ファーウェイを去り、中国ヒューマノイド産業の主役になる「天才少年」たち
中国通信機器大手・ファーウェイ(華為技術)が、「天才少年」プログラムを通じて世界中から採用した若手精鋭たち。最高で年俸201万元(約4600万円)という破格の待遇で迎えられた彼らは、いまや同社を離れ、ヒューマノイド(人型ロボット)産業の最前線に立っている。
直近の事例では、ファーウェイのヒューマン・マシン・インタラクション(HMI)研究者であるYeo Hui Shyong氏が退職し、ヒューマノイド開発企業「数字華夏(Digit Robotics)」に加わった。英国セント・アンドリューズ大学で博士号を取得した同氏は、2021年にファーウェイに入社して、ウエアラブル型ジェスチャー認識技術やAIエージェントなどの開発を主導してきた。
こうした動きは、けっして例外ではない。「天才少年」プログラムの出身者のうち、これまで少なくとも8人が「エンボディドAI(身体性AI)」分野に転身している。ファーウェイという共通の「母校」から巣立った精鋭たちが、今度は互いをライバルとして、中国のロボット産業をけん引する存在へと成長しつつある。
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年俸4600万円、7回の面接――「天才少年」とは
「天才少年」プログラムは2019年に、ファーウェイ創業者の任正非氏が主導してスタートした。学歴や出身校は問わない求められるのは、突出した研究能力とグローバルな視野。選考は7回に及ぶ厳格な面接で構成され、通過した者には最高201万元の年俸が約束される。
狙いは明快だった。世界レベルの難題に挑む環境と破格の待遇で、次世代の技術競争を勝ち抜くための人材を世界中から集める。その結果、世界中の優秀な若手人材がファーウェイに集まった。
だが、人型ロボットに代表されるエンボディドAIブームが巻き起こるなか、彼らの一部は大企業を飛び出し、ロボット分野で起業する道を選ぶようになった。
先駆者・彭志輝氏が切り拓いた道
天才少年のなかで最も広く知られている人物が、「稚暉君」こと彭志輝氏だ。大学時代に独自の二足歩行ロボットを開発し、その後はテック系動画の配信でSNSで注目を集めた彼は、天才少年プログラムを通じてファーウェイのAIチップAscend(昇騰)開発部門に加わった。任正非氏から「ファーウェイのイノベーションを支える原動力」と称賛されたこともある。
しかし2022年末、彭氏はファーウェイを去る。その理由について、「ファーウェイは基盤インフラを重視する。でもロボットには、もっと速いスピードが必要だ」と説明している。
退職後は、ファーウェイ元幹部の鄧泰華氏と共に「智元機器人(AgiBot)」を立ち上げた。「天才少年」という肩書と産業ネットワークを武器に、矢継ぎ早に投資家を引きつけ、これまでに12回の資金調達に成功、評価額は150億元(約3500億円)を超えている。今年に入って1万台目の人型ロボットがラインオフし、業界最大の量産規模を誇るロボット企業となった。
ロボット分野で起業した天才少年たち
実際、2020年前後に「天才少年」として採用された人材のほとんどが、現在はエンボディドAI分野に進んでいるという。代表的な人物を以下に紹介する。
諾因智能(KNOWIN)

2025年に30歳で独立し「諾因智能(KNOWIN)」を設立、一般家庭向け人型ロボットの開発に注力している。26年3月時点で、すでに3回の資金調達を完了し、評価額は20億元(約460億円)を突破した。
共同創業者の周凱文氏は香港中文大学で博士号を取得、2022年に天才少年枠でファーウェイのノアの方舟研究所に加わり、チーフサイエンティストを務めた。
它石智航(TARS)

共同創業者の丁文超氏は香港科技大学で博士課程を修了。2020年にファーウェイに入社し、自動運転システムADS1.0およびADS2.0でエンドツーエンド型意思決定ネットワークの開発を主導した。退職後、自動運転部門の元CTO陳亦倫氏と再びタッグを組んで「它石智航(TARS)」を創業し、半年ほどで2億4000万ドル(約380億円)を超える資金を調達した。
今年3月には同社の人型ロボット「A1」が、1時間当たりのサブミリ級ワイヤハーネス組み立て回数でギネス世界記録を樹立した。
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(36Kr Japan編集部)