者から大きな支持を得ている。

閑魚といえば中古品取引のプラットフォームとして、中国版メルカリのようなイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし現在では、より自由でクリエイティブな市場に進化しつつある。

SNS上に投稿された閑魚の活用アイデア(写真はネットより)

アリババのECサービスといえば、大企業が出店するB2C型の「天猫(Tmall)」やB2C+C2Cを兼ね備えた「淘宝(Taobao)」、そして、海外でも中国製品を購入できる「AliExpress」などがある。閑魚はこれらとは異なり、個人が中古品やサービスを販売することに特化している。2024年末時点でユーザー数は6億人を超え、年齢別では30歳未満が43%、さらに2000年以降に生まれたZ世代が23%以上を占めており、中国のネットサービスの中でも利用者が若いのが特徴だ。

若者は一般的にクリエイティブで、ユニークなアイディアを生み出す傾向がある。中国は朝から晩まで勉強漬けの「詰め込み教育」が行われており、自由な発想をする余裕はなさそうにも見えるかもしれない。実際には、閑魚や動画共有サイト「ビリビリ」のようなプラットフォームでは、若い世代による斬新なアイディアが数多く具現化され、披露されている。ちなみに36Kr Japanの記事でも、以前中国の若者が考え出した面白い仕事を紹介している。

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閑魚がサービスを開始したのは2014年6月のこと。その前身は中古品を扱う「淘宝二手(中古)」だった。この頃、ネットネイティブの90年代生まれがよく閑魚を利用した。中古品の売買は今でこそ珍しくないが、当時は中国の「中古=不良品やニセモノ」というイメージが強く、上の世代からみればとても中古商品は信頼できなかった。詐欺や偽物に対する免疫のない純粋な若者が利用するプラットフォームだからこそ、安心して利用できる中古市場は成長した。中国の若者たちは高いだけのブランドの消費に幻滅している世代なので、「高価なものは買えるけど、高すぎるのは嫌だ」という価値観で、必要に応じて閑魚で手頃な価格の中古品を探し、賢く消費している。

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日本への旅行者が「モノ消費」から「コト消費」に移行したように、中国の若者もすでにモノが十分揃っている環境のなかで「体験型消費」に価値を見出すようになっている。

体験型消費の例としては、「上司の発言の分析」「最新の生成AIで絵の制作代行」「オリジナルキャラグッズの制作」「仮想デート」「白髪抜きのお手伝い」など様々で、こうしたアイディア勝負の体験が閑魚で取引されている。

中国のEC市場では、天猫や抖音(中国版TikTok)などを中心に、アルゴリズムが人気店舗やインフルエンサーを優先的に表示する傾向がある。そのため、注目されるには莫大な金額の広告費を投じるのが一般的な構造となっている。だが、閑魚はこのアルゴリズムでの補正が比較的に弱い。検索ワード次第で、無名の出品者の商品も表示されやすいという特徴がある。こうした環境のもとで、個人がニッチな発想を活かしてモノやコトの商品やサービスを出品できるため、特に副業したい若者にウケがいい。

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とはいえ中国人はよく言われるようにシステムの穴を突くことに積極的で、閑魚もまた例外ではない。しばしばポルノ的なサービスをなんとかして売ろうとする人々が現れて、「自転車に乗車サービス」など独特の言い回しで客を呼び寄せる。メディアが驚きのアイディアで無法地帯となっていることを指摘し、システム側は出品を削除するなどの対応に追われている。それでもなお、中国のルールの下で独特なEC市場が形成されている。

そんな自由市場的な閑魚の色合いをさらに強めるかのように、閑魚は「人類はまだ閑魚の可能性の1%しか引き出していない」というスローガンを掲げ、先日「神奇閑魚開発者大会」と題したアイデア募集イベントを開催した。

しかも中国国内のオンラインサービス上で広く宣伝するだけでなく、中国国内の屋外広告を出し、さらに東京新宿の巨大モニターなど、海外でも広告を配信した。「中国のみなさん、そして世界中の華人のみなさん、ぜひ閑魚におもしろいアイディア商品を出品してください」と呼びかけた。その結果、冒頭に紹介したようなアイディア勝負の商品がこれまで以上に数多く出品されている。

アリババといえばやはり創業者のジャック・マーの存在を抜きには語れない。彼はかつて閑魚のオフィスを訪れ、こう語ったことがある。「閑魚は、魔法のような創造力で若者のライフスタイルに貢献し、彼らにさらなるチャンスを創出するサービスになるだろう」と評価した。そんな閑魚の利用だが、他のECサイトとは異なり、落札してもすぐに商品が送られてくるとは限らず、出品者とのちょっとしたやりとりが必要になることも少なくない。中国語に自信のある方は一度お試しを。

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(文:山谷剛史)

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