「ロボットの手」に4600億円の評価額 中国LinkerBot、受注1万台で量産加速
中国でヒューマノイド(人型ロボット)の開発競争が激しくなるなか、人間の手のように動くロボットハンドは投資家が特に注目する中核部品になりつつある。モーターや減速機などの成熟した部品とは異なり、ロボットハンドは内部の限られたスペースに駆動・制御システムやセンサー、アルゴリズムを集約しなければならず、量産が難しいうえ、ロボットの把持機能や正確な動作にも直結する。
2023年に設立された「霊心巧手(LinkerBot)」は、中国ロボットハンド業界の代表的なメーカーだ。24年に「Linker Hand」シリーズの初代製品をリリース後、高耐久モデルやハイエンドモデル、エントリーモデルなどを展開している。25年以降にシードラウンドからシリーズBの追加ラウンドまで計7回に及ぶ資金調達では、紅杉中国(HongShan)やアント・グループ、中金資本(CCIG)、中関村科学城基金、中銀資産、復星創富(Fosun Capital)などから出資を受けた。
26年2月にシリーズBで15億元(約350億円)を調達すると、4月にはその追加ラウンドも実施し、企業評価額は200億元(約4600億円)を超えた。その後は評価額60億ドル(約9200億円)を目指す資金調達が伝えられているうえ、早ければ年内に香港株式市場への上場手続きを進める可能性があると報じられている。
LinkerBotは「製品の軽量化、低コスト、自社開発」を強みとしている。例えば、スタンダードモデル「Linker Hand O6」は重さわずか370gながら可搬重量が50kgと、業界屈指の高い性能を誇り、コンパクトかつ高い強度が求められる産業用の製品として大きな競争力を有している。
生産面では、関節モジュールやモーター、減速機などの中核部品を自社で手がけ、一部の金属材の代わりに自己潤滑性と耐腐食性に優れた専用ポリマー材を採用した。また、ロボットハンドでロボットハンドを作るスマート生産ラインの建設も始めており、作れば作るほど生産コストが低減していく体制を構築しようとしている。
製品価格はスタンダードモデル「Linker Hand O6」が6666元(約15万円)で、補助金対象の「O6 Lite」が補助金適用後で3999元(約9万2000円)と、競合製品を1万~2万元(約20万~50万円)下回る水準だ。
同社によると、受注台数は2026年初め時点で累計1万台を超え、月間生産量は最高4000台に達した。また、年間5万~10万台の納品を計画しており、世界の高自由度ロボットハンド市場でシェアが80%を超え、月産4000台を実現した唯一のメーカーとなっている。
顧客となる製造業者のほとんどは、工場に既存のロボットアームに同社のロボットハンドを取り付け、ヒューマノイドを購入するよりも低コストでグリッパの機能を向上させている。同社にとっては、この導入方式がヒューマノイドメーカーとは異なる大きなセールスポイントになる。
LinkerBotはハードウエアを生産するだけではない。500以上のスキル(人間の手指の動き)をカバーする世界最大規模のロボットハンドデータプラットフォーム「LinkerSkillNet」やデータ収集デバイス「UMI-Dex」、人工知能(AI)モデル「Linker Genesis」を独自に開発し、ロボットハンドを部品から、ハードウエア・データ・スキルを統合したプラットフォーム型製品へ発展させようとしている。この取り組みによって同社の企業評価額は、単なる部品メーカーをはるかに上回る水準に達する可能性がある。
一方、業界では競争も激しくなっている。ヒューマノイド大手・智元機器人(AGIBOT)からスピンオフしたロボットハンドメーカ・臨界点(AGILINK)は、設立から5カ月で4回の資金調達を実施し、企業評価額が10億ドル(約1500億円)を超えた。これに続くのが、因時機器人(Inspire Robots)や強脳科技(BrainCo)、思霊機器人(Agile Robots)などで、一部のヒューマノイドメーカーもロボットハンドの自社開発に力を入れるようになっている。
*1元=約23円、1ドル=約153円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)