がん治療に光 中国新興、「ミニ臓器」オルガノイドを活用した試薬・創薬

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オルガノイド技術の開発と応用を手掛ける「D1 Medical Technology(丹望医療科技)」がこのほど、エンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。リードインベスターは「凱風創投(Cowin Venture)」、コ・インベスターは「領銜健康(Leading health)」が務めた。

D1 Medical Technologyは腫瘍の精密診断と治療に特化し、オルガノイド技術の実用化を進めている。オルガノイドの活用で患者に合わせた診断と治療を提案するほか、新薬開発企業向けにオルガノイドを提供する。

また、自社開発したオルガノイド技術を基盤に、臨床診断や薬剤スクリーニングに用いるオルガノイド培養の標準的プロセスと品質管理システムを構築し、すでに複数の三甲医院(中国で最高クラスの大病院)と共にオルガノイドに関する臨床的検証を実施している。

今回調達した資金は、オルガノイドの標準化システムの構築、製品開発の高度化および事業の商業化に充てられる。

「体外のアバター」オルガノイド

オルガノイド技術とは、患者の組織を体外で培養し、本物そっくりの構造と機能を持つ「ミニ臓器」を三次元的に作製する技術を指す。

オルガノイドの臨床応用の可能性

オルガノイドは現在、主に薬剤スクリーニングと新薬開発に活用されている。

オルガノイドは患者の生体内組織と構造的にも機能的にも近似しているため、実験室で薬剤反応をシミュレーションでき、効率の高い薬剤スクーニングが可能になる。薬剤を患者に処方する前に体外で薬剤の有効性を試し、最適な治療方法を見つけられることから「体外アバター」方式とも呼ばれている。オルガノイドによる薬剤スクリーニングは、精密医療を大きく発展させる可能性がある。

また、新薬開発の現場では85%の薬剤が臨床試験に合格できず、大きな損失を生み出しているが、臨床試験前に候補薬剤の効果測定を十分に行えれば、コスト低減という大きな価値を生み出せる。オルガノイドを利用すれば効果測定の費用と所要時間を低減できることに加え、体内反応の再現性にも優位性があるため、製薬企業の注目を集めている。

D1 Medical Technologyは三つの方向性で事業を展開しようとしている。一つ目は患者に対する検査サービスの提供。二つ目は製薬企業に対する新薬開発プラットフォームの提供。三つ目は自社の強みである技術を応用したオルガノイド関連製品の提供だ。同社のビジネスモデルは、これら三つの事業で構成されるクローズドループモデルとなる。

同社の創業メンバーには世界的なオルガノイド開発者、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのハンス・クレバース(Hans Clevers)教授が加わっており、同社の技術力を支えている。

華国強CTOは「当社はすでに、腸や胃、膵臓、肺、膀胱などのオルガノイドおよび各臓器にできるがんオルガノイドの創出に成功している。今回の資金調達によって、がんオルガノイドの臨床試験とオルガノイドの標準化システムの確立を加速させていく」と今後の展望を語っている。

(翻訳・田村広子)

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