非侵襲で脳深部を刺激 中国発BCI企業、パーキンソン病治療に挑む

超音波BCI(ブレイン・コンピュータ・インターフェース)を開発する中国スタートアップ「華超神控(BCI-Sonics)」はこのほど、エンジェルラウンドで1億元(約24億円)を調達した。出資者は経緯創投(Matrix Partners)、徳聯資本(Delian Capital)および道遠資本(Tao Capital)。資金は技術検証と実用化の推進に充てられる。

華超神控は2025年設立。創業者の李昕氏は、中国科学院と独フラウンホーファー研究機構コンピューターグラフィックス研究所(IGD)の共同指導を受けて生体医工学の博士号を取得し、米GEヘルスケアのグローバル研究センターで中国エリア責任者を務めた。同氏は連続起業家としても知られている。

ここ数年来、超音波BCIが注目を集めており、米OpenAI創業者のサム・アルトマン氏や米コインベース共同創業者のフレッド・アーサム氏をはじめ、シリコンバレーの起業家が続々と参入している。中国の企業や研究機関も海外勢と肩を並べており、両者の技術格差は「2年以内」と見る向きも多い。

(画像提供:華超神控)

BCIのうち、侵襲型は開頭手術をして脳に電極を埋め込む必要がある。また、経頭蓋磁気刺激(TMS)など従来の非侵襲型は脳の浅い部分にしか作用せず、深い部分に働きかけるのは難しい。

華超神控は、開頭手術をすることなく脳深部の神経活動を正確に制御する経頭蓋集束超音波(tFUS)技術を選択した。TMSの作用深度は約2ミリメートルにすぎないが、tFUSの作用深度は数センチメートルに達するため、パーキンソン病や疼痛、各種依存症などの治療にも新たな可能性が開ける。

tFUSの技術的課題は、その精度にある。頭蓋骨の厚さや密度、曲率は人によって異なるため、超音波が頭蓋骨を通過する際に、エネルギーの減衰や焦点のズレが生じてしまう。

華超神控が開発した経頭蓋位相補正アルゴリズムは、超音波音場の歪みをリアルタイムで補正し、焦点のズレを1.5ミリメートルに抑えることで、極めて精度の高い制御を実現する。これにより、超音波BCIが研究の段階から臨床応用の段階へと進むはずだという。

AIを活用したクローズドループ型神経制御プラットフォームも構築した。システムが脳波などマルチモーダルな神経信号を収集し、AIを利用してリアルタイムの脳の状態を識別した上で、個別の刺激法を自動生成する。さらに、フィードバックされた情報を用いて刺激する位置や強さを継続的に調整することで、「読み取りー理解ー制御ーフィードバックー最適化」のクローズドループが出来上がる。

パーキンソン病の特定の症状がある患者に対しては、これまで脳深部刺激療法(DBS)用の電極を脳深部に埋め込む必要があった。しかし、超音波BCIなら埋め込み手術をすることなく脳深部を刺激できるため、患者がより安全な形で尊厳のある生活を取り戻せる可能性がある。

華超神控は現在、複数の大学、三甲医院(最高等級の病院)、臨床専門家チームと共同で、疼痛や依存症、神経可塑性などに関する研究を進め、超音波BCIを科学的検証の段階から臨床応用の一歩手前の段階まで引き上げられるよう、急ピッチで取り組んでいる。

中国発・超音波BCI「Gestala」、約100億円を調達 世界初の専用工場も稼働

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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