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このほど、中国の大手証券会社「安信証券(ESSENCE SECURITIES)」がEC大手「京東(JD.com)」グループ傘下の金融サービス企業「JD Digits(京東数字科技)」についてのレポートを公表した。同レポートでは業務、顧客、財務の3つの側面からからアリババ系列のフィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」との類似点と相違点を詳細に比較分析している。
安信証券は、2014年から2016年までを、JD Digitsとアント・グループの事業内容が最も類似していた時期だと分析する。
JD Digitsとアント・グループは2014年に後払い決済を導入し、無担保でリボルビング方式の貸付サービスを消費者に提供し始めた。サービス名はそれぞれ、JD Digitsがクレジットサービス「京東白条」とキャッシングサービス「京東金条」、アント・グループがクレジットサービス「花唄(Ant Credit Pay)」とキャッシングサービス「借唄(Ant Cash Now)」である。
両社のサービスの仕組みは非常に似ている。どちらも、顧客洞察と信用評価モデルに基づいて貸付限度額を設定し、無利子期間終了後に自動で引き落とす。使用と返済の記録が蓄積されるに従い、消費者の貸付限度額は高くなっていく。信用貸付をする側から金額に応じて技術サービス料金を徴収するのは両社共通だ。
JD Digitsの目論見書によると、消費者金融の主力商品、金条と白条の売上高は年々増加している。全体の売上高に占めるの割合も2017年の26%から今年上半期には43%に上昇した。
JD Digitsと同様に、アント・グループの「微貸(weidai)科技」プラットフォームも、2017年に161億8700万元(約2500億円)だった売上高が2019年には418億8500万元(約6500億円)に増加した。2015年、アント・グループは、クレジットサービスAnt Credit Payをベースに、買い物以外にも使えるデジタル無担保キャッシングサービスAnt Cash Nowをリリース、この事業の売上高も年々増加している。
安信証券は、現在のJD Digitsとアント・グループではメインとする客層に違いがあると指摘する。JD Digitsは政府機関などの法人顧客がメインで、スマートマーケティングやスマートシティなどのサービスを提供する。一方、アント・グループの顧客は個人消費者や小規模店主がメインで、貸付、資産運用、保険などのサービスを提供している。
この点については、アント・グループが「タオバオモール(淘宝商城)」のユーザーを基盤にしていることを忘れてはならない。傘下のモバイル決済サービス「アリペイ(支付宝)」の浸透により個人消費者側に強みがあり、そのため、個人消費者や小規模店主へのサービスに偏重しているのだ。
両者の違いは他にもある。財務面では、アント・グループの売上規模はJD Digitsをはるかにしのぐ。2017年から2020年上半期まで、JD Digitsの売上高はアント・グループの13~16%に過ぎない。さらに、収益性もアント・グループのほうが安定している。目論見書によると、アント・グループは2017年から現在まで、親会社株主に帰属する純利益でプラスを維持しているが、JD Digitsは今年上半期に6億7000万元(約100億円)の親会社株主に帰属する純損失を出した。
JD Digitsは研究開発への投資の割合が比較的高いのが特徴で、研究開発費の割合は年々拡大している。アント・グループは今年上半期の伸び率が前年よりも低下した。
総括すると、アント・グループは、売上高はインターネット金融サービスによるものを主とし、多数のアクティブユーザーを擁するアリペイに依存して消費者や店主向けの金融サービスを提供しているが、JD Digitsは金融機関、企業、政府などの法人顧客へのソリューション提供を主とする。両社には類似点もあるが、具体的に掘り下げていくと、その核心となる部分はかなり違うことがわかる。
(翻訳:永野倫子)
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