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米国のアプリストアで目下ダウンロード数が最も多いのは中国のアプリだ。App Storeで2月末、ダウンロード数が最も多かった無料アプリはEC大手「拼多多(Pinduoduo)」傘下のショッピングアプリ「Temu」、バイトダンスが展開している「TikTok」と動画編集アプリの「CapCut」だった。Google PlayストアではTemu、TikTok、ファストファッションを扱うショッピングアプリ「SHEIN」で、どれも中国企業のものだ。
TikTokとSHEINは長らく人気があり、昨年9月にリリースされたTemuも急速に台頭してきた。中国製アプリの米国での人気が如実に表れている。
上記アプリの成功は、中国IT企業が国内で10年もの過酷な競争を経て使いやすく、使うと手放せなくなるアプリを開発したことが背景にある。この点ではシリコンバレーさえも上回る。一方、中国製アプリはマーケティングにますます予算を割くようになった。TemuはNFLの優勝決定戦スーパーボウルで放映される広告枠2つの獲得に約1400万ドル(約19億2000万円)をつぎ込み、さらに1000万ドル(約1億4000万円)相当のプレゼント企画を用意した。
一方、中国製アプリの使用禁止令も広がっている。米国では昨年12月から各州政府・連邦政府がTikTokの使用制限を試みている。欧州委員会とカナダ政府も職員が業務用の携帯電話などにTikTokをダウンロードすることを禁止した。中国政府がTikTokを使って政府職員が目にする動画を操作したり、彼らの位置情報などの情報を収集する恐れがあると理由を説明している。
同様の使用禁止令が他の中国製アプリにも波及するかもしれない。西側諸国の一般市民がこれらのアプリと中国政府の関係を強く認識しているわけではない。技術者でありテクノロジー、ビジネス、地政学をテーマにした英中ニュースレター「Interconnected」の執筆者Kevin Xu(ケビン・スー)氏は2月末に「中国IT企業が作るすべてのアプリがよくないとされているようだ。TikTokが国家安全保障に関わる米国人に実際に被害を与えているというが、証拠がない」と話す。
カナダのトロント大学の研究所「Citizen Lab」のシニア研究員Lotus Ruan氏は、WeChatなど中国製アプリの技術を分析している。同氏は「TikTokが台頭し中国製アプリが世界に広まる中、人々は近視眼的に中国製アプリを見ており、往々にして中国製アプリのリスクが誇張されている」と話す。
Ruan氏は、これらのアプリと米国のアプリは実際あまり差がないと指摘する。Ruan氏の同僚が2021年にTikTokに使われている技術を調べ、「TikTokやその中国語版『抖音(Douyin)』がユーザーの許可を得ずに連絡先リストを集め、写真、音声、動画、位置情報を記録・送信した事実は確認できなかった」と語ったという。
Ruan氏は「今はあらゆるものが政治に利用される傾向にある。国家安全保障の枠組みにデータを活用する際は細心の注意を払う必要があるだろう。アプリで何をしているのかという懸念は実際に技術を調べた上で抱くべきであり、推測をはさんだり暗示したりするべきではない」と話す。
しかし、報道や政策決定に関わる人たちはアプリがどのようにユーザーのデータを処理するかに関心を持ち、あらゆるユーザーのデータが中国に移されているかどうかには特に注意するべきだ。米国のユーザーデータが中国に入ってしまうと、国家安全保障が懸念されるのはもっともなことだ。中国には個人情報を保護する法律の枠組みがあるが、それは民間企業の責任追究に関わる分野に集中しており、政府が企業からどのようなデータを取得するか、あるいはどのようにデータを処理するかについては制限していない。
TikTokを運営するバイトダンスのような企業はこれらの問題を解決できる。バイトダンスは数年来、米国のデータは米国でのみ保存・処理すると言明してきたが、中国のエンジニアが米国のユーザーデータに不当にアクセスしていたといった報道はいまだにある。Kevin Xu氏は「ここに問題がある。ユーザーデータを分離し第三者の調査によって今は問題ないと証明しなければならない。これが問題解決の第一歩となる」と話す。
同氏はさらに「TikTokを国家安全保障に対する脅威だとして問題を政治化することで一部のユーザーは去るだろうが、米国政府がTikTokを全面的に禁止しない限り、多くの人が使い続けるだろう」と語った。
Temu、SHEINなど米国市場に参入する中国製アプリが米国のユーザーにTikTokのような便利さとエンターテインメントを提供できるかどうかが、問題の鍵となる。もしこれができるならば、いかなる地政学的情勢にあっても市場は常に開かれていると信じていたい。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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