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中国の二酸化炭素(CO2)排出量削減について、習近平国家主席は2020年9月の第75回国連総会の一般討論演説で、2030年までにピークアウト、2060年までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)を実現するという目標を掲げた。
そのための方法として注目されている技術が「二酸化炭素回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage、CCS)」だ。これは排出されたCO2を分離して集め、特定の場所で利用もしくは貯蔵する技術で、回収したCO2を大気中から長期間隔離することによりCO2排出削減を実現するというもの。
単にCO2を回収・貯留するだけでは経済的なコストがかかる。エネルギー構造転換の過渡期にある中国で、経済発展を減速させることなく「カーボンピークアウト・カーボンニュートラル」目標を達成するには、CO2の資源利用を進めてさらなる経済・環境効果を創出することが必要となる。
こうした流れのもと生まれたのが、CCSに「有効利用(Utilization)」を加えた「二酸化炭素回収・有効利用・貯留(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage、CCUS)」技術だ。CCUS技術はCO2排出削減やエネルギー安全保障のための戦略的な選択肢であり、持続可能な発展を実現するための重要な手段と言える。
中国生態環境部環境計画院が発表した「中国二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)年次報告書(2021年)―中国CCUS経路研究」では、CCUSを化石エネルギー利用の低炭素化を実現する現時点で唯一の選択肢としており、カーボンニュートラル目標のもと電力システムの柔軟性を維持するための主要技術、鉄鋼やセメントなど排出量削減が困難な産業の低炭素化を進める実行可能な技術的選択肢としている。またCCUSと新エネルギーを組み合わせたネガティブエミッション技術は、カーボンニュートラル目標を達成するための重要な技術であるとも言及している。
CCUSのCO2利用技術には地中利用、バイオ利用、化学利用の3分野がある。地中利用は、回収したCO2を石油採掘技術の強化や炭層メタン代替などに活用する。CO2を大量に消費できる大規模利用・貯蔵法となっているが、資源として有効活用できないうえ、利用の過程でCO2が逃げたり二次的なCO2排出を招いたりするなどのデメリットがある。
バイオ利用や化学利用はエンド・オブ・パイプ(製造工程の末端)のCO2除去技術で、より優れたCO2利用のソリューションだ。バイオ利用は植物や微生物などの光合成プロセスを再現することで新しい人工光合成システムや手法を構築し、CO2を化学品や農業用品として有効利用するもの。
化学利用はCO2を原料として、触媒反応などの技術によりCO2の活性化を促し、化学合成を行って尿素やメタノール、炭酸エステルなどの化学品を製造する手法だ。
現時点ではバイオ利用や化学利用はいずれも規模が小さく、技術向上や試験的実施の段階にある。エネルギー消費が少なく、CO2利用効率や付加価値の高い技術の開発が急務となっている。
企業の価値と収益力は切り離せないため、CCUS実施の収益性が低いと企業の積極性や主体性は低下し、CCUSの産業化を阻むことになる。CCUS産業を大規模に展開するためには、エネルギー消費が少ない高付加価値の回収・活用ソリューションがどうしても必要になる。
中国科学院がインキュベートしたCCUS技術開発企業「中科翎碳(Powered Carbon)」は、電気化学とバイオを組み合わせた革新的なCO2変換技術の開発に成功した。新しい電気化学触媒法を用いてCO2を微生物発酵に利用可能な有機炭素源に変え、さらに発酵させることでエクトインや生分解性プラスチックなど付加価値の高い物質に変換することができる。
この技術は天然資源を大幅に節約すると同時に、不要な二酸化炭素を宝に変えることができる。CCUS技術の「有効利用」を出発点としてCO2排出量削減を進めるとともに、企業のエネルギー消費量当たりの生産高を高め、循環型経済を実現し、産業の新たな可能性を推進することができる。
現在、中科翎碳は甘粛省と海南省でパイロットプロジェクトを進めており、CO2回収・利用の統合設備を共同建設して、カーボンニュートラルを実現する技術ソリューションを提供している。今年6月には国家技術移転西南センター瀘州サブセンターと戦略協定を締結、地元の化学企業の固体廃棄物処理ニーズとCO2排出削減ニーズを統合して新たなバイオ化学産業の道を開拓し、企業の発展と産業のさらなる成長を後押ししている。
(翻訳・畠中裕子)
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