米会計監査を拒否する会社は上場廃止、米下院の法案可決で中国企業の締め出しが加速

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米下院本会議は12月2日、米国市場に上場する外国企業に経営の透明化を求める法案「外国企業説明責任法」を可決した。対象となるのは全ての外国企業だが、実際にはアリババなど米国に上場している中国企業を標的にしたものとの見方が強い。

同法案はすでに5月に上院で可決されており、トランプ大統領が署名すれば発効する。中国に対するこれまでの大統領の姿勢からして、ほぼ確実に署名するとみられる。

法案では、米国で上場する外国企業が米上場企業会計監視委員会(PCAOB)の審査を受けていない会計事務所を通して会計監査を行っている場合、その企業が自国政府の所有や支配下にないことを証明するよう規定している。その際、政府の株式保有比率、取締役会の中国共産党員の情報、会社定款に中国共産党規約が含まれているかどうかなどを米国証券取引委員会(SEC)に開示しなければならない。

3年連続でPCAOBの監査基準に満たなかったり、検査を拒否したりした場合は上場廃止となる。

米国のPCAOB制度は2002年に始まったもので、上場企業の会計監査を行う会計事務所の登録を義務づけると同時に、監査記録の開示を要求する権限を持つ。

クロスボーダー投資に詳しい弁護士の朱可亮氏によれば、会計事務所が中国企業の会計監査を行う場合、監査対象の書類は中国の法律に基づく「国家機密」として外部に開示することが禁じられているため、SECやPCAOBは会計士が提出する監査報告しか見ることができない。一部の中国企業は会計士と共謀して売上高を不正に水増しし、米国の投資家に巨額の損失を負わせてきた。米国側は多年にわたり強い不満を示してきたが、両国の話し合いは平行線をたどり解決の糸口は見えていない。さらに今年4月に発覚した「luckin coffee(瑞幸咖啡)」の不正会計事件により、法案成立に向けた動きが加速したとみられる。

米中経済安全保障問題検討委員会の調べでは、2020年10月2日時点で米国市場に上場している中国企業は217社あり、時価総額の合計は2兆2000億ドル(約230兆円)に上る。また中国の大型国有企業13社が、ニューヨーク証券取引所を始めとする米国三大証券取引所に上場している。

法案が発効すれば、米国で上場している中国企業は撤退か、それとも米国の監査受け入れかの二択を迫られることになる。

昨今の米中貿易摩擦や香港証券取引所の規制緩和により、以前に比べて香港や中国国内での上場を目指す中国企業が目立ってきた。その波に乗り、米国市場から撤退して香港や中国国内の株式市場へシフトするのも一つの方法だ。上場廃止となる前に、別の株式市場で上場を果たすだけの時間は十分にあると見られる。

3年以内に、米国による監査を受け入れる体制を整えて要求を満たすという方法もある。かつてアリババのマギー・ウー(武衛)CFOは投資家に向けて「米国の証券取引所で株式を購入する投資家を守り、透明性をもたらすことを目的としたいかなる法律をも順守するよう努力する」と語ったと、ロイター通信は報じている。

朱弁護士によれば、中国企業は今回、米国で渉外活動やロビー活動を一切行っていないため、この法案を変えることは不可能だという。一部の中国企業は香港やシンガポール、ロンドンなどで上場するという選択肢があるが、これらの証券取引所は米国よりも要件が厳しい上、調達できる資金は米国に及ばない。このため多くの企業は法規順守のために全力を尽くし、米国市場にとどまる道を模索するものと思われる。

法案が成立すれば、米中間の緊張がさらに高まるのは必至だ。米議会の中国に対する強硬姿勢が今後もさらに強まれば、バイデン氏は成立した法律を執行するよりほかないだろう。
(翻訳・畠中裕子)

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