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2021年は日本人向けにアレンジされていない中華料理「ガチ中華」のお店が度々メディアに取り上げら、コロナ禍で帰国できない中国人だけでなく、海外旅行に行けない日本人からも中国気分を味わえる場所として人気を集めるようになった。都内では池袋や高田馬場、新大久保、上野、埼玉県では西川口などがガチ中華スポットとして挙げられるが大阪にも似たようなエリアがある。2021年末に大阪でガチ中華巡りを行った。
キャバクラ、ホストクラブと同じビルに
大阪では最大の繁華街・難波からほど近い日本橋や島之内エリアにガチ中華のお店が集中している。中国の文明は長江や黄河流域から栄えていったが、大阪では道頓堀川を挟むようにガチ中華文明が発展中だ。
特に道頓堀川のすぐ北側にある宗右衛門通りや南側の道頓堀商店街を歩くと、中国に来た気分になれるようなお店がいくつも目に飛び込んでくる。
出店しているのは東北料理や四川料理、麻辣火鍋のお店が多く、池袋と似たような印象を受けた。宗右衛門通りは池袋と同じく夜のお店が多く、キャバクラやホストクラブとガチ中華のお店が分け合っているビルも目立つ。2021年春以降に新しくオープンしているお店も以下のように数軒見つかった。
串焼きバー:8090音楽烤吧(YINYUEKAOBA)
紀州街道と宗右衛門通りの交差点近くの怪しい雑居ビルの4階にある「8090音楽烤吧(YINYUEKAOBA)」は2021年10月にオープンしたばかりで、羊肉の串焼きなどが食べられる。薄暗いビルの入口と年季が入ったエレベーター、他フロアの怪しげな看板のせいでビルに入るのが少しはばかられるが、店内はきれいな今風の造りだ。中国版Instagramの「RED(小紅書)」でも「おいしい羊肉の串焼きが食べられる!」と評判は上々で、筆者が訪問した日も中国人の若者で賑わっていた。
麻辣牛ホルモン専門店:牛X(ギューエックス)
同じく宗右衛門通りの心斎橋筋商店街近くに2021年6月にオープンした「牛X(ギューエックス)」は麻辣牛ホルモンの専門店。ランチタイムには日本人受けしそうな食べ放題が800円で提供され、筆者が訪問したお昼時には日本人のお客さんの姿も多かった。一品メニューには牛ハラミを使った麻婆豆腐や牛タンのクミン炒め、牛モツの激辛煮込みなどがあり、専門店だけあって牛ホルモンをたっぷり使ったメニューが豊富だ。
手作り水餃子:家の味
夜に訪問した「家の味」は北朝鮮との国境の町・丹東出身のオーナーが営む手作り水餃子のお店だ。名物のサワラ水餃子はなめらかなサワラ餡の舌触りが特徴的でビールとよく合う。店内も中国の地方都市にありそうな少しうらぶれた雰囲気で、中国のローカル食堂で食事をしているかのような気分を味わえた。
午後9時半に訪問したところ従業員数名がドラゴンボールのフィギュアをせっせとダンボールに箱詰めしていた。中国にいる友人への代理購入をしているそうだ。ガチ中華激戦区で生き残っていくには中華料理以外のサブビジネスもそつなくこなすしたたかさが必要なのかもしれない。
訪日中国人から在日中国人にシフト
大学時代に北京に留学し、帰国後の2017~18年に心斎橋の百貨店でアルバイトをしていた筆者の友人の富田萌恵さんは、「当時の心斎橋筋商店街は前に進むのが難しいくらい人が多く、そのうち半分近くが中国人だった」と振り返る。しかし新型コロナウイルスの感染拡大で心斎橋の人通りは激減し、インバウンド向けのドラッグストアや免税店も多くが閉店した。心斎橋や道頓堀のラオックス、同店舗内に出店していた中国のドリンクスタンドチェーン「奈雪の茶」も2021年9月に閉店している。
日本橋や島之内でガチ中華が増えている背景には、訪日中国人向けにインバウンドビジネスをしていた在日中国人がコロナ禍を乗り切るために、訪日中国人から在日中国人にターゲットを変え、中華料理に方針転換をしたこともありそうだ。東京でも、コロナ禍前には訪日中国人向け民泊や医療コンサルをしていたという中華料理店のオーナーに時々遭遇する。
2022年に入ってからも、筆者が知るだけで東京では3店、大阪では1店のガチ中華店がオープンした。日本人の間でも認知されつつあるガチ中華、この機をビジネスチャンスと捉えた中国人が今年もたくさんお店をオープンさせそうだ。流行後追いのダメ中華も出てきそうではあるが……。
この連載では、人気ブログ「東京で中華を食らう」を運営する阿生さんが、日本の中華料理店事情をビジネス面から紹介します。
阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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