中国EV、電池「大量退役」時代へ 2030年までに100万トン、回収ルールを大転換

中国で、初期に普及した電気自動車(EV)の「高齢化」が始まっている。それと同時に、使用済み車載電池を巡る巨大な回収市場も転換点を迎えた。

中国公安部によると、2026年6月末時点の新エネルギー車(NEV)保有台数は4897万台に達し、自動車全体の13.19%を占めた。中国乗用車協会(CPCA)などの試算では、26年末までに車齢8年を超えるNEVは260万台に達するという。中国汽車戦略・政策研究センターは、2026年に退役する車載電池が約43GWh、重量換算で28万〜30万トンに達すると予測する。2030年には171GWh、約110万トンまで膨らむ見通しだ。

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大量の車載電池が退役期を迎えるのを前に、中国では電池の回収・再利用を巡る規制の再整備が進んでいる。

中国工業・情報化部(工信部)の辛国斌副部長は8月26日、第15次5カ年計画(2026~30年)期間中に、車載電池の「デジタル身分証」制度を導入し、「出所から行き先まで追跡可能な」管理体制を構築する方針を明らかにした。2030年までに使用済み車載電池の利用量を年間100万トン以上に引き上げることも目指す。

「カスケード利用」の区分は対象外に

2025年12月31日に公布され、2026年4月1日に施行された「新エネルギー車用使用済み車載電池の回収・総合利用管理暫定弁法」では、「総合利用」の定義が、解体、破砕、選別、製錬などによる資源再生利用へと改められ、「梯次利用(カスケード利用)」は対象に含まれなくなった。

7月30日、工信部は「新エネルギー車用使用済み車載電池の総合利用に関する業界規範(2024年版)」のうち、「梯次利用(カスケード利用)」に関する規定を廃止し、カスケード利用企業を対象とした公告管理を終了すると発表した。これに伴い、同区分で登録されていた100社が公告企業リストから一括して外れた。事の本質は「梯次利用」が独立した政策上の管理区分ではなくなったことにある。

カスケード利用とは、EVなどでの使用を終えた車載電池について、残存容量にまだ利用価値がある場合、検査や分解、再構成を経て、蓄電設備や通信基地局の非常用電源など、それほど高い性能が求められない用途に再利用する仕組みを指す。

電池の寿命を延ばし、資源を有効活用する手法として期待されてきたが、市場の拡大に伴い、品質や安全性を巡る問題も顕在化してきた。

退役した車載電池は、残存容量だけでなく、充放電回数や過去の使用状況、安全状態などに大きなばらつきがある。十分な検査や品質管理を行わず、簡単な分解と組み立てだけで再利用すれば、過充電やショート、圧迫などによって熱暴走を起こすリスクがある。

工信部は、一部の違法業者が都市と農村の境界地域や農村部などで非正規に使用済み電池を処理し、加工した電池を電動自転車など使用が禁止されている用途に転用するケースもあると指摘している。

今回の制度変更は、退役電池の「再利用」そのものを禁止するものではない。むしろ、「梯次利用」という名称によって電池の適法性を判断する仕組みを改めるものだ。新品の電池を使う場合でも、退役電池を再利用する場合でも、新たな電池製品として市場に投入する以上は、最終用途に応じた品質・安全基準を満たす必要がある。また、使用済み車載電池を直接、あるいは分解・再構成したうえで電動自転車など規制対象の用途に使用することは明確に禁じられている。

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「企業を管理」から「電池1個単位の追跡」へ

「梯次利用」という独立した管理区分の廃止は、中国の車載電池回収政策で進む変化の一部にすぎない。

より長期的な影響を及ぼすとみられるのが、車載電池の「デジタル身分証」制度だ。工信部は今後、車載電池のライフサイクル全体にわたる管理を強化し、出所から最終的な処理先まで追跡できる仕組みを整える方針を示している。第15次5カ年計画期間中には関連する行政法規の策定を検討するとともに、複数の行政機関による合同取り締まりも実施する。

つまり、規制の重点は「どの企業に使用済み電池を扱う資格があるか」を定めることから、「一つひとつの電池がどこから来て、誰の手を経て、最終的にどこへ行くのか」を追跡することへと徐々に移りつつある。

その背景には、電池回収業界が長年抱えてきたビジネス上の問題もある。正規の回収業者が、必ずしも十分な量の使用済み電池を確保できていないことだ。

中国汽車技術研究センターはこれまでに、使用済み車載電池の取引で「高値を付けた業者が買い取る」傾向があり、一部が非正規ルートへ流れていると指摘している。一方、業界全体ではすでに相当規模の処理能力が整備されており、正規ルートに流入する退役電池の量を上回っているため、一部企業では設備稼働率の低迷につながっている。

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今後、デジタル身分証制度や生産者責任、合同取り締まりが本格的に機能すれば、これまで非正規ルートに流れていた使用済み電池が、正規の回収ルートへと戻る可能性がある。

そうなれば、電池回収業界の競争力を左右するのは、単純な処理能力や工場の規模だけではなくなる。安定した電池の調達ルート、全国規模の回収ネットワーク、さらに電池の流通経路を追跡できるデータ管理能力が、より重要になるとみられる。

現在、中国の車載電池回収市場には、寧徳時代(CATL)傘下の邦普循環(Brunp Recycling)など電池メーカー系の企業、独立系の専門回収企業、自動車メーカーが構築する回収ネットワークなど、複数のプレーヤーが参入している。

今後は、自動車メーカーやアフターサービス網が使用済み電池の回収を担い、専門企業が検査や解体、資源再生を手掛け、電池メーカーが回収されたリチウムやニッケルなどを再び電池生産に利用するという、役割分担型の資源循環モデルが広がる可能性がある。

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(36Kr Japan編集部)

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