短編動画アプリTikTokを運営するバイトダンス（字節跳動）が、ついに越境ECアプリをリリースした。アプリ名は「Fanno」で、出店業者を絞って11月に試験的にリリースされた。バイトダンスはFannoについて、「模索の初期段階にあるEコマースのプロダクトで、世界中のユーザーに向け、あらゆるカテゴリーの商品を高コストパフォーマンスで提供する」と説明している。現在はイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの5カ国で展開し、主に欧州市場をターゲットにしている。

事情に詳しい関係者によると、「Fannoは中国でいうタオバオ（淘宝網）や拼多多（Pinduoduo）のように全商品カテゴリーを網羅したいようだ。中国ではECプラットフォームがかなり発達しているが、海外ではアマゾンを除き、アリババ系のAliExpress、格安モールのwish、ファストファッションのSHEINなどにもそれぞれ固定ユーザーがついているものの、市場シェアでいえば絶対的な勝者は不在だ。バイトダンスはその間隙を突いてEC市場を狙ってきたと考えられる」という。

実際、バイトダンスが越境ECアプリをリリースする計画だとの情報は昨年末から何度も伝えられてきた。昨年末には同社の張一鳴CEO（当時）が社内で翌年の目標について触れており、2021年は越境EC事業、企業向けサービス事業、オフィススイート「飛書（FEISHU、海外版「Lark」）」の付属ツール「Lark Phone（LKP）」事業に重点を置くとしている。これを機にバイトダンスは「マゼランXYZ」とのプロジェクト名で越境EC事業を進めてきた。

TikTokとは別に越境ECアプリをつくった理由

筆者が実際にFannoを使ってみたところ、トップページの最も目立つ場所に新規ユーザー向けの特売コーナーが設けられていた。全商品が0.01ユーロ（約1.3円）均一と破格の安値だ。その他の一般商品はおおむね1〜50ユーロ（約130〜6400円）の価格で販売されており、低価格から中価格帯の商品を求めるユーザーをターゲットにしていることが伺える。

取り扱う商品は衣料品、電化製品（パソコン・通信機器・家電）の付属品、アクセサリー、化粧品、子ども用品、ペット用品、インテリア用品、アウトドア用品、スポーツ用品などで、ある報道によると、すでに4万以上のSKU（商品の最少管理単位）を販売しており、商品の多くは越境ECを手がける中国の大手販売業者から仕入れているという。

立ち上げ段階の現在、最も重視しているのがファッションカテゴリーだ。SKUが豊富で幅広いユーザーをターゲットにできること、販売数拡大までが速く、リリース間もないFannoがユーザーの間で広まり、より多くのユーザーに知ってもらうのに役立つことが理由だ。ファッションを重視するもう一つの重要な理由は、物流面での負荷が少なくて済むことだ。Fannoの現在の事業モデルはシンプルで、商品は在庫にせずEMS（国際スピード郵便）で直送するか、あるいは海外に商品倉庫を置いている。

月間アクティブユーザーが10億人に迫るコンテンツプラットフォームのTikTokを有するにも関わらず、バイトダンスが越境ECアプリを別途リリースしたのはなぜか。

現在、TikTokアプリでEC事業を行うには二つの方法がある。一つは「TikTok Shop」を出店する方法だ。決済はTikTokアプリ内で行われ、販売業者用の管理ページには運営用ツールが揃っており、その使用料としてTikTokが売り上げの5％を徴収する。送料・手数料を無料にするインセンティブも提供している。もう一つは、ECサイト構築・運営支援サービスのShopifyをTikTokと連携させる方法だ。自社のECサイトに出品した商品がTikTokの店舗にもワンクリックで同期され、最終的な取引はShopifyで完了させる。

ただし、TikTok Shopを運営する場合、最初に試験運用が始まったインドネシアのほかは、現状ではイギリスにしか対応していない。これで事業範囲を拡大させるのは簡単ではない。一方、Shopifyと連携させる方法では外部リンクへつないで取引する形式となり、TikTokは広告費や取引手数料を徴収するにとどまる。しかし、バイトダンスの目的は、独立したECのエコシステムを築くことだ。取引のプロセスはすべて自社のプラットフォームで完結させることを目指し、外部のECサイトにリンクを飛ばす形式はもともとは望んでいない。

今年は越境EC市場全体が爆発的に成長し、Fannoにも事業成長のきっかけが与えられた。TikTokのコンテンツが自然と多くのユーザーを引き寄せてくれることが、まずはFanno事業の第一歩となる。しかし、複雑に絡みあう海外のサプライチェーンはバイトダンスにとっては得意分野ではなく、軌道に乗るまでの道は長く険しいだろう。

作者：WeChat公式アカウント「電商在線（ID：dianshangmj）」 、楊泥娃
（翻訳・愛玉）

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