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中国雲南省曲靖市富源県の石炭物流パークで1月16日、大型水素トラック300台が整然と並び、轟音(ごうおん)も排気ガスも出さず、ゆっくりと走り出していった。貴州省磐州市から富源県、昆明市を結ぶ「水素回廊」構想の第1陣で、中国の水素エネルギー産業が、政策主導の実証段階から市場主導の商用フェーズへと移行した象徴的な事例となった。
車両を納入したのは、水素エネルギーの総合ソリューションを手がける「氫通能源集団(Thiko Energy Group)」だ。納入先は地元の炭鉱企業で、従来ディーゼル車や大型EVが担ってきた鉱山物流の主力を、水素燃料電池車に置き換える。
大型水素トラックの優位性
水素エネルギーの活用は交通分野では目新しいことではないが、高いコストが長く商業化を阻んできた。そんななか氫通能源の大型水素トラックが炭鉱企業に選ばれたのは、以下のような経済合理性が評価されたからだ。
まずは調達コストだ。補助金政策と優れたサプライチェーンを背景に、販売価格を大型純電動トラックよりも20万元(約440万円)抑えてあるため、顧客企業の初期投資を大幅に低減した。
運営面でも、水素の「製造・貯蔵・充填・利用」を一体化したモデルを構築した。富源県では300メガワットの風力発電所と、水素製造能力が毎秒1万5000標準立方メートルの工場を整備し、グリーン水素の年産能力を3000トンまで引き上げた。これは大型水素トラック約500台分の需要に相当する。
氫通能源が水素トラックと純電動トラックの運行コストを同一条件(積載量・走行距離)で実測したところ、電気料金が1キロワット時あたり0.7元(約15円)の場合、水素トラックの運行コストは純電動トラックの87%、1元(約22円)の場合は78%となった。これが500台分となれば、企業のコスト削減効果は年間1000万元(約2億円)を超える。
リチウムイオン電池と比べ、水素燃料電池は大型・長距離・高積載の条件下で圧倒的な優位性を発揮する。ルートが固定され、1日の走行距離が長い鉱山物流は、特に適合度が高い。
エネルギー補給の面でも、大型水素トラックの水素充填時間はわずか15分と、充電に数時間かかる純電動トラックに比べて圧倒的に速い。航続距離と耐久性も優れている。今回納車した大型水素トラックは、バス製造大手の宇通客車(Yutong Bus)と共同開発したもので、130キロワットの燃料電池システムを搭載し、満載時の航続距離は476キロを超える。しかも、氷点下30度でも稼働できるため、雲南省の標高の高い山道での長距離走行にも耐えられる。
「富源モデル」、全国展開へ
氫通能源が富源県で成功させたモデルは、業界内で「富源モデル」と呼ばれ、中国全土の石炭の産地や物流ハブへの応用が期待されている。同県は風力資源に恵まれているものの、地元での利用が難しいという課題を抱えていた。同社は余った再生可能エネルギーを水素に転換して鉱山輸送に活用することで、再生可能エネルギー活用とゼロカーボン物流の両立を実現した。
収益源は車両販売だけではない。水素販売や車両運営、グリーン電力の販売、さらにCO2排出量取引や水素充填サービスなども加わる。このモデルは社会貢献につながるだけでなく、企業が自ら収益を生み出し成長する能力も引き出していく。業界全体が赤字状態となっているなか、氫通能源は2025年に黒字化を果たしている。
2026年には富源モデルを全国8エリアで展開し、3000台を納車する計画だ。2025年の中国における燃料電池車生産台数(7655台)を踏まえると、存在感は小さくない。
「道なき道」を行く
事業の大規模展開に向け、氫通能源はグリーンエネルギーによる水素製造資源を統合し、鉱山輸送など具体的な利用シーンとの連携を強化している。そして中煤集団(CNCG)や中国電力建設(Power China)などの戦略パートナーと手を携えて、グリーン物流・水素エネルギー供給・産業革新を結びつけたエコシステムの構築を目指す。このほか、上海理工大学と共同で水素エネルギー研究院を設立し、産学連携の強化にも取り組む方針だ。
2025年6月に建機大手の徐州工程機械集団(XCMG)と共同で、260トン級の鉱山用水素トラックを発表した。200キロワットの燃料電池5組を搭載し、システム出力は2200キロワットを突破。部品の国産化率も70%を超える。
当然のことながら、水素産業には依然として課題が残っている。水素の製造・貯蔵・輸送・利用の各プロセスで、電解槽の効率や水素貯蔵材料の安全性、燃料電池の耐久性など技術的な向上が必要となる。また、高圧水素の輸送コストは高く、液化水素技術も大規模化されておらず、水素輸送パイプライン網も不足している。そのため、「水素があっても輸送できず、利用できない」という構造的なミスマッチが生じている。
氫通能源の経営理念は「困難があっても正しいことに取り組む」だという。会長の任亜輝氏は、創業当初は無人の荒野を進んでいるようで、適切なサプライヤーすら見つからない状況だったが、最も重要なのは信念を貫くことだったと振り返る。それが今や、300台の大型水素トラックを一括納車するまでに成長し、さらなる大規模化の前夜を迎えている。
*1元=約22円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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